(開発が進み近隣のカラマツ林は年々少なくなっている 泉下の北原白秋もさぞ嘆いているだろう)
秋晴れに誘われて囲碁トモのAさんの家まで歩くことにした。
途中「ペンションブロッサム」の脇を通るとオーナーが庭仕事の真っ最中、思わず挨拶に立ち寄った。
同所に初めて宿泊したのは10なん年前のこと。自然の豊かさとオーナーご夫妻の人柄に惹かれたのがきっかけで八ヶ岳南麓に土地を求めることになったという、大恩あるペンションである。
(我が家の親元にあたるシュウメイギク 新築祝いに株分けしていただいた)
10年を経て建物は多少古ぼけてきたが、オーナーは古くもぼけてもいないご様子(失礼だな)。草花の状況や昨今の土地事情などをとりとめなく話し合って別れを告げた。
ブロッサムからさらに北へ進むと分譲中の土地に出くわした。
この物件、私が思うに中々理想的な土地なのでどこが良いのか紹介したい。ただしモノサシが偏狭な老人の歪みに歪んだものであることは要注意です。
(1200坪で3000万円(坪単価2.5万円)という大型物件)
まず良い所を挙げていこう。
・ とりつき道路が東側にあること
四季を通じて言えることだが、八ヶ岳南麓の朝日は心地よい。とりつき道路が東側だと朝日を遮るも
のがその分減ることになる。
逆に西側だと西日対策が必要になる。高原とはいえ西日が容赦ないことは東京と寸分変わらない。
それどころか紫外線は八ヶ岳南麓の方が強いはずだ。
・ 舗装道路に接していること
舗装道路であればほぼ下水道があるものと思ってよいだろう。日常生活にこれといって不便がある
わけではないが、定期点検(3か月に1回)だの定期検査(年に1回)だの、利権の巣窟の合併浄化槽
に頼るのは気が重い。
(しかもこの物件のまん前には「お宝マンホール」が)
・ 西と北に樹林があること
強風を遮り、西日を遮る樹林が西と北にあるのは得難いメリットである。
「それじゃ八ヶ岳が見えないじゃん」など心配ご無用。ちょっと家から出れば八ヶ岳も甲斐駒もイヤとい
うほど眺めることができる。
私の知り合いで「富士山を眺めながら風呂に入りたい」、というのでわざわざ二階に風呂を設けた方
がいらっしゃるが、「慣れちゃうと銭湯の壁画のようなもんだ」とのこと。そりゃそうだ。
・ 近傍に沢がないこと
沢があるということは間違いなく湿地だから、カビ対策に悩まされるリスクがある。
沢の近くに家がある知り合いは住み始めてから何年かした頃「なんだか家の中がジメジメしてきた」、
というので床下を剥がしたところ床下がプールになっていたそうだ。いつの間にか地下水脈で沢と通
じていたらしい。「高原でせせらぎを聞きながらワイングラスを傾ける」などはそういった場所にあるペン
ションで楽しむのがよさそうだ。
もうひとつ、ヤマカガシやマムシが生息しているのも沢の怖い所である。
・ 徒歩圏にレストランがあること
徒歩圏にレストランがあるというのは実に有難いものである。我が家ほどではないがここは近隣に
「葉凪(はな)」、「霧亭」、「チーリン」がある。まあ我が家ほどではないですけど(シツコイな)。
またセブンイレブンも歩いていけるので、ちょっと醤油が切れた、電池がない、などという時には大助
かりだろう。
・ 南隣地が広大な土地でないこと
南側の隣地が畑などの広大な土地だと、とりあえず眺めはよいがいつなんどき何が建つか分かった
ものではない。カーボンニュートラルを目指しつつ脱原発もやっちゃうという我が国のこと、太陽光発電
が再び脚光を浴びる日が来ることもあながち否定できないのである。
一見いいことずくめの土地だが、気になることもある。
・ 標高1100mにあること
標高1000mを超えると植生が変わる。葉物野菜など栽培が難しいものがあるそうだ。
とはいえあまり深刻になる必要はない。夏野菜など作らなくてもタダ同然で手に入る。
毎食採りたてを楽しみたいトマトはもともとアンデスの高地のものだから栽培に支障はないはず。
トマト以外の野菜ならどうせなら買うと高いものを作るのがよいわけだが、高額野菜の代表ニンニク
は青森県が主産地だから問題なく出来そうだ。もうひとつの高額野菜カリフラワーはどうだろうか。
・ 単価は安いけど総額が高い
これだけ好条件がそろっている物件で坪単価2.5万円は安い。おそらく「切り売り不可 1200坪まと
めて」という条件なのだろう。
仮にカネがあったとしてもこんな広い土地を手に入れたら草むしりだけで気が遠くなる。
老後を過ごすには定住であれ二拠点居住であれ200~300坪あれば十分のはずだから、友人と共
同で買う、分筆して転売する、などの工夫が必要になりそうだ。
(コスモスが一面に広がっている物件
眺める分には美しいコスモスだが買った後は数年にわたって悩まされそうな感じ)