朝となく昼となく、
蒸し暑い夏の日も身体の芯まで凍えそうな冬の日も、
得意の絶頂の時も行き交う人たちが皆我より偉く見える日も、
いつもお世話になった立ち食い蕎麦「ゆで太郎 飯田橋店」が突然12月22日(金)をもって閉店することになった。
(閉店のお知らせ 長い間ご利用頂きありがとうございました。12/22を持ちまして閉店の運びと
なりました。今までありがとうございました。近くに水道橋店、九段南店等ありますので御利用願い
ます スタッフ一同)
少し前から店主の顔色がすぐれない感じはしていた。おそらく体調が悪いのではないだろうか。もともと
閉店当日はなんやかやと慌ただしいだろうし、私も平常心を保てるか自信がないので、1日早くお別れの蕎麦を食うことにした。
7:45、店内はほぼ満員である。
券売機でかけそば(320円)と温泉卵(60円)を買う。
ゆで太郎本部で定めた正規料金では、生卵は60円、温泉卵は70円となっているが、ここではどちらも60円だ。こういう良心的なところが案外採算にはきいてくるのであろう。アパカレーとは経営マインドが違う。不思議なのはどっちも60円なのにトッピング無料券の「生たまご」を温泉卵で、というと拒まれる。
店主は「いらっしゃい!」と言ってもロクに目を合わせないのだが、「はい、かけ、温たま。ネギ多め」と、私の顔と好みを覚えているうえに、見ていないようでチラっと客の顔を確認している。これぞプロだ。
(最後の蕎麦 かけ+温たま ネギ多め
これに天かすほんの少し 唐辛子大量投入がゆるふわ風)
蕎麦をすすりながら壁をふと見ると、「12月22日14時に注文終了します」の張り紙。なぜ14:00かは
分からないが律儀な店主の性格が出ている。
一昨年水道橋で40年続いた喫茶店「BUN」が閉店した時は、マスター夫婦にツムラの薬湯入浴剤と
店の写真を額に入れてプレゼントした。マスターからはお返しにBUNのコーヒーカップ2脚を拝領したのだが、どうもゆで太郎ではそういう雰囲気はない。
ガガっと食って店を出るとき、万感の思いを込めてややデカい声で
「ごちそうさま!」と店主に声をかけた。
「まいど!」という店主は相変わらずこちらを見ようとしないが、その声はいつもよりデカかった。
(ゆで太郎の思い出 使い残したトッピング無料券)