ピアノについて調べていました。
三大ピアノ・メーカーというのがあるらしく、スタインウェイとベーゼンドルファーは私も知っていたのですが、もうひとつ「ベヒシュタイン」という会社があるのは初耳でした。調べてみると 1853 年設立の結構な老舗らしく、フランツ・リストやクロード・ドビュッシーが絶賛していたらしい。
それほどのメーカーをなぜ目にしなかったのだろうとさらに調べてみると、どうやら2次世界大戦で工場が焼け設計図が失われ、職人が亡くなり、一時期は廃業状態になっていたそう。東西ドイツ統一にともなって、あれやこれやで現代に復活したとのこと。
そして、現在のベヒシュタインのホームページを見てみると、ベヒシュタイン製のピアノ演奏者として、シプリアン・カツァリスの名が挙がっていたのでした。


個人的にカツァリスについて最も昔の記憶は、1980 年代に勢力的にベートーヴェンの交響曲のピアノ編曲版全集を録音していたこと。当時それなりに話題になっていて、FMラジオでも、断片的に聞いたこともあったかもしれません。

白状すると、当時は彼の試みを「悪趣味」のひと言で私は片付けていました。ベートーヴェンの交響曲のピアノ編曲版はリストの手になるものです。今も昔もオーケストラ運営というのは採算がなかなか合わない。コンサートひとつするのにも、大きめの会場を押さえ、ミュージシャンの頭数を揃え、それらに要した出費を上回る観客が入ってくれないと成立しない。しかしそれを嫌がってコンサートをやらなければ曲が周知されない。こうした事情をふまえて、もっとこじんまりと楽しんだり、独特の読譜法を必要とするオーケストラ・スコアの代わりとしてピアノ編曲版の楽譜が売れたのでした。ですから、歴史的な存在意義はあっただろうけれど、オーケストラが当たり前に各国・各地方にでき、録音音源の登場でいつでもどこでも好きな音楽が聴けるようになった現代に、あえてベートーヴェン交響曲のピアノ編曲版を聞く必要などない、と思っていたのです。

さらに告白すると、ジャケットなどで見かける彼の風貌がなんとも胡散臭く感じられたのです。



取り上げる作品のイロモノ具合と相まって、これでは限りある学生の小遣いを投資する対象としては不適切でした。

ベヒシュタインのピアノとカツァリスというピアニストの良さを知るには随分と遠回りしましたが、コレは仕方がなかったかなと今でも思っています。


つづく