(天元戦第5局終局後の様子 背中は挑戦者山下敬吾9段)
国民栄誉賞男井山裕太天元(29 棋聖、本因坊、王座、十段)が第44期天元戦の防衛に成功、囲碁7大タイトルの通算獲得数が43となり歴代新記録を達成した。
井山さんおめでとうございます(羽生さん井山の国民栄誉賞の記事は → ここ )。
7大タイトルの獲得ランキングを調べてみた(将棋は現在8大タイトルとなっている)。
井山さんに次ぐ2位~4位はいずれも故木谷実9段が主宰した「木谷道場」の出身者である。このほかにも大竹英雄さん、武宮正樹さん等、木谷門下は一時棋界で圧倒的な勢力を有していた。
幼い彼らを住み込みの弟子として預かり、我が子のように慈しんだのが木谷実さんの奥様美春さん(故人)で、その著書「木谷道場と七十人の子どもたち」は囲碁好きの方にとってはもちろん、そうでない方にも楽しく読めるお勧めの本である。
また、第5位の張栩名人は木谷門ではないが、奥様の泉美さん(プロ棋士)は歴代3位の小林光一さんの娘さんであり、お母さまは木谷夫妻の娘禮子さんだから、まあ木谷門といえなくもない。
私は詰碁には全く興味がないのだが、彼の詰碁集「張栩の詰碁」だけは所持している。
この詰碁集にはコラムがたくさん入っていてその中に泉美さんのコラムがある。そのひとつに二人の初デートの話がある。初めてのデートにワクワクドキドキする泉美さんに張栩青年は「僕があなたに出来るのはこれだけだから」と自作の詰碁を渡したそうだ。その後もデートのたびに詰碁を渡された泉美さんは解けるまでデートがお預けとなりちょっと悲しい思いをしたというのだ。
私はこのエピソードがとても好きで、この詰碁集を手放せなくなった。もちろん作品集自体も秀作として評価が高い。
左:木谷道場と七十人の子どもたち(1992) すでに絶版となりわずかAmazonの中古で入手可
右:張栩の詰碁(2006MYCOM囲碁ブックス)
もう一人の国民栄誉賞男、将棋の羽生善治竜王(48)は、竜王戦タイトル防衛に失敗、通算100期の金字塔はお預けとなった。とはいえ今でもタイトル獲得数は歴代トップで「タイトル100期」は通過点としての意味しかない。
羽生善治さんはこれで平成3年以来、27年ぶりの無冠となった。
長いことお疲れ様でした。
平成元年に弱冠19歳で竜王となった羽生さんと、平成2年に角界に入門し今年大相撲と縁を切った花田光司さん(元貴乃花親方)は、平成の幕開けとともに活躍した平成を象徴するヒーローであり、同じ時期に管理職になってサラリーマン黄金期(?)を迎え今年退職した私や同世代の皆さんのモニュメントでもある。
さらば平成。
そんな思いが去来する年末である。