その夜、テレビで、ネット上の投稿動画の紹介をやっていた。
私の前では、愛猫が椅子に横たわっている。
むく。
頭をあげて、テレビに見入る愛猫。
チャンネルをかえようとしていた私は、気を使う。
「りんちゃん、見てんの?」
飼い主を無視する愛猫。
“見てるにきまってるでしょ”感を、耳や後頭部にみなぎらせて、
ぴくりとも動かない。
私も、しぶしぶ画面
に見入る。
氷のはった湖面で、動けなくなった鹿を救済する動画だった。
食べ物をさがしているうちに、戻れなくなったらしい。
人間が近づくと、逃げようと焦るが、氷で足元がすべり、じたばたしている。
「えー、そこまで行けたんだからさ、戻れるようなもんだけどね~」
私は言った。
すると。
きろん。
愛猫がふりむいて、私をにらんだ。
その眼の恐ろしいこと。
“あんた、よくそんなひどいことが言えるね。
戻れるもんなら、戻っとるわい“ってな感じである。
「り、りんちゃん、なにもそんな顔しなくても。。。
あ、鹿ちゃん、戻れたよ。よかったね
」
しどろもどろの私は、当然、再び無視された。
翌朝。
昼間解けた雪が、明け方凍って、歩道はつるつる。
おまけにそこは、少し斜めになっていて、両足とも、すべる![]()
おっと、え、やだ。
私は焦って、じたばたした。昨日の鹿と同じ動きである(多分)。
すれ違う子供達が、こころなしか、くすくす嘲笑っているように感じる。
私は、こんなに必死なのに。。。![]()
りんちゃん、お願い。
あの子達も、あの眼でにらんで!
