想像妄想空疎空想うそ日記 -9ページ目

『警察庁から来た男』読んだ

佐々木 譲
警察庁から来た男

北海道警察本部に警察庁から特別監察が入った。やってきた監察官は警察庁のキャリアである藤川警視正。藤川は、半年前、道警の裏金問題の為に百条委員会でうたった(証言した)津久井刑事を彼のもとに呼び出し、監察の協力を要請した。藤川は道警の何に疑問を抱いているのかはっきりとは言わなかった。一方、札幌大通署の佐伯刑事は、署から程近いホテルでの部屋荒らしの件で捜査に向かっていた。被害にあった男は、昨年末、すすき野の風俗営業店での「会社員転落死事故」で死んだ男の父親だった。息子の死が転落事故として処理されたことに納得のいかない父親が、大通署に再捜査の依頼に来て、ホテルに泊まっていたのだという。転落事故に不信を抱いた佐伯は、部下の新宮とともに事故現場である風俗営業店に向かうのだが…。
(Amazonより引用)

『うたう警官』に続く、道警シリーズ第2弾。

 この人の作品がけっこう面白いと聞いて、適当に手にとって読んでみたら、シリーズの2冊目だったという罠。

 そのせいでか、登場人物の把握にしばらく手間取った。プロローグの交番でのできごとに始まって、警察庁から監察に来たふたりと、北海道警察本部の偉いさんに生活安全部と、札幌方面大通警察署の刑事課と生活安全課と、薄野交番の薄野特別捜査隊と…。前作の主要人物を知っていれば多少ましなのだろうが、まだ出てくるのかよ~とかわいそうな脳みそが混乱してしまったよ。ケイサツソシキフクザツネ。

 ある程度中心に動く人物を把握できたころには物語が動き始めて、そこから先は面白かった。膨大なデータを精査して事実をあぶり出そうとする監察側と、足で地道に情報を集めて事件を追う捜査側。違うアプローチで枠のあいまいなパズルを組み上げていく。
 序盤ではなんか短絡的だなーと思ったけど、伏線だったのだね。
 特に佐伯警部補と新宮巡査がじりじりと真相に迫っていく様子に引き込まれて、最後まで一気に読めた。

 ただ、終わり方が…というか、ラストの一文は…うむむ。この人もアドレナリン出てハイになっちゃったのかなー。がくっとチカラ抜けちまったよ。あははははあ。

 こちらにあった作者のインタビュー によると、この作品は三部作で、来年にはすべてのエピソードが解明される三作目を出す予定という。前作は個人の不正で(いや読んでないんだけど)、今回は組織の不正と来ているようだが、まだ膿を出した後の治癒がうまく進んでいない気がしないでもない。ぶつ切りに終わってしまった感もある今回の一件が、道警にもたらしした影響なども語られるのだろうか。

 もちろん、単品でもじゅうぶんに面白かった。
 ただやはり前作も読んでいれば、つまづかずにより楽しめた感じはする。

 まあシリーズものは順番に読め、ということでありますな。はい。


警察庁から来た男
佐々木 譲
角川春樹事務所 (2006/12)



↓こちらは一作目。来年映画化。(右側の文庫版では『歌う警官』に改題)
 
うたう警官
笑う警官 (ハルキ文庫 さ 9-2)


『一角獣をさがせ!』読んだ


マイク・レズニック 佐藤 ひろみ訳
一角獣をさがせ!

 うだつのあがらない私立探偵のマロリーは、相棒に女房と有り金ともども高飛びされて、自宅は大家に嫌われて追い出される寸前。大晦日の夜、事務所でやけ酒を飲んでいた。そこへミュルゲンシュトゥルムと名乗る緑色の妖精が現れる。彼は異次元のマンハッタンの住人で、盗まれた一角獣を探してほしいという。朝までに探し出さなければ、彼は制裁を受けて妖精の組合に殺されてしまうのだ! 一年の終わりの楽しい大晦日の夜に事務所にいる探偵なんてマロリーぐらいのもので、妖精の側にも選択の余地はないらしい。すべてはアルコールの幻覚症状かと思われたが、酔いが醒めても妖精が消える気配はない。暴力的な借金取りから逃れるためと、目先の報酬に飛びついたマロリーは、妖精に案内されて異次元のマンハッタンへと旅立つが…。



 さわりを読んだら意外に面白くて、ずるずる最後まで読んでしまった。

 前半は現代の私立探偵であるマロリーが、異次元の「おとなりマンハッタン」をなかなか受け入れられずに戸惑う様子が面白い。そのまま異世界観光珍道中で終わるのかと思っていたら、中盤からマロリーも本腰入れて捜査を始めて、探偵小説らしい展開に。へぼ探偵かと思いきや、実はけっこう優秀でいい仕事してくれた。ちなみにマロリーが追いかけることになるのは、その世界ではすべての住民に恐れられている最強の悪魔。本当に邪悪でものすごく強い!のだが、果たしてユニコーンを探し出して、依頼人を救えるのか?

