■遅い環境整備、施設側にいらだち

 特別養護老人ホームに、たんの吸引や経管栄養など医療行為の必要な人が増えている。こうしたケアを、特に看護職のいない夜間、だれがするかが課題だったが、厚生労働省は4月1日、局長通知で介護職員が一定条件下で携わることを認めた。今までも現実には介護職が担っており、条件を整備し、追認した格好だ。施設側はおおむね歓迎するが、環境整備が遅いことにいらだちも募っている。(佐藤好美、清水麻子)

 ◆介護職が担う医療行為

 「今日は暖かいね。苦しい? 吸引しようか」

 横浜市泉区の特別養護老人ホーム「天王森の郷」。看護課長の久米葉子さんが、要介護5で寝たきりの高齢者に声をかけた。

 実際にたんの吸引を行ったのは介護職の布施美智子さん。まだ経験が浅いため、要所では「これでいいですか」と確認。久米さんが「そうそう、それでいいよ」と指導し、たん吸引を終えた。

 布施さんは「介護職を目指したときは、ここまでするとは思ってもみなかった。きちんと教えてもらったからできると思うが、不安は大きいです」と言う。

 飲み込みの機能が低下した高齢者の口腔(こうくう)内はたんがたまりやすく、食事の残渣(ざんさ)も残りがち。そのままだと誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしかねない。しかし、口腔内の「たん」の吸引や、胃に管を通した「胃ろう」への栄養注入は「医療行為」。看護師など医療職の仕事に分類される。

 特養に看護職の配置は必須だが、夜間はいないところがほとんど。多くの特養で、介護職がたんの吸引などを担っているのが実態だ。

 昨春、日本介護福祉士会が行った調査では、介護福祉士など介護職が口腔内吸引に「対応している」割合は、日中で約4割、早朝や夜間は約8割。胃ろうへの栄養補給も日中で3割超、早朝や夜間では6割弱が「対応している」とした。

 ◆重度者増で医療ニーズ

 介護現場では、介護職にこうした行為の解禁を求める声が強かった。そもそも、厚労省は特養に重度者を増やすよう求めており、重度の人ほど医療行為も必要。しかも、たんの吸引も胃ろうの栄養補給も、家族がするのは違法でない。「家族がしていることを、プロである介護職が『できない』とは言えない」(ある施設長)というわけだ。

 厚労省は昨年、全国125の特養で看護職と介護職が連携し、入所者の口腔内たん吸引や胃ろうによる経管栄養を行うモデル事業を実施。結果を踏まえて今回、一定条件下では「やむを得ない」と、介護職にこれらの行為を容認した。

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 ■配置医承認必須なら業務難しく

 ◆複雑になった手順

 冒頭の「天王森の郷」では実は2年前、たんの吸引や経管栄養のマニュアルを作成。介護職もこうした行為に携わってきた。介護職の勉強会や実習も行い、家族へも説明し、安全に業務を行ってきた自負がある。

 しかし、鈴木啓正(ひろまさ)施設長は厚労省の通知を読んで、「驚いた」という。個々の入所者について、たんの吸引をする介護職員を「配置医が承認する」となっていたためだ。配置医の診療は週1~2度で、介護職の力量までは把握していない。承認が必須なら業務は難しくなりかねない。

 「個別ケースで医師に許可を取れと言われても困る。許可することは責任を取ることと裏表だから、施設長が責任を取るなら、どの職員に頼むかも任せてほしい」という。

 いらだちの背景には、医療的ケアの必要な人が年々増えているのに、環境整備が遅々として進まないことがある。

 これに対して、厚労省医政局医事課は「看護師は医師の指示で医療行為を行う。それなのに看護職が医師の指示なく、医療行為を介護職に指示するのは難しい。配置医が現場の事情を把握していない場合は、看護職が入所者の状態や介護職の力量を医師に情報提供し、連携して対処してほしい」と理解を求める。

 ◆大筋は歓迎

 施設の中には、介護職にこうした業務が認められていないからと、医療的ケアの必要な人の入所を断ったり、医療行為が必要になると、退所を求めるところもある。しかし、鈴木施設長は「通知が出れば、家族も施設入所を求めるようになる。施設側も法的裏付けがないと心配せずに済む。利用者にはプラスだ。しかし、ほかにも服薬、つめ切り、軟膏(なんこう)の塗布など、グレーゾーンの行為は多い。特養は最後まで人間らしく、普通の生活をしてもらう場だから、家族がすることは、施設には認めてほしい」と話している。

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 ■消極姿勢の厚労省

 たんの吸引のもう一つの課題が、在宅要介護者のケースだ。厚労省は平成17年、ホームヘルパーなどが家族に代わり、一定条件下でたんの吸引ができると認めた。

 しかし、通知から5年がたっても、たんの吸引を行うヘルパーは少なく、家族の介護負担は重いままだ。

 吸引に携わるヘルパーが増えない背景には、厚労省の消極姿勢がある。通知では「当面やむをえない措置」として認めたに過ぎない。たんの吸引に携わるヘルパーを育てる枠組みはなく、引き受ける事業所は増えないままだ。

 しかし、こうしたヘルパーが増えなければ、重度になっても住み慣れた地域で暮らせる社会は実現しない。八戸大学の篠崎良勝准教授は「安全に医療的ケアが提供できるヘルパー事業所に介護報酬をつけるなど、厚労省の誘導策がほしい」と指摘している。

