「マグレ鴨」は「まぐれ」ではなかった | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

 八ヶ岳南麓で洋風のレストランといえば殆どがイタリアンで、フランス料理となると中村農場直営の「ル・ピオニエ」、国道141号沿いの「愛と胃袋」位しか思い当たらない。

 

 食い意地のはった知人とそんな話をしていると、清里のフレンチレストラン「森の料理店イゾルデ」が旨いのだとおっしゃる。

 どれどれ、とさっそく電話してみると現在休店中で少なくとも年内はこのまま休店、来年どうするかは年末までに決める、とのこと。コロナ禍の影響か、どうやら店をたたむ可能性もあるらしい。残念。

 

 そんなわけでなんとなくフランス料理に気が惹かれ、東京に戻ったのを機に地元阿佐ヶ谷の

ラ・メゾン・クルティーヌ」を訪れた。

 

(餃子の「豚八戒」の奥、「阿佐ヶ谷バードランド」の隣、「東京コケコッコ本舗」の向かいという阿佐ヶ谷でもかなりディープな場所にひっそりと佇む)

 

 本場フランスの同名のレストランで修業したシェフがこの地に店を構えたのが2011年のことだという。

私が店の存在を知ったのはつい最近だからそれだけ街に溶け込んでいるということだろう。

 

 この日のコースはコンソメスープの後「マハタとホタテのタルタル」で始まった。一見家でも作れそうな

簡素な料理だが、その味わいの豊かなこと。

 残りのソースを自家製パンできれいに拭って皿をピカピカにした。この後の料理でも同じ儀式が続いたから、この日計4個のパンを食ったことになる。

 

(マハタのタルタル(左)とカボチャのスープ)

 

 次に出てきたのは「カボチャスープバルサミコのアクセント」。

 通常カボチャのスープなんぞ見向きもしないが、これも旨い。バルサミコを混ぜたクリームが本当によいアクセントになっている。

 

(自家製パンが大活躍 フランス産パムプリー無塩バターをつけて)

 

 三番目は「マグロのポワレ オゼイユソース(ほうれん草のようなハーブのソース)」。

 ポワレというのは下味をつけた食材を動かさずにフライパンでじっくりと焼く技法のことで、動かして食材に火を通す技法をソテーというそうだ。これは前2品に比べるとまあまあか。

 

 

 そして本日のメインは「フランス・ランド産 マグレ鴨のロティ クルティーヌ風」。本家クルティーヌ(今は閉店してしまったそうだ)の名物料理だったらしい。

 

(旨いよ、これは)

 

 私が初めて「マグレ鴨のロティ」に出会ったのは今からおよそ10年程前、日本橋室町のジビエの名店

NICO」でのこと。

 豊かな鴨肉の味わいの深いことといったら、以来「NICO」に顔を出すたびに「マグレ鴨のロティは」と尋ねるのだが、滅多に入荷しないらしくその後一度か二度しか口にできなかった。

 

 そんなこともあって私の脳裏では「『マグレ鴨』とはまぐれで罠にかかった巨大な鴨のこと」というイメージが出来上がったのである。

 実際のところはフォアグラ用の鴨のことを「マグレ鴨」というそうだ。フォアグラ用に高カロリー食をたっぷり与えられた鴨は胸肉も肥大化するらしい。なんだか哀れな話だが、旨いものは旨い。

 ちなみに「ロティ」とはオーブン焼きのことで、英語の「ロースト」に相当するとのこと。

 

 最後に「ブルーベリーのタルト フロマージュブランのソルベ添え」が出てコースはおしまい。

 

 

 食い過ぎで人間マグレ鴨と化した私は、阿佐ヶ谷の街をそぞろ歩いて消化に励んだのであった。