久しぶりに税理士の小野寺センセイにお目にかかった。センセイは確定申告の手続きがようやく終わってホッとしている間もなく今度は企業の期末決算で忙しいとのこと。
「ふふふ。定年がないとはいえセンセイの老後は国民年金ですから、今のうちに稼がないと」
「そうなんですよ~。正直私の黄金期はあと10年位ですから、もっと頑張らないと」
このセンセイとは万事波長があう。
(早稲田通り沿いに事務所はある)
そういえば老母の定期預金が満期になったというので(ごくわずかな額だった)つきそって銀行に行ったところ、いきなり窓口で「この預金の名義を息子(=私)に変えてください」と言い出したので、窓口の人も私も大いに度肝をぬかれました、という話をしたところ、
「それならこういうのがありますよ」と教えてくれたのが「相続時精算課税」制度である。
(営業活動頑張れ小野寺センセイ)
センセイの話に加え、家でググって調べたところこういうものらしい。
・ 60歳以上の老人の財産が対象、贈与を受ける側は推定相続人か孫に限定される
・ 累計2500万円までの贈与が非課税となる(翌年に要申告)
・ ただしこの制度を利用すると当該人同士の暦年贈与(年間110万円までの贈与が非課税というや
つ)は以後一切できない
・ 贈与財産は贈与人死亡時の相続手続きにおいて相続財産に算入され、相続税計算に反映される
つまり、減税効果があるわけではないということだ。節税という観点ではむしろ年間110万円ずつ贈与した方が優れている。
ではどういう場合にこの制度が活用できるのか、私なりに整理すると:
・ 「この財産はこいつに」、という意思を生前に確実に実行できる(親の立場)
・ 事業用の資金などを迅速に子供に贈与できる(同上)
・ 親の気が変わる前に財産をゲットできる(子の立場)
・ 相続争いが始まる前に先手を打てる(同上)
日頃私のグチを聞いているセンセイは、母の気が変わらないうちに、ということでこれを奨めてくれたのに違いない。
ツーと言えばカー
阿とみれば吽
波長が合う、というのは素晴らしいではありませんか。
「ただし申告が必須ですよ」センセイは強調した。
「今回の相続の申告と合わせてできないすか?(サービスで一緒にやってよ)」
「できません。相続は相続、贈与は贈与。それに時期も違うし(ざけんなよ~)」
「ふ~ん、私が申告やれますかね(センセイにカネ払うのバカらしいからさ)」
「う~ん、相続ほどにはハードル高くないですけどね~(あ、こいつケチだったんだよな)」
「・・・・」
「・・・・」
お互いにしばし沈黙、完璧なまでに同期がとれている。
その後、センセイに頼むといくらなの、と私が言うのと、報酬はまあ3万ってとこでしょうとセンセイが言うのとは同時であった。
にっこり笑って見つめあう二人。まるで南北国境線上の金正恩とムンジェインのようだ。
南北首脳会談と同じくこの話は具体的な部分に立ち入らずこれでおしまい。
センセイが企業のお得意さんからたっぷり報酬をゲットできますように、
そして豊かな老後を迎えることができますように、
そう祈りながら私は北へ、いや家へ帰ったのであった。
(地味~な事務所 食い物屋と同じく店構えにカネをかけない税理士事務所は良店といわれている)