だいぶ以前のことだが、八ヶ岳南麓から戻ってくるたびに杉並の我が家の郵便受けは宅配寿司だの、不要品の買取りだのといった種々雑多なチラシで溢れかえっていた。
一方の八ヶ岳南麓はというと、チラシの類は一切ない。せいぜい地元消防団の寄付金振込用紙が放り込まれている位だから雲泥の差である。
無数のチラシは「ポスティング」と呼ばれる販促手法によるもので、ポスティング請負会社はクライアントから例えば「1万軒ローラー(対象地区で無差別にチラシを投函すること)で10万円」といったような価格でポスティングを引き受ける(チラシ制作費は別)。
請負会社は設備投資も店舗も不要、費用はチラシ投函のバイトの人件費だけといってよい。バイトの時給を1200円、1分あたり平均4枚1時間で240枚投函するとすれば1万軒のポスティングに必要な経費は約5万円ちょっと。ボロいといえばボロい商売である。
そんな請負会社が恐れるのは、なにかのトラブルでお得意さんを失うことであろう。特にポスティングのせいでクライアントに直接クレームが入るのは最悪のはず。
そう考えた私は郵便受けに「チラシお断り クライアントに直接通報します」と表示した。
するとガムテープに手書き文字という鬼気迫る筆致が効いたのか、井草八幡宮のご霊験か、はたまた私の人徳か(たぶん全部だろう)、チラシは見事に一掃されたのである。
さて終の棲家の「チラシお断り」表示をどうするか。手書きは迫力はあるもののちょっとみすぼらしい。
Amazonで見るとステッカーがいっぱいあるが、既製品は迫力に欠けるし、肝心の「クライアントに通報する」というメッセージが入ったものは見当たらない。
(「警察に通報」ではクライアントにも請負会社にも響かない)
う~む、この際「テプラ」を買っちゃおうか。
これもAmazonで見ると5000円程度の廉価品もあるようだ。
(キングジム「テプラPRO SR45 テープ別売り 給電は乾電池のみ)
とはいえ子供が小さい頃ならともかく、今さらテプラを買っても「チラシお断り」ステッカー以外の使い途が思いつかない。傘やスマホに名前を貼ったりするのもなんともジジむさい。
クヨクヨ悩んだ挙句やっぱりもったいないのでワープロで作成したメッセージをセロテープで貼り付けることにし、さっそく原稿をこさえてみた。
(縦型郵便受けの両サイドに収まるように)
よしこれでいいや、と思ったところに「そういえば工務店のファイル類にテプラのラベルが貼ってあったはず」と思いついた。
「もしもし、ちょっとお願いがあるんですけど」
「ごくり。なんでしょう(どうかメンドウなことではありませんように)」
「テプラで「チラシお断り」のステッカーこさえてもらえませんか」
「あ、いいですよ(あ~よかった今回は簡単なお願いで)」
「やった~、じゃあ原稿をメールで送ります」
これでチラシ対策は万全である。