(阿部イチゴ園前より墓地ごしに北岳を望む)
年末に広島から老母宛てに生ガキが届いた。私が生まれる前老母は山梨で教鞭をとっていたことがあったが、その時分の教え子が毎年カキを送ってくださるのである。当時は母も若くて「ねえさんセンセイ」として子供達の人気があったのだろう。
老人ホームの母は今更カキを食うこともできないので及ばずながら私が全て食し、母の近況をお伝えするとともにお礼の品を贈ることにした。
夏ならサクランボ、桃、ブドウ、夏野菜など選択肢は多いのだが、この時期の八ヶ岳南麓の贈答品といえばイチゴ一択である。さっそく近所の名店「阿部イチゴ園」へ。
(地元で根強い人気の「阿部イチゴ園」 日曜定休というところに地元客重視の姿勢が表れている)
10時の開店直後に到着したがすでに先客が何人かいらっしゃった。ここの一番人気はハネだしの小粒イチゴである。「ジャム用」と称しているが全く無傷で、開店と同時に売り切れとなることもしばしばだ。
贈答用の大粒イチゴを宅配便で送ってもらうことにして、ついでに内部の様子を撮影させてもらおうと思ったが拒否されてしまった。ブログ等に掲載されてこれ以上お客が増えるのは迷惑なのだとおっしゃる。残念だが反面頭が下がる思いだ。
仕方なくイチゴ園の周囲をウロウロ。
いつもと違うアングルの八ヶ岳には分厚い雲の帯がかかっている。
(阿部イチゴ園前から 「魔の山」と化した八ヶ岳)
南側には富士山と北岳がよく見えるのだが、北岳の前景となる小高い場所には墓地が燦然と輝いている(上の写真)。
ここに限らず八ヶ岳南麓の墓地はどこも南向きのやや小高い場所にある。八ヶ岳南麓で土地を探し始めた最初の頃から、何故か集落の一等地に墓地があることを不思議に思ったものだ(下の写真)。
(小高い丘の墓地 場所は小淵沢のどこかだが今となっては分からない)
静岡にお住まいのYさんも「八ヶ岳南麓の墓地は皆いい場所にありますよね」とおっしゃっていたから、あながち私の勝手な思い込みとはいえまい。
東京でも(東京は土地が狭いから比較しても意味はないが)静岡でも見られない死者に一等地を提供するこの風習はどこから来ているのだろう。ことによるとこの界隈に多い宗派の特色かと思って調べてみたところ、北杜市には79か寺がありそのうち過半は曹洞宗であることが分かった。
(北杜市寺院の内訳)
曹洞宗 48
日蓮宗 11
臨済宗 9
浄土宗 3
真言宗 3
その他 5 (浄土真宗、日蓮正宗など)
禅宗の墓所は見晴らしのいい場所に建立するのだろうか。ググってみてもそれを裏付けるような記述は見当たらない。
ひょっとするともっと素朴な、山岳信仰のようなものが背景にあるのかもしれない。
太古の昔からこの地で暮らしてきた人々は、富士山、北岳、八ヶ岳がよく見える場所での永遠の眠りを
求めてきたのだろうか。