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 鳩山由紀夫首相は10日夕、学校耐震化について「超党派で頑張らなければいけない。いろいろと知恵を絞らなければいけないが、(各省の予算ではなく政府全体の)予備費を使用することも念頭においてやらなければいけない」と述べた。都内で記者団の質問に答えた。

 ぶら下がり取材の詳報は以下の通り。

 【演劇の殺陣けいこなど視察】

 --今日も切らせていただく。よろしくお願いします。

 「ハハハハ。どうぞ」

 --前回の事業仕分けでは、文化・芸術分野でかなり厳しい結果が出ることが多かったが、今日の視察の感想を

 「私はやっぱり、日本のある意味での国力は文化の力だと思っています。日本はいわゆる軍事力とか、そういうもので生きていく国ではありません。したがって、文化の発信力がこれからの日本という国をですね、世界にある意味で、尊敬をもってみていただける、最大の私は力だと思っています。その割にはですね、文化に対して、必ずしも今までの政府、国と言うべきかもしれません、力が十分に備わっていなかった」

 「今日はここで、廃校を利用した芸術活動を拝見させていただいて、私はすばらしいなと思います。廃校。こういった形で日本の文化力をあげるために使っていただくということは、非常にすばらしい、両者の思いが重なった中でできた発想だと思って、評価をしています。空き店舗とかを使って、演劇、芸術活動、けいこなどをしておられるようですけれども、今日も体育館で拝見いたしましたけれども、こういった廃校を利用した日本の芸術の力をはぐくむということは、私は大変大事なことだと思っております」

 「NPO(非営利活動法人)の活動を支援するような話も、決めたわけでありますが、文化をはぐくむために日本としての政治が果たすべき役割は、まだまだあるなと感じたところです」

 「また、今日は耐震化も一つの話題になりました。廃校になった後、耐震化も進められた。これから小学校、中学校の耐震化は、ある意味で超党派で頑張らにゃいかん話だとも思っておりますが、そういう意味でも、万一、学校が倒された後でも、大いに利用できるような設備にしていくということも、重要だなという認識を新たにしました」

 【普天間移設】

 --今日、岡田克也外相からルース駐米大使との会談の報告は受けたか。米国は協議入りそのものに難色を示しているが、今後、どのような態度で対米交渉に臨むか

 「うん。岡田外務大臣、ルース大使と会われた。その概要の説明を受けました。決して何かを拒否されたとか、そういう話ではありません。むしろ、これから難しい状況があることは変わりはないとは思っておりますが、5月末までに、私どもとすれば、アメリカにも理解を得られるような形で、普天間の移設問題、最終的な結論を導いていきたいと思っています。これ以上の内容に関して申し上げるべきではないと思っています」

 【「たちあがれ日本」発足】

 --本日、新党「たちあがれ日本」が旗揚げされた。民主党の受け皿を求める動きが活発化しているようにも思えるがどうか

 「私たち、政権交代をして、大変大きな変革、日本の変化、改革を求めています。で、改革にはさまざまないろんな力が動いてくることも、それはあり得ると思っています。ただ、私どもはこの改革の時計の針を逆に戻したりするつもりは、一切ありません。もっともっと加速しなきゃいかんなと思っています。そういう中で、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、政治家同士が新たな政治運動を作り上げていくということは、決して悪い話ではないなと思ってます」

 【学校耐震化】

 --耐震化に関し、国会でも「予備費を使うことも検討している」と答弁しているが、今日の視察を踏まえてどうか

 「はい。超党派でそういう動きが出ていると思っています。民主党としても、これは学校の耐震化。特に未耐震化の工事を行うのは、夏休みでないと難しいというご要望もいただいています。そうなりますと、いろいろと知恵を絞らなきゃいけませんが、学校の耐震化を急ぐためには、いわゆる予備費を使用することも念頭においてやらなきゃいけない話ではないかと思っています」

 【切るべきもの】

 --今日、刀を贈られた。「切られることが多い」と話していたが、首相、あるいは鳩山政権が一番切るべきものは

 「これは、いわゆる政官業のしがらみですよね。そういったものをどんどん、切り捨て御免でいかないといけない。古い体質をさよならさせないといけない。しがらみに対する抵抗は、ますます強まっていると感じています。私どもとすれば、新政権、決して負けてはならない。せっかく国民の皆さんのお気持ちをいただいて、ここまで来た以上、われわれとすれば、こういったしがらみを、切り捨てていかないといかんと思っています」

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 犯罪加害者の家族を支援するNPO団体「ワールドオープンハート」(阿部恭子代表)などは5日、犯罪加害者の家族を対象にした初めての全国調査の結果を発表した。約3人に1人が「うつ傾向」に陥っていることが分かり、阿部代表は「ホットラインの設置など加害者家族の求める支援を今年度から始めたい」としている。

 調査は09年12月~10年3月、約100人を対象に実施。4月5日までに34人から回答が寄せられた。困りごとを尋ねた質問では67%が「事件について安心して話せる人がいなかった」と回答。全員が「同じような体験者と話し合える場所の提供」を求めた。

 また、約3割を「うつ傾向」と分析したことについて、共同で調査を実施した仙台青葉学院短大の高橋聡美講師(精神看護学)は、薬物事件などより、傷害や殺人など他人に危害を加えた事件の方が、加害者の家族はうつになりやすいと指摘している。

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