(元気なころのそら いつも飼い主を見ていた)
そらの右後ろ足が動かなくなり、鍼灸の治療を始めたのが2か月前のこと。
一時は快方に向かい、ベッドに乗りたい、ソファに乗りたいと訴えていたそらだが、その後容態は悪化の一途を辿ってとうとう左足も動かなくなり、ほとんど寝たきり状態になってしまった。
それでも、
「ごはんだよ~」と声をかけるとそらは必死に立ち上がろうとするので、ハーネスと手製の帯を下肢にわたして「おさるのかごや」状態にして庭に連れて行き、そこでメシを食い、ウンチとオシッコも済ませていた。
ところが2、3日前から「ごはんだよ」と声をかけるとすさまじい形相で吠えるようになった。鎮痛剤も効かないようで、よほど下肢が痛むのだろう。
(こんなポーズは2度ととれないだろう)
このまま寝かせておけば間違いなく寝たきり犬になってしまう。
なんとかハーネスをつけておさるのかごやに持ち込みたいのだが、そらは吠えるだけでなく噛みついてくるようになった。
朝と夕方の1日2回、毎度毎度修羅場である。
吠えまくったせいで室内で粗相することもしばしば。あのおとなしくて従順なそらはどこへ行ってしまったのか。
この日も噛みつかれないように細心の注意を払いながらそらを外へ連れだした。
このところ玄関でウンチもオシッコも出してしまうそらだが、珍しく庭に行きたいという様子を見せたのでおさるのかごやは庭へ向かった。
エッサエッサ
エッサホイサッサ
おさるのかごやだホイサッサ
座った姿勢でジョジョジョとやったそらはじっと私を見つめた。その表情はほんの2か月前の柔和なそらの顔だった。
「これまで、ありがとう」
そらがそう言っているようで、不覚にも涙が止まらなくなった。
(もう一度八ヶ岳芝生広場を思いっきり走らせてあげたい)