ある記事を読んで、「ひとりでいること」について考えました。
その考え方にうなずく部分もありました。
けれど同時に、私は防災や危機管理に関わる立場として、もうひとつ大切な視点があると感じました。
人と無理に合わせなくていい。
ひとりの時間を大切にしていい。
誰かに理解されなくても、自分の内面を守っていい。
その考え方には、私も大切な部分があると思っています。
現代は、人とつながりすぎて疲れてしまう時代でもあります。
SNS、職場、地域、家族、学校。
いつも誰かの目や言葉にさらされ、自分の心が休まらない人も少なくありません。
だからこそ、「ひとりでいることを恐れなくていい」という言葉に救われる人がいることも、よくわかります。
けれど私は、そこに少しだけ立ち止まりたいと思いました。
ひとりでいられる力と、人と関われないことは同じではありません。
孤独を大切にすることと、他者を必要としないと思い込むことも違います。
人は、ひとりで考える時間を持つことで、自分の心を整えることができます。
けれど、人はひとりだけで社会をつくることはできません。
どれほど立派な考えであっても、それを誰かに届けるには言葉が必要です。
本にするにも、編集する人、届ける人、読む人がいます。
考え方は、他者に届いてはじめて社会の中で意味を持ちます。
つまり、孤独を語る言葉でさえ、社会のつながりの中にあるのです。
私は、ここを大切にしたいと思っています。
ひとりで考える力は大切です。
でも、ひとりで正しいと思い込まない力は、もっと大切です。
これは私自身に向けた言葉でもあります。
自分の考えを持つことは大切です。
でも、他人の考えを聞く力、違う意見に触れる力、自分の正しさを点検する力も必要です。
もし、人と関わる力を失った人が増えていったらどうなるでしょうか。
自分の考えだけが正しい。
自分を理解しない相手が悪い。
他人と合わせる必要はない。
周囲の声を聞く必要はない。
そんな人が増えていけば、家庭も、学校も、職場も、地域も、社会も、少しずつ壊れていきます。
そして、もしそのような人が大きな力を持つ立場に立ったら。
人の声を聞かず、自分の正しさだけで突き進む指導者になったら。
それは、とても危険なことだと思います。
防災や危機管理の現場でも、これは同じです。
災害時に必要なのは、知識だけではありません。
備蓄だけでもありません。
マニュアルだけでもありません。
人と話す力。
人の不安を聞く力。
違う立場の人を想像する力。
自分の判断を疑う力。
そして、誰かと力を合わせる力。
それがなければ、どれほど立派な備えがあっても、本当の意味で人を守ることはできません。
私は、RISK WATCHを通して、ただ防災を教えたいのではありません。
災害に強い人を育てたい。
危機に気づける人を育てたい。
そして何より、社会を壊さない人、誰かを守れる人を育てたい。
ひとりでいられる人を育てることは大切です。
でも同時に、ひとりよがりにならない人を育てることも大切です。
孤独は、心を整える時間。
対話は、自分の正しさを暴走させないための安全装置。
協調性は、社会を守るための力。
これからの時代に本当に必要なのは、ただ強い個人ではなく、他者と関わりながら自分を失わない人ではないでしょうか。
自分の考えを持ちながら、相手の存在も大切にできる人。
ひとりで立つことができ、必要なときには誰かと手を取り合える人。
違いを恐れず、話し合い、支え合える人。
私は、そういう人を育てたい。
防災という言葉の奥にあるものは、結局そこなのだと思います。
命を守るとは、人を育てること。
人を育てるとは、社会を守ること。
だから私は、これからも「いい人間を育てる」ということを、まっすぐに考え続けたいと思います。