 主人公の性格がいい。マロリーと異次元マンハッタンの奇想天外な住人たちの、かみ合わないままテンポよく進んでいく漫才めいた会話が笑えた。

 劇場の幕間に幽霊が演劇をしたり、タクシーが象だったり。CG+実写のユーモアファンタジー映画みたいなイメージかな(どんなんじゃ)。いろいろ歴史の小ネタやオマージュとかパロディが入っているようで、そのあたりやマンハッタンの地理なんかが分かっているとよけい笑えるのだろうが、知らなくても充分楽しく読めた。作者もノリでアイディアを詰め込んでいる感じなので、世界の辻褄とかはあんまり考えないほうがよさそう。

 犯行の動機が思ったより浅くて違和感もあったのが、ちと残念。まあでも、そういうやつだしな…。マロリーのキャラクタはたいへん魅力的だけど、探偵ものとしてはこんなもんかなという印象だった。
 ファンタジーって何でもありだから、ミステリ系は相性があまりよくないような気がしないでもなく。どこかの感想で『不思議の国のアリス』が引き合いに出ていたが、まさしくそんな感じの前半の方が自分は楽しかった。


一角獣をさがせ!
佐藤 ひろみ (翻訳), マイク・レズニック (著)
早川書房 ハヤカワ文庫FT(1990/12)


『ブリジンガメンの魔法の宝石』読んだ


アラン・ガーナー, 芦川 長三郎
ブリジンガメンの魔法の宝石

 ウェールズ地方チェシャー県にあるオールダリーの丘には、不思議な伝説がある。丘の中の洞窟ファンディンデルブに140人の騎士と140頭の馬が不老不死の魔法の眠りに就いているという。彼らは遥か未来に暗黒の王ナストロンドがよみがえったときに目覚めて、正義のために戦うのだ。
 そして現代。二人の子どもコリンとスーザンは、オールダリー村に住む知り合いの農家に泊まりに来た。ところが実はスーザンがお守りの『涙』として持っていた宝石は、騎士たちの眠りを守る「ブリジンガメンの魔法の宝石」たる『炎の霜』だったのだ。『炎の霜』は何百年も前に、ファンディンデルブの守り人である魔法使い「銀のひたい」のキャデリンがうっかりなくしてしまい、それがめぐりめぐってスーザンのお守りになっていたのだった。一足先に気付いた悪の魔法使いに奪われた宝石。早く取り戻さなければ、騎士たちの眠りが覚めてしまう。こうして兄妹は魔法使いや妖精、魔物たちがくりひろげる伝説の世界の戦いに加わることになる…。



 なんか……よかった。面白かった。
 来る悪の復活にそなえて洞窟で眠る騎士たちを守る魔法使い。善の妖精や小人に、悪に堕ちた魔法使いと闇の小人族。人間が生活している同じ場所の目に見えないところで、神話の存在が息づいている。
 人と妖精が交わる描写も映像が目に浮かぶようでよいなあ。
 たとえば湖の小島にある森を見ているうちに、なんとなくそこに何かがあるような気がしてくる。いるはずないのに、ちらちら見える気がする。気になって気になって、意を決してそちらに目を向けると、本当に人(妖精)がいる! 湖の姫、『黄金の手』のアンガラッドと逢ったときの、小人フェノディリーの「人間は昔から夢は現実じゃないと考えてきた。」という言葉も、人間と妖精の関係を表している気がした。
 作者はウェールズの民間伝承をもとにこの物語を創作し、地名や人物はほぼ伝承のものを使用したのだという。だからこんなに人間と伝説の世界が違和感なく溶け合っているのかもしれない。
 子どもたちが魔物や悪い魔法使いに追いかけられたり、真っ暗な洞窟をさまよったりするシーンも、すごくスリリング。スレた読み手としては「どうせ助かるんだろう」とは思っているのだが(ああ)、それでも気になって次々ページを繰ってしまった。

 エピローグ的な部分がなくて、終わりは唐突な印象。
 まあ今回のエピソードは長い物語の中のほんの一部。伝説はまだ続いているのだろう。

 なんとなく以前読んだ『コーンウォールの聖杯 』という本を思い出した。あちらは屋根裏で見つけた一枚の古地図をきっかけに、子どもたちが悪の勢力と戦いながら知恵と勇気をしぼって聖杯探しを行う物語。やはりイギリスの自然と伝説が入り混じったファンタジーだが、自分は『ブリジンガメン~』のほうが好みかな。

 あと、一言。
 キャデリン、しっかりせい!


スーザン クーパー, Susan Cooper, 武内 孝夫
コーンウォールの聖杯




Alan Garner
The Weirdstone of Brisingamen: A Tale of Alderley
The Weirdstone of Brisingamen (Collins Voyager)
The Weirdstone of Brisingamen: A Tale of Alderley

 画像が出なくてくやしいので、洋書で出てきた表紙を並べてみたり。
 邦訳の表紙はもっと荒々しい感じ。クライマックスの戦いのシーン。


ブリジンガメンの魔法の宝石 (評論社の児童図書館・文学の部屋)
アラン・ガーナー, 芦川 長三郎
評論社 1979年発行