過当競争の歯科業界 よい歯医者を選ぶポイントは | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

(新しい歯科は美容院並みに美しい)

 

 過当競争のあまり経営破綻に追い込まれる歯科医が増えているという。

 東京商工リサーチによると、2017年の歯科破産数は20件(平均負債額5500万円)、さらに破産手続きには至らないが廃業した歯科医が144あるそうだ。

 

 歯科業界がどの位過当競争かというと、全国の歯科医師数は10万1,551人(2016年厚労省調べ)で少子化にも拘わらず人数は毎年増えている。この人たちが受け取る歯科医療費は3兆円弱、一人当たり3000万円弱である。一方歯科以外の医者は全国で30万人、医療費は約30兆円だから一人当たり医療費は歯科医の3倍の1億円である。

 年収3000万円というとサラリーマン感覚でいえば高給取りだが、ここから設備のリース代(1~2000万円位か)、人件費(3~4名で1000万円はいくだろう)、家賃、国民健康保険料、国民年金掛金を払うわけだからサラリーマンと比較してもそれほど恵まれているわけではない。まして歯科医院過密の東京では家賃や人件費の負担はさらに重く、どんどん潰れていくわけだ。

 

(荻窪駅周辺の医者(左)とコンビニ(右)の分布 歯科医院は全国で6万8千軒、コンビニは5万5千店))

 

 このような状況下、歯科医の商売のやり方もいろいろだ。

 

 まずは、「ノルマ必達型歯科医」。 

 昨年の夏のこと。

 勤務先のビルの歯科(治療台4席、医師1人というよくあるタイプ)に10年ほど前からお世話になっていたのだが、ある日顔なじみの歯科衛生士さんが眦を決して、「これどうですか」と、口内洗浄液と歯磨きペーストをかなり強引に勧めてきた。

 日頃お世話になっているのでさっそく購入したが、さらにしばらくすると、院長(法人組織で飯田橋店の店長という位置づけ)が、

 「ゆるふわさん、インプラントやる予定ありますか?」というので、今は考えていない、と伝えると、

 「じゃあ、この歯が弱ってるので抜いて、ブリッジにしましょう」と、一週間後ササっと奥歯を抜いてしまった。まさに有無を言わさぬ早業である。おそらく本部から「収入倍増!」等のノルマが課せられたのであろう。

 私は定年退職を迎えるのを奇貨として、抜けた奥歯はそのままにこの歯科医と縁を切った。

 

 次は「駅前個人タクシー型歯科医」。

 奥歯が1本抜けただけで随分食べ応えが違う。困った私は家から一番近い暗~い感じの歯科医(治療台2席)へ行った。

 センセイは後期高齢者手前位の女医である。私が、

・ とりあえずは歯石の掃除をお願いしたい

・ また抜けた歯の跡をどうするか、インプラントかブリッジか、部分入れ歯か、他の歯の具合も踏まえて

 中期的な観点からアドバイスが欲しい

と告げると、女医センセイはやおらレントゲンを撮り、さらに年上の歯科衛生士のばあさんと交代した。

 ばあさんは、染料で歯の磨き残しを指摘し、「次回は歯ブラシを持参してください」とヌカす。

 「そういう指導は不要です。ささっと歯石取り、できたら1回で済ましてください。それから跡地をどうすべ
 きか教えていただければ結構」と私が言うと、こんどはババアはグラフが載ったパネルを持ってきて、

 「歯周病患者、その予備軍はこういう風に増えています」と啓蒙活動を始めた。

 要するに、歯の汚れチェック、磨き方指導、歯石除去(右上、右下、左上、左下)で都合6回診療報酬をゲットしたいのである。

 自由診療で一番ボロ儲けができるインプラント等この人たちに出来ようはずもないから、駅前の個人タクシーのようにロングを狙わないでコツコツ稼ぐ経営手法なのである。

 「次回は、その、ゆるふわさんのご都合のよい時に改めて、ということになさいますか?」見かねた受付嬢の気配りで、私はこの歯科医とも円満に決別した。

 

 その次は「底抜け脱線ゲーム(古いな~)」型歯科医

 次に行ったのが駅前に昨年できた歯科医である。HPや口コミサイトで見るとエラい気が利いている。

 まだ新しい治療室には6席の診察台が並んでいる。リース代負担は年間2000万円ほどもかかるのではないだろうか。

 ここの院長、副院長はいずれも雇われ、院長は茶髪のサーファー風だが実は私より年上だ。

 かくかくしかじか、これまでの経緯を告げると、

 「ゆるふわさん、もう悠々自適ですか~、いいなあ、うらやましいなあ」

 「私に任せておいてください。BNS、ばっちり治してさしあげます!」

 「若いヤツはね、すぐ『インプラント』って言うからね。ブリッジで十分!」

と、どこそこチャラい。

 ここは立地上家賃が高いうえに、衛生士などスタッフを6人ほど雇っている、しかも見かけより年かさの院長はいまさらボロ儲けできるインプラントの技術は習得できない、という三重苦である。そこで6席フルフルに患者を詰め込んで、2分雑談するとあっちの患者、5分いじるとこっちの患者という「底抜け脱線ゲーム」を日がな一日中やっている。

 なにせ予約は運が良ければ1週間後、下手すると3週間後という過密状態だ。見た目は立派だがこんな所に虎の子の歯の治療を任せていいのだろうか、私は悩み、「熱中症が心配だから」ということで当面予約しないことにさせてもらった。

 

 そうこうするうちに家内がご近所の人に勧められて、とある歯科医に通い始めた。

 ここは父子二代でやっており、造作は古いが設備は新しいらしい。

 そして何より素晴らしいのは、「歯は極力抜かない」をポリシーにしているという。家内も普通なら抜かれそうな歯を1時間以上かけて初期治療してもらったそうだ。まさに「医は仁術」型歯科医ではないか。

 

 私はようやく理解した。よい歯医者を選ぶポイントは:

・ 造作の美しさ、派手さに誤魔化されてはいけない

・ 閑古鳥が鳴く歯科医には相応の理由がある。といって混んでいる歯科医が優秀ということではない

・ 「親子二代」は狙い目。創業費の償却はとっくの遠に終わっているから経営は安定。インプラントだ、

 口内洗浄液だとセコく稼がなくてもよい

・ 二代続けば地元でもそれなりに評判のいい歯科医のはず

 

 要するに、旨い食い物屋の見分け方と同じなのである。

 さっそく家内に私の分も合わせて予約してもらった。

 ばあちゃんセンセイ、茶髪のセンセイ、どうかお達者で~。