すっかり冬モードの八ヶ岳南麓。
冬の到来とともに窓にカメムシ状の昆虫が集まり始めた。
観察してみると体型はカメムシより少し細長い。どうやらカメムシの近似種「ヘリカメムシ」というヤツらしい。
(カメムシ目ヘリカメムシ科)
我が家では最近普通のカメムシをあまり見かけなくなって、網戸にへばりついているのはヘリカメムシばかり。よほど生命力があるのか、正統カメムシはいつの間にかこいつらに淘汰されたのかもしれない。
(網戸と窓の隙間から侵入しようと虎視眈々)
屋内に侵入させないように気をつけているのだが、敵も必死だから防衛線を突破して人間サマの居場所でヌクヌクしている輩もチラホラ。
(カーテンで日なたぼっこ中のヘリを発見)
こうなると一人一殺、ティッシュでくるんでゴミ箱へ。
この時のプロセスが男性と女性で大きく分かれることは意外に知られていない。
男性にはある種の収集癖というか怖いものみたさというか、「獲物を観察したい」という本能的欲求がある。
とある比較人類学者がハナをかんだ後のティッシュをどうするか調査したところ、世の女性は例外なく「そのままゴミ箱へポイ」だが、男性の多くは(勿論全員ではない)別れを惜しむかのように一度ティッシュを広げてしげしげと眺め、それから捨てるのだそうだ。もっともこの調査が行われたのは何十年も前のことだから、花粉症が蔓延する昨今はオス族もそんなことをしている余裕はないだろう。
そんなわけで私もティッシュからはみ出た敵をちょっと観察し、ついでに指先の匂いをクンクンした。
すると意外なことに甘酸っぱい実に爽やかな香りがするではないか。なんだか青リンゴのような芳香である。
調べてみるとヘリカメムシとカメムシの(そしてパクチーの)主成分はどちらも「ヘキサノール(C6H10O)」という化学物質で、これが結合した構造体(トランスヘキサノール)を日本ゼオン、富士フィルムといった大手医薬品メーカーが「果物系フレーバーの素」として製造販売しているのだという。
(ホントに売ってるよ 別名「青葉アルデヒド」富士フィルム和光純薬製造)
同じ匂い成分なのにカメムシの方がオエっとなるのは、ヘキサノール以外の混じり物の構成がカメムシとヘリカメムシで微妙に異なっているせいだろう。
う~む。
中国ではカメムシは「椿象」と呼ばれていてその匂いを好ましく思う人が多い、という話を聞いたことがある。その時は連中はアタマがおかしいのではないかと思ったのだが、ようやくその理由が分かったような気がする。
世界的な食糧危機の到来が取りざたされる中、我が国でも昆虫食の動きが活発化しつつある。
ことによるとそのうちシャトレーゼあたりから「ヘリカメムシトッピングアイスクリーム」なんていうのが出てくるかもしれない。