つづき
けれども、この映画を魅力的にしている最大の要素は、音楽そのものです。
試しに、さわりの15分だけでも聞いてみてください。"Food, Glorious Food" から "Oliver, Oliver" "Boy For Sale" 3曲の流れだけでも、一聴の価値があります。
社会の底辺層を題材にしたミュージカル映画、集団化・組織化された象徴的なダンスという点で、この映画は「ウェストサイド物語」と多く共通点を持ちます。あそこでは、レナード・バーンスタインという、当時のアメリカ最良の才能が起用されていました。
けれど、”America" や "Cool" などの名曲があるとはいえ、見終わったあと、結局残っているのは "Tonight" のメロディーではないかしら?
「ウェストサイド」がラヴェル・マーラーのようだとすると、「オリバー!」はドビュッシー・ヤナーチェク的です。いや、こんなんじゃ、伝わりませんね。
私はこのミュージカルに Rock を感じます。形式としてのそれではなく、雑多で、対極にある感情や概念をぶち込む、入れ物としての音楽。Led Zeppelin の4枚目のアルバムみたいな。
「オリバー!」に用いられている音楽的テクニックはプリミティブですが、侮りがたいものがあります。これは、オリヴァーがロンドンに逃れ、ジャック・ワイルド演じる The Artful Dodger (ワザ師ドジャー)と知り合う時のナンバー "Consider Yourself" を聞けばわかります。
マーチ風に始まった音楽がポリフォニックに展開し、ほとんど転調のないまま押しきる中で変拍子が錯綜し、カノン風の処理をへて、サーカスのワルツに解消していく。これらの多くのパーツが、まとまるというよりは、むしろ個を主張して譲らない。音楽評論家でもあったルソーが、ポリフォニーなど野蛮な音楽だと言ったとき、彼にはハイドンではなく、こんな音楽が聞こえていたのでしょう。
にもかかわらず、これほどこの物語にふさわしい音楽もない。冒頭の孤児院のシーンにせよ、現代のリアリティーあふれる手法で再現されても、重くなりすぎて耐えられないでしょう。
これを緩和するための音楽は、けれど、上品にやりすぎても意味がない。綺麗に整えられたバーンスタインの音楽は、ニューヨークの底辺に生きる若者の表現としてはできすぎに聞こえないでしょうか?
発展する19世紀のイギリス。大きな光と同時に、深い影がさす。彼らはそれを否定的に受け取ってはいない。民衆の生きる活力は善悪両方を抱き込み、既存の形式をぶち壊してはじけ出す。
このミュージカルのピークに "Oom-Pah-Pah" がくるのは、象徴的でもあります。
つづく
けれども、この映画を魅力的にしている最大の要素は、音楽そのものです。
試しに、さわりの15分だけでも聞いてみてください。"Food, Glorious Food" から "Oliver, Oliver" "Boy For Sale" 3曲の流れだけでも、一聴の価値があります。
社会の底辺層を題材にしたミュージカル映画、集団化・組織化された象徴的なダンスという点で、この映画は「ウェストサイド物語」と多く共通点を持ちます。あそこでは、レナード・バーンスタインという、当時のアメリカ最良の才能が起用されていました。
けれど、”America" や "Cool" などの名曲があるとはいえ、見終わったあと、結局残っているのは "Tonight" のメロディーではないかしら?
「ウェストサイド」がラヴェル・マーラーのようだとすると、「オリバー!」はドビュッシー・ヤナーチェク的です。いや、こんなんじゃ、伝わりませんね。
私はこのミュージカルに Rock を感じます。形式としてのそれではなく、雑多で、対極にある感情や概念をぶち込む、入れ物としての音楽。Led Zeppelin の4枚目のアルバムみたいな。
「オリバー!」に用いられている音楽的テクニックはプリミティブですが、侮りがたいものがあります。これは、オリヴァーがロンドンに逃れ、ジャック・ワイルド演じる The Artful Dodger (ワザ師ドジャー)と知り合う時のナンバー "Consider Yourself" を聞けばわかります。
マーチ風に始まった音楽がポリフォニックに展開し、ほとんど転調のないまま押しきる中で変拍子が錯綜し、カノン風の処理をへて、サーカスのワルツに解消していく。これらの多くのパーツが、まとまるというよりは、むしろ個を主張して譲らない。音楽評論家でもあったルソーが、ポリフォニーなど野蛮な音楽だと言ったとき、彼にはハイドンではなく、こんな音楽が聞こえていたのでしょう。
にもかかわらず、これほどこの物語にふさわしい音楽もない。冒頭の孤児院のシーンにせよ、現代のリアリティーあふれる手法で再現されても、重くなりすぎて耐えられないでしょう。
これを緩和するための音楽は、けれど、上品にやりすぎても意味がない。綺麗に整えられたバーンスタインの音楽は、ニューヨークの底辺に生きる若者の表現としてはできすぎに聞こえないでしょうか?
発展する19世紀のイギリス。大きな光と同時に、深い影がさす。彼らはそれを否定的に受け取ってはいない。民衆の生きる活力は善悪両方を抱き込み、既存の形式をぶち壊してはじけ出す。
このミュージカルのピークに "Oom-Pah-Pah" がくるのは、象徴的でもあります。
つづく