色塗りに飽きた
相手は魔法の使い手、テレポートも使用。武器は未だ不明。
考えれば考えるほど厄介な相手だなぁ、とイクスは思う。
手の内も知れてない敵と戦うのが、一番の苦手とするイクスにとって
目の前のブロウという戦闘相手は相性が悪かった。
どうする?攻撃パターンを出し切らせて攻略ルートをゼロから構築するか?
それとも一瞬でケリをつける? 短期集中戦に持ち込む?それとも長期戦?
それか…………ワザと負けてみる?
いや、最後のは彼のプライドが許さない。
「お手柔らかに頼む」
「そりゃ、此方の台詞だっての」
ひとまずは、ルート構築の方向で。
一任務目 4 デモ戦:魔法の独壇場
持っている武器は配給された演習用のハルバードだった。
いつもなら殺傷能力ももれなく付いてくるはずだが、今回は違う。
バトルフィールドに痛みを疲労に置き換える魔法が掛けられており、流血は無い。殺傷も不可。
デモ戦に最も適した環境だ。
バトル場は部屋の中、あたりに様々武器が置かれており、棚で区切られている、
天井は高いがまるで武器庫だ。
エーデルシュタインには建物が多い。それ故に路地や室内での戦闘が多いのだろう。
「(武器庫に当たったのは、正解だったかな)」
己が好む戦法を十分に発揮できそうで、イクスは安堵した。
一つの武器を扱い続けるのは、一般人には出来ても自分には……。
鐘が鳴る。
開始の合図だ。
「先手貰うぞっ!『グレイシャルチェイン!!』」
ブロウが魔法使用宣言に用いる単語を言い放つと、極寒の鎖が出現、真っ直ぐこちらに向かってくる。
イクスはそれを横跳びで避け、床を蹴り飛ばし特攻を仕掛ける。英雄アランの初期スキル、
コンバットステップは非常に便利で頼もしい。つい乱用してしまう。
ブロウの背はがら空き、そこを狙わずに何処を狙う?
「はっ!」
上半身と下半身を分断させるように薙ぐ、モノを叩く衝撃が走ると、
ブロウは「ぐおあっ!?」と蛙が潰れたような声を吐き
横に吹っ飛ぶ、呆気無く棚に打ち付けられ、衝撃を喰らった棚はグラリと揺れる。
正直ビックリした。次ももっとビックリした。
壁に打ち付けることに成功した瞬間、ブロウの姿が消える。
次の瞬間、イクスに恐ろしいほどの疲労が襲う。ブロウからの攻撃を受け、ノックバック。
姿が見えなかったため混乱しかけたが、刹那に見えた青光によって正体を見破る。
「(『ムスペルヘイム』って盗賊職のじゃねえか!?)」
ムスペルヘイム、人の目に見えない速度で敵を攻撃する弾丸のようなスキルだ。
盗賊職でのみ習得が可能なはずだが、先ほどのチェーンは魔法……。
嫌な予感がした。
「驚いたか?」
ブロウはドヤ顔で短剣二本を構えて立っている。むかつくぞオイ。
「驚きすぎて感想もでねぇ」
追撃が来た。床から大地の力の象徴である紋章が浮かぶ
ソウルマスターが習得する『ソウルドライバー』。イクスは紋章から逃れるため
棚を利用し天井を目指すかのように跳ぶ。
紋章から剣が生まれ、イクスが立っていた場所に降り注ぐ。危ない危ない、あれ結構痛いんだよ。
攻撃がやんだところを狙ってハルバードで兜割りを放つ。だが
ガキンッ!
そこらへんから調達したらしい槍で防がれた。
冷や汗が流れる、此処まで様々な種類の技を撃ってくるとは思ってなかったし、
何よりも間隔が無さ過ぎる。
おそらくこの調子だと、全職で存在する固有技や魔法を撃ってくるぞ。
先ほど受けた攻撃での疲労は一瞬で消えたが、やはり動きは鈍るような気がする、
攻撃を受けるほどに身体は重くなって行くだろう。
これは、やばい。想定外だ。 一旦後退。
イクスは焦りながらも、とりあえずといった感じでハルバードを投げつけた。
「おっと」
対するブロウはそれを軽々と避け、目標を失ったハルバードは棚に突き刺さる。
ブロウは「こんなもの喰らうものか」と半場蔑んだ目でこちらを見た。
「少しは手を抜いてくれ」
「断る」
こんなんじゃ勝てるわけ無いだろうが!!
苛立ちながらも、その場にあった剣を二本調達。双剣状態というわけだが、
どうもお目当てのモノではない。
イクスの目当ては、どの武器よりも複雑で、単純な、魔法や技に頼らない武器なのだが……。
あたりを見た感じ、それはこの場所では見当たらない。
「本領発揮は出来そうにないのか?」
「うるせぇ、ただ調子が悪いだけだっ」
ブロウは容赦なくテレポートを発動。どこだ?右か?左か?後ろか?
否、上だ。
降って来た魔法弾に思いっきり被弾してしまう。
正直きつい。ブロウのドヤ顔が目に浮かぶ。
なんとか魔法弾の弾幕から逃れようと武器庫の中を駆けるが、弾幕が濃い。かなり被弾してしまった。
「っ…………!」
ようやく壁際まできて、弾幕から逃れ、ブロウの視界から失せる事に成功したが、
状況は悪化してしまった。
右は行き止まり、左は棚の迷路。逃げ場が少ない。
どうする? 見つかったら終わるぞ?
「かくれんぼか?」
ブロウの声が無常にも響く。
さすがに負けを悟りそうだったが、こつりと手に当たった物体に『負け』を否定する。
望んでいたものが、見つかった。
勝てる可能性、まだあったみたいだ。
「今に見てろよ」
望んだソレは、黒く煌いた。
宣言を放て、それが墓標だ。
(最も人間らしい武器)
(魔法だけの劇場は終わりの時間だ)
