相撲人成村・常世、勝負の語 第二十五

 

 大学生と喧嘩した左の最手、真髪成村と、蛇と対決した右の最手、海常世の頂上決戦。成村は体格と力が抜群、常世は力では少し劣るが技の切れがすこぶる良い。長い間対抗意識を燃やしてきて「勝ち負けがきまれば、どちらにとっても大変気の毒な結果となるにちがいない」。

 

 そんな事があってか成村は試合免除を申請していたが、7回目に却下され試合をする羽目になる。成村はがむしゃらに恒世に向かっていき、あまりの事に恒世は「ご乱心なさったか、いったいどうなさるおつもりか」と呟いたが成村の押し込みは止まらない。結果、成村が先に倒れ次に常世が倒れた。

 これを見ていた観衆は、しばし静かであったがそのうち騒然とし勝負の判定には物言いがつき治まらなくなった。

 

 成村は起き上がってそのまま土俵を去りその日のうちに国へ帰ってしまった。恒世は起き上がれず皆に運ばれて帰った。運ばれる途中、成村の事を聞かれ、「ほんとうに、りっぱな取り手でした」と答えた。その後二人とも不遇のまま死んでしまった。

 

 最手どうしの試合は良く行われたが、この試合の後、天皇が退位したこともあり、最手どうしで取り組物は縁起が悪いと言いだすものがあり、そののち勝負がなくなってしまった。

 成村と恒世は勝負すべきでなかったと、語り伝えられている。

 

 

 ちょっと寂しい話。それっぽく纏めたつもりだが、本文はもっとしんみりしている。前振り部分の「大変気の毒な結果」が生きている。基本的にどの話も元の本を読んだ方が面白いです。

 それから、常世が途中で恒世になっている。蛇と対決した時は常世であった。大元がそうなのか校正の間違いなのか。

 昔の相撲人の名前はまあ普通な名前だったのね。いつから今のような名前になったんだろう。