(レインボーブリッジをバックにした結婚式場)
長男夫婦の結婚披露宴が都内某所で行われた。
若い時分はたらふく旨いモノが食えて酒も飲み放題、お涙ちょうだいシーンやスベるスピーチなど笑える場面も盛りだくさんで大好きなイベントだった披露宴もいつしか馬齢を重ねるごとにメンドウになるばかり。なんせ、
・バービーちゃん(古いね)よろしく衣装を脱いだり着たり
・当日には風呂に入ったり髭もそったり
・片道2時間かけて東京の西から東へドンブラコ(桃か、おマエは)
・ゆっくり飲めればまだ留飲も下がろうが親族代表の挨拶なんてのがトリにくっついてたり
・留守番が何より嫌いな愛犬そらを10時間ほどほったらかしたり
と、これでもかと怒涛のメンドウ攻撃である。
これが仕事ならカネのために愛想笑いのひとつもするところだが、逆に式場代の一部を支援するという仕打ちが待っているわけだから、私の憤懣も「わかって下さい~」である。
(これ、前も使ったような記憶が)
(これだ!)
1400に家を出て会場に到着したのは1600。レインボーブリッジをバックにしたチャペルで式が始まったのが1730。私のメンドウ感は絶頂に達していた。
(なかなかいい絵ヅラだが)
1830からようやく宴会が始まった。
美味いモノがどんどん出てくるたびに、私のメンドウ感はいずこへともなく失せていったから現金なものだ。
先頭 オマール海老のデグリネゾン
(「デグリネゾン」とは単一の食材をさまざまな調理法で提供すること おそらくゼリーに海老の殻かなんかの出汁が入っていたりするのだろう)
2番 サーモンと野菜のモザイク仕立て
(酒は白ワインと「氷点下ハイボール」で)
厨房はオープンキッチン風に会場と並んで設置されていて、一部ではあるが調理の様子を見ることができる。食い意地の張ったお客さん(おマエだろ)にはこれも楽しんでもらえるだろう。
3番 帆立貝とツブ貝のキャベツ包み
(このソースでパンをお代わりする破目に 白ワイン系統の食い物が続く)
「本日の最大の出し物は長淵剛のサプライズ演奏」
長男からそう聞いていた私は次第にソワソワしてきた。
彼はいつ登場するのだろう。
長男は私がカラオケで「とんぼ」をよく唄うのを知っているから、彼も「とんぼ」を唄ってくれるかも。
「ではお父さん、続きをどうぞ」、なんて突然マイクを渡されたりしたらどうしよう。そんなことをクヨクヨ考えていると、最後のスピーチよりも「とんぼ」の歌詞をおさらいする方についつい気が行ってしまう。
やがて会場が暗くなり、スポットライトを浴びて登場したのは長淵剛のそっくり芸人であった。
なんだよ、これ。カネ返せ~。
(そりゃホンモノは来ないわな 定番の「乾杯」を熱唱するニセモノ)
4番 鮮魚に「天使のエビ」を添えて 白バルサミコ酢仕立て
(こいつもパン泥棒)
ったく、いつになったら赤ワインの出番になるのか。
待ち焦がれているとようやく出てきたのが長男夫婦がわざわざ取引先から取り寄せたという黒毛和牛のヒレである。
(待ちきれずに調理の様子を見物に)
5番 宮城県登米市で育った黒毛和牛フィレ肉の低温調理
(この後のごはん、デザートは省略(掲載を、という意味))
旨い。これは旨い。
長男夫婦の心遣いがさらに味を引き立てる。この分のカネくらい、オレが出してやるって。
この頃にはだいぶアルコールが回っていて、最後のスピーチなど酔った勢いでササッと済ませてしまった。
やっぱり結婚披露宴は楽しいものだ。
出席された皆さんも大いに楽しまれたようで、お開きは遅れに遅れて2200。会場外でのお見送りにもえらい時間がかかってシャトルバスに乗り遅れたお客さんが続出する破目になった。
(最後は男同士で 三山ひろし風の長男をはさんでお嫁さんのお父上と)
私たちがようやく家にたどり着いたのは日をまたいだ0時過ぎ。
そらがどれだけ怒り狂っているかドギマギしたが、意外とおとなしいので拍子抜け。どうやら待ちくたびれて怒る気力もなくなったようだ。