(山梨銘醸HPから)
昨年秋のことだが、山梨県の誇る銘酒「七賢」の蔵元山梨銘醸から25年熟成スパークリング日本酒「EXPRESSION 2019」が発売され、畏れ多くもそのうちの1本が「ひまわり市場」の酒コーナーに鎮座ましました。その価格はなんと720mlで2万5000円、日本一高い酒である。
この酒を前にして、同市場の有名人「世界のヒライデ」こと「酒感知センサーつきAI搭載ヒト型ロボットHIRAIDE-Z号(以下長いので「Z号」と呼ぶ)」と私は、
「ここは一番八ヶ岳南麓の酒好きを糾合して試飲をしようじゃないか」
という話で盛り上がったのだが、10人で割り勘にしても2500円という高額負担がネックとなり、その後話は杳として進まなかった。
ところがここにきて話は急展開、ついに来る12月に試飲会を開催する運びとなったのである。
さっそく南極、じゃないZ号に朗報を告げると、誰かに横取りされては、とロボットなりに気をつかっていたらしく密かに隠匿していたという「EXPRESSION2019」を冷蔵ケースの奥から取り出してくれた。
(ロボットなので喜怒哀楽ははっきりしないがZ号もうれしがっている様子
ナスカの地上絵のような箱の意匠はキースヘリング(故人)のデザインの由)
「やっと日本一高い酒が飲めるね」
「ピピピ、日本一高い酒ハ、ノメマセン」
「・・・(こいつちょっと老朽化してきたか?)」
「ピコピコピー(←AIが高速回転する音 意外とアナログだ)、七賢ガモット高い酒ヲダシマシタ」
Z号は陳列棚を指さした。
そこには燦然と輝く「EXPRESSION2020」が。お値段はなんと、なんと5万円である。10人で割り勘しても一人5000円、田酒山廃仕込特別純米、赤武純米大吟醸、作(ざく)純米大吟醸、え~とそれから、まあいいか、とにかく高級酒の一升瓶が買える値段だ。
(七賢「EXPRESSION2020」10月発売 小瓶はおマケの古酒だそうな)
う~む。
私はZ号の横顔を盗み見た。ヒト型ロボットは怒っているのか、悲しんでいるのか、その表情からは
窺い知ることはできない。
「5万円は無理だよな~」
「ピコピコピー(同上)、オマエは悪くナイ。地球上の生物ニハ永遠ニ手ガトドカナイデショウ」
せめてもう少し前に試飲ができていたなら、我々は「日本一高い日本酒」を味わうことができたのに。
そんな人間のおセンチより、Z号にとっては大切な酒コーナーに自分が試飲したことがない酒が二つになってしまった、という事実の方が深刻な様子なのである。
そんなわけで我々は予定どおり「2019」の試飲をすることにした。
人類の叡智に限界はない。50年先か100年先か、いつの日にか我々の子孫が「2020」の試飲をZ号と楽しむ日が来るだろう。
Z号のリサーチによると、「EXPRESSION2020」は白州にある山梨銘醸本社の売店以外では日本全国で唯一ひまわり市場にしか置いていないとのこと。
買う買わないはともかくこの逸品、お買い物のついでに一度見物してみてはいかがでしょう。