ネットで松庵、久我山、宮前界隈の物件をチェックしていると土地の広さもほどよく買い物も便利そうな物件があったので、さっそく懇意にしている不動産屋に連絡をとって現地に案内してもらうことにした。
それにしても「お探しの地域での出物は毎日チェックしております」という担当氏が何故私に連絡してこなかったのか不思議だ。ことによると「毎日・・・」というのは単なる営業トークなのかもしれない。私の脳裏には疑念が薄墨のように広がった。
当日は担当氏に社長も加わって現地へ。以前気に入った土地①を再度見学してからその近所の物件②も見学、最後に私がここはいいかもと連絡をとった物件③の三つを見て回ることになった。
(①南西角地の物件 西友富士見ヶ丘店が近くにある 建ぺい率40%というのが難点)
(②北西角地の物件 近隣にスーパー、コンビニはない)
本日の目的である物件③は住宅街の奥まった場所にあり、取りつき道路もとても狭くて「開けた感じ」というのは全くない。社長と担当氏は異口同音に①または②を勧める。
「ここは道が狭すぎてクルマの出入りがメンドウですね」
「上下水道とガスの引き込み工事が必要になりますね。5、60万、いや100万はかかるでしょうね」
「同じような価格なら角地がいいです。土地としての価値が違いますから」
社長、担当氏と話しているといつも感じるのだが、彼らは土地を「資産価値=売買価格」の観点からのみ評価する(まあそういう商売だから当たり前だ)。社長は角地に対する評価が高く、担当氏は「高台」に拘る。
(担当氏がかつて推奨した「高台物件」土地の3分の2ほどが道路より約1.5m高くなっている
高齢になるにつれて階段の上り下りが辛くなりそうだ)
一方「住み心地」という観点では土地の評価は人それぞれだろう。例えば私の場合は、
・ 角地よりも袋小路の土地が落ち着いていて好き
・ 西側道路の土地は西日をモロに受けるのでイヤ
・ 隣地や道路とは高低差がない方がよい 特に隣地より低いのはNG
・ 駅近は人の往来が多く、アパートも多くて落ち着かない
という感じ。固定資産税の節減になるわけだから地価など安ければ安い方がよい。
もし買うなら③がいいや、ということでその日は社長一行と別れたが、家に帰って物件を再度ネットで
チェックしたところ、意外な事実に気がついた。この物件は売主が某不動産会社で、取引態様が「媒介(仲介)」でなく「直接売買」なのである。
仮に私がこの物件を購入するとなると、私と売主の直接取引となって仲介業者(=世話になっている不動産屋)に仲介手数料が入ることは金輪際ありえない。つまり不動産屋にとっては旨みゼロの物件なのである。
そのインパクトはどれほどかというと、仮に5000万円の物件を仲介した場合彼らの手数料収入は、
土地価格5000万円×3%+6万円 = 156万円
となるから彼らにとっては笑い話では済まない。
上記算定式は宅地建物取引業法が定める法定上限値だが、業界の手数料相場は上限値にほぼ張り付いているようだ。
仲介物件の場合でも私が世話になっている不動産屋は買主である私からしか仲介手数料が取れないからまだかわいい(?)が、「すみませんじゃ済まないとも不動産」、「とうとう李バブル」といった業界大手の不動産会社になると「両手仲介」といって売主買主双方から仲介手数料をとる機会が多いらしい。
そうなると一度の取引でなんと312万円が転がり込んでくるわけだからボロい商売といえばボロい商売なのである。
そんなわけで、担当氏も社長も祈るような気持ちで私のジャッジを見つめていたに違いない。
直接売買の物件を不動産屋に案内させるとは気の毒千万なことをした。翌日担当氏にお詫びの電話を入れた。
「いえ、私どもは全く気にしておりません。どんな形態であれ、最後の最後までお気にいったものが見
つかるお手伝いをさせていただきたいと願っております(キッパリ)」
「千三つ」と言われる不動産商売。
世の中に楽な商売などないが、不動産業も決してラクではない。