(眠さに負けそうでひじかけに頭を乗せてなんとか起きているそら)
犬トモにしてカラオケ友のAさんが3月に晴れて定年退職となった。
Aさん曰く、2年間だけの条件で再雇用に応じたがいずれ「毎日が土曜日」の生活がやってくる。そんな日々のために囲碁を覚えたいがどうだろうか、とのこと。
囲碁、将棋といった対戦型ゲームには性格的な向き不向きがある。勝ち負けにこだわるタイプで「負けて悔しい」、という気持ちが強くないとなかなか上達しない。
私が見たところAさんはおっとり型の好人物であまり向いているようには思えないのだが、「内に秘めた闘志」というヤツがあるかもしれない。
そんなわけで初心者の指導に熱心な方がいないかあちこち聞いてみると(←自分でハナから教えるのはメンドウなものだから押しつけちゃおうという魂胆)、「囲碁美術館」(北杜市長坂町)で週1回初心者教室が開催されているとのこと。
さっそく教室の件を伝えるべくこの日そらの散歩がてらAさんのお宅を訪ねた。
「あら、そらちゃんやせちゃった」
Aさんの奥様はそらを見るなりそうおっしゃった。
「アレルギーはどうですか」
「相変わらず一日中カイカイです」
「まあ可哀想に。・・・〇〇さん(←家内のこと)は」
「子供たちが帰って来るので東京です。今回は私とそらだけでこっちに来てます」
「あら、大変」
翌日ピンポンが鳴った。重そうな紙袋を両手に持ったAさんの奥様である。
どうやらやもめ暮らしの私に同情して食い物の差し入れを持ってきてくれたらしい。
ああ、情けは人の為ならず。
囲碁教室のことをお伝えした位のことで、ここまでしてくださるとは。
奥様が紙袋からいろいろ取り出した。
「これは馬肉をフードプロセッサーでペーストにしたものです。8食分あります」
「・・・(オレのじゃないのね)」
「これは有精卵。黄身だけをそらちゃんにあげてみて下さい」
「・・・(ってことはオレは白身だけ?)」
(ずっしりと重い生肉ペーストが8袋)
(体調管理用のサプリと野菜酵素パウダー これもそら用)
う~む。
まさに「情けはヒトの為ならず」。イヌの為だったんかい。
それでも人間様の食い物を頂戴するよりも、そらが少しでも健康になるようにと心を込めて作ってくれたものの方がどれだけうれしいことだろう。
Aさんが囲碁のルールを覚えたらメンド臭がらずにちゃんと相手してあげよう、そう心に誓った。
(旨いものをたらふく食ってすっかり満ち足りたそら カイカイも少しおさまったのかな)