つづき


この少年の騎馬像がさらに目を引くのは、跳ね馬のポーズになっていることです。


「印象派以前の印象派」と呼ばれる画家は結構います。フランスではドーミエ、イギリスではターナー、人によってはオランダのフェルメールなども入れてきます。その中にあって、ベラスケスほど見事に印象派を 200 年以上も前に実現した男はいなかっただろうと、この絵を見ているうちに考えました。
瞬間の止め絵というのは、印象派、特にドゥガがテーマにし、そこからロートレックなどにも引き継がれます。ドゥガはしきりに馬の絵を描きましたが、それ以前のフランス画家で馬の絵を描いて名を馳せたのは、新古典派のダヴィド、ナポレオンの騎馬像です。ベラスケスの絵を見ているうちにそれらの絵が重なって見え、ここには何か繋がりがあるように思えてきました。


しかし、博覧強記のドゥガはともかく、ダヴィドがスペインに滞在した記録を私は知りません。ベラスケスとダヴィドを結びつける直接的な影響関係を証明するものは見つかりませんでした。せいぜい、ダヴィドの時期にフランスもスペインもブルボン王家だったくらい。その関係でスペイン宮廷所蔵の絵がパリに展示されることはあったのかもしれませんが。

そして、ベラスケス以前に肖像画で跳ね馬に乗った人物像を絵に描いた画家がいただろうか、と思い出そうとしてみました。
残念ながら、ここまでくると私の知識も断片的で、それまでのイタリア・ルネサンスやネーデルラントの肖像画を網羅的に知っているわけではありません。だから断定的なことは言えないのですが、彫刻はともかく、絵画としての跳ね馬の騎馬像は、大変めずらしいものだった気がします。

ひょっとすると、跳ね馬に乗った人物像というポージングを導入して流行らせたのは、ベラスケスあたりのスペイン画家たちではないかしら? だとすれば、この点においても彼らは印象派を先取りしていたわけで、この時期のスペインのレベルの高さを示していることになります。


つづく