(Osteria Sato 鮮魚のカルパッチョ)
この8月に新たにオープンした「Osteria Sato」を再び訪れた。開店わずか3日で2度も顔を出したのはおそらく私だけ。今のところぶっちぎりの常連だろう。
今回ご一緒いただいたのは近所の別荘族で酒豪のAさん。
前回の相方Bさんご夫妻は、酒断ちをした人+もともと飲めない人という地味な(失礼)メンバーだったので勢い「お食事しましょ」という感じになったが、今回は酒との相性だけを考えた注文をしよう、というまさに Osteria の名に恥じない企画である。
17:25に一番乗りした二人はさっそくビールを飲みながらワインを赤→白にするか白→赤にするか、鳩首会談を始めた。
酒豪が相方とあってどっちか片っぽということはあり得ない。結局「ここの前菜は鮮魚、野菜系が多い」という常連の私の英断で白→赤とすることに決定した。
まずは鮮魚のカルパッチョ(上の写真)から。
今宵の魚はアラ(𩺊)。なんでも魚はどこだかの港(忘れた)にいる知人から直送してもらっているとのこと。おそらく鮮魚はこの店のメイン食材になり続けるだろう。
(前回のスズキのカルパッチョ アラの方が旨い)
続いてトリッパ(牛の第二胃袋(ハチノス)のトマト煮)。やはり酒飲みが目をつけるものは同じだ。
(豆が入っていてなんだかブラジルのフェイジョアーダのようなトリッパ)
(前回のトリッパ こっちの方がよかった)
ガツガツムシャムシャやっていると、隣の席に母娘らしい二人連れがやってきた。シックな服を着て優雅にサラダなぞ召し上がっている様子はいかにもセレブである。
やがてパスタを召し上がり始めたので興味半分、好奇心半分でガン見していると目が合ってしまった。
「あの、それはなんですか」
「ほほほ、〇〇です(←緊張したせいで忘れた)」
そんなことがきっかけになって4人で雑談をした。
お二人は別荘族で身曽岐神社の辺りに別荘があるらしい。
「お二人でいらしているんですか」
「いえ、父も一緒ですが、邪魔なので家に置いてきました」
おほほ、うふふと笑うお二人は母娘というより友達どうしという感じ。父と息子だと絶対こういう関係にはならないから不思議なものだ。
「東京のお住まいはどちらでしょうか」
「阿佐ヶ谷です」
「ギョギョ」
住所を伺うと神明宮のあたりらしい。そういえばどこそこ神々しいお二人、ことによると神明宮か身曽岐神社の神官一家なのかもしれない。
私も昨年まで阿佐ヶ谷でした、と告げるとあら、まあ、とお二人の警戒はさらに緩み、初対面とは思えない雰囲気になってきた。
「阿佐ヶ谷でお勧めのお店をおしえてください」
「う~ん、シャレたところだと・・・」
「いえ、普通の居酒屋さんがいいんです」
酩酊する頭でそうだ、と思いついたのが「おいでんせ」である。
神明宮からほど近いし、旨いものを出す。その分あの界隈ではやや高い店だがそれゆえ落ち着いた雰囲気でセレブのお二人にはぴったんこ。
(駅から線路南側を高円寺方向へ 岩手の銘酒「赤武」など清酒の品ぞろえもよい)
やがて私たちが赤ワインに移ったころ、お二人は優雅にティラミスを召し上がり始めた。
またもや物欲しげに眺めていると、
「これ、おいしいですよ。少し召し上がってみます?」
ここでは~い、と飛びついては男がすたるというもの(とっくにすたってるでしょ、と思った方は正直に名乗り出てください。奥歯ガタガタいわせたる)。お礼を申し上げて遠慮したあたりは我ながら出処進退が潔い。
デザートを終え店を後にするお二人に別れを告げて我々は本来の任務に戻ったのだが、メイン(豚と魚)を食らい、パスタを食い始めた頃には不覚にも前後不肖となった。
(これはなに?私は誰? 正体はラビオリ?)
途中Aさんと別れて家にたどり着いたらそのままごろん。
目が覚めたのは1時過ぎ。ソファでそらとからみ合うように寝入っていた。
そうだ、「おいでんせ」より「燗酒屋」の方がよかったかも。朦朧とした頭にそんな思いが去来したが後の祭りである。
(阿佐ヶ谷「燗酒屋」電話番号非公表、予約不可の店 2021年4月撮影)
せめてLINEくらい交換しておけばよかったかなあと思ったが初対面でそれも野暮というもの。せまい八ヶ岳南麓のこと、縁があればいつかまた会えるだろう。