八ヶ岳南麓の人外魔境で迎えた三日目の朝。
二晩連続の飲み過ぎで、なんだか視界がモヤがかかったように霞んでいる。
すわ視神経に異常をきたしたか、とパニクったが、幸い辺り一面に霧がかかっていたのであった。
(シカがしょっちゅうウロウロしている裏山 これまでクマは見たことがないとのこと)
一同体調は悪いのだが、老醜というか妄執というか、老い先短いゆえ「モトをとらねば」という意識だけは強く、途切れそうになる意識をなんとか紡ぎ合わせて囲碁を一局、二局と打っているとやがて昼メシ時となった。
「中華、焼肉ときたから今日はさっぱりしたものがいいな」
「蕎麦にしますか」
「う~ん。・・・カレーにしようか」
東京からはるばるやってきたAさんの食い物分類では、カレーは「さっぱりした食い物」になるらしい。
昼メシはカレーということで衆議一決したものの、どこのカレーにするかが悩ましい。
私としては「ヴィラ・アフガン」がいいのだが、同店は八ヶ岳南麓随一のカレー店とあって待たされる
リスクが常にある。
そういえばカラオケ友のBさんが「コジシタ八ヶ岳」のタイカレーがすこぶる旨い、と言っていたのを思い出して電話してみたのだが、あいにく本日の昼は休みとのこと。
Aさんは以前私から聞いた「一休のカツカレー」に興味津々の様子だが、あの量を思い出しただけで私は辟易した。
結局、「まずはヴィラ・アフガンまで下りてみて(←こういう人は滅多にいません)、混んでいたら一休に行こう」ということにあいなった。
二日酔い(元々「宿酔い」が正しいがAmebaハッシュタグでは「宿酔い」はわずか27件、一方の「二日酔い」は26,181件だから「宿酔い」はもはや死語といってよいだろう)の日にカレーを食いたくなるのは「酒飲みあるある」だが、はたしてなにがしかの効果があるのだろうか。
二日酔いの主たる原因は、体内でアルコールをアセトアルデヒド(猛毒)に分解し、さらに酢酸(無害)
に分解する過程で脱水状態及び低血糖となることにある。これらが頭痛や倦怠感を生むわけだ。
(分解の過程で多くの水(H2O)が消費される 「くすりと健康の情報局」より)
なお一般に「肝臓で分解しきれなかったアセトアルデヒドが血管中に流出することが二日酔いの諸症状の原因」とされているがどうやらそれは迷信に近いものらしく、厚生労働省によると「アセトアルデヒドが血中に混入することはほとんどない」とのこと。
ついでながら、二日酔いの典型症状である吐き気は暴飲暴食で胃が荒れたことと、アルコールで胃の幽門が弛緩することが原因で、アセトアルデヒドとは無縁の症状である。
以上の前提から、草莽の二日酔い研究家ゆるふわ翁は、カレーと二日酔いの関係を次のように整理している。
〇 カレーの最大の効用は低血糖状態の回復にある。二日酔いの朝に牛丼が食いたくなるのも身体が
血糖値の上昇を求めていることによる。
〇 また激辛カレーを食うと水をグビグビ飲みたくなるから、これが脱水症状の緩和に寄与する。
〇 一方カレーによって促される発汗は脱水症状を亢進するものであるから二日酔いにはマイナスであ
る。「サウナでアルコールを抜く」などは迷信中の迷信と言ってよい。
〇 「カレーのターメリック(ウコン)が弱った肝臓を活性化してアセトアルデヒドの分解を促進する」という
のは即効性を考えると大いに疑問で、酒飲みの言い訳、ないしは製薬会社の陰謀に過ぎない。
幸い「ヴィラ・アフガン」に待つことなく入ることができた。
本日のチョイスはエビカレー。
これで一気に二日酔い解消だ。
(大エビが3尾 低血糖解消のためご飯は「M」にして水分補給のため辛さは「大辛」にした)