1984年9月5日発売
個人的には竹内まりやさんの曲と岡田有希子さんの相性は抜群だと思います。
例えば一曲目の「さよなら夏休み」の歌詞、
「愛と呼ぶにはまだまだ 早過ぎる2人だけど どんな事があったって 次の夏もあなたと一緒に」
という歌詞に顕著な、奥ゆかしさと決意の強さが同居する想い。この歌詞に見られる様に、この頃は“岡田有希子のイメージ=佐藤佳代の実像”に限りなく近かったのではないかと思います。つまりこの頃は“岡田有希子”を演じなくても良かった、自然な自分のままで良かったと。
この「シンデレラ」の頃はメイクもナチュラルですが、後に曲のイメージに合わせてメイクも凝ったものになればなるほど“佐藤佳代”と“岡田有希子”の実像がかけ離れていった様な気がします。
さて、その後の話はこれ位にして、この頃はキーの設定も無理な発声をしなくても良いものだったのでしょう。そのためか有希子さんのナチュラルな声の良さが際立つ曲ばかりです。
「憧れ」なんかは、この時期の有希子さんが歌ったからこその名曲だと思います。最後の「ラ、ラ、ラ~ララ」のパートは、言葉には出来ない程の切なさを感じます。素晴らしいの一言に尽きますね。
そして、私が好きな曲は「風の中のカフェテラス」。いかにも80年代中頃という雰囲気の、疾走感溢れるギターのカッティングとシンセドラムのサウンド!マイナー調とメジャー進行が入れ替わり立ち代わりの目まぐるしさに、少しだけももクロを感じたりします。
そして「図書室の隅っこで」から始まるBメロにあたるパートはまさに美メロというべきもので、これを歌う岡田さんの初々しい歌声がまた素晴らしいのであります。単に正確に歌うだけでは、この素晴らしさは出せませんからね。こういうちょっとしたフレーズのニュアンスで人の心を掴む事ができる岡田さんは、やはり“持っている”歌手だったのだと思います。
この後の「FAIRY」では、グッと大人の世界感に近づきますが、あと一枚くらいはこの「シンデレラ」の世界感で作って欲しかったな、と思います。
しかし一枚しかこの世界感がなかったからこそ、岡田有希子というアイドルの初期の初々しさと、竹内まりやさんの回向が奇跡的な一瞬だけの煌めきを残したのも事実かも知れません。
もっと評価されるべき、邦楽史に残る名盤です。
願!リマスター&紙ジャケ化!