今回もゲームブックの話。

 

前回は「火吹山の魔法使い」とイアン・リビングストンについて触れたので、

今回はもう一人の天才、スティーブ・ジャクソンについて取り上げたいと思う。

 

スティーブ・ジャクソン。

実は同姓同名のゲームブック作家が2人がいる。

イギリス人でイアン・リビングストンと一緒に「火吹山」を作った人。

もう一人はアメリカ人で、スティーブ・ジャクソン・ゲームズ社を立ち上げ、TRPG「ガープス」などを作った人。

通常はただ「スティーブ・ジャクソン」と書かれる場合は、イギリス人の方を指すことが多いが、明確に区別する際には、名前の後ろに(英)(米)を付けて表記されることが多い。

 

二人とも「ファイティング・ファンタジー」シリーズで作品を出していて、

これがまた混乱を招いているのだが、

これは80年代・90年代当時の英米でも混同されがちだったようである。

 

イギリス人の方が以下の7作、

・火吹山の魔法使い ※イアン・リビングストンとの共著

・バルサスの要塞

・さまよえる宇宙船

・地獄の館

・サイボーグを倒せ

・モンスター誕生

・サラモニスの秘密

 

アメリカ人の方が以下の3作となっている。

・サソリ沼の迷路

・深海の悪魔

・ロボットコマンドゥ

 

 

「ファイティング・ファンタジー」シリーズ以外に目を移すと、

スティーブ・ジャクソン(英)の「ソーサリー」(Sorcery!)4部作を外すことはできない。

・第1巻:魔法使いの丘

・第2巻:城塞都市カーレ

・第3巻:七匹の大蛇 

・第4巻:王たちの冠

※英語名には「!」を付けるのが正しい表記

 

全4巻、総項目(パラグラフ)数、2265。

連続性のあるストーリーのゲームブック作品としては、世界最長なのではないかと思う。

各巻独立してプレイすることもできるし、1巻から連続すれば有利な条件でプレイできる場合もある。(そうならない場合もある)

 

イギリスでは当初「ファイティング・ファンタジー」シリーズとは別のシリーズとして出版されたが、2000年代の再販の際にシリーズに組み込まれることになった。

その経緯もあってか、日本でも当初「ファイティング・ファンタジー」シリーズの社会思想社ではなく、東京創元社・創元推理文庫から出版された。
 

 

「ソーサリー」シリーズの最大の特徴は、「Sorcery」(魔法、魔術、妖術)の名の通り、呪文システムである。

主人公は戦士か魔法使いとなって、マンパンの大魔王を倒しに行くのだが、

魔法使いを選んだ場合は「魔法の呪文の書」に書かれた48種の呪文を使うことができる。ただしいつでも自由に使えるわけではなく、使える場面が限られるし、その使う呪文はプレーヤー自身が暗記しておかないといけないという仕組みになっている。

途中で「魔法の呪文の書」を見直しできるイベントなどもあったりするのだが、

基本的にプレーヤーの記憶力がゲームの行方を左右する。

 

呪文は「ZAP」などの3文字のアルファベットで表現されており、

ゲーム内で呪文を使える場所では、そのアルファベットが記された選択肢を選ぶことになる。中にはその場では何の効果のない呪文もあったり、間違った呪文を選択してしまうとダメージを受けてしまうこともある。

 

 

少し横道に反れるが、ソーサリーの呪文は、

「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版」(AFF2e)でも、

「ソーサリー・キャンペーン」としてシナリオと呪文の書のセットが発行されている。

AFF2eの世界では、魔法は以下の3つに分類され、金貨やゴブリンの牙などの触媒を使うことが多いソーサリーの呪文は、「妖術」という分類になっている。

・まじない

・魔術

・妖術


 

スティーブ・ジャクソン作品の特徴を挙げるとすると、

以下の3つになるのではないかと思う。

・突然のゲームオーバー

・パラグラフジャンプ

・用意された弱点

 

「突然のゲームオーバー」

何とかゴールやその近くまでたどり着けるイアン・リビングストン作品に比べ、

スティーブ・ジャクソン作品はゲームオーバーになる結末が多数用意されている。

ただし「ソーサリー」では、各巻で1度だけ女神に助けを求めるというお助けシステムがあり、難易度のバランスを絶妙に調整している。

 

「パラグラフジャンプ」

特殊なアイテムや情報を持っていると、ゲームを有利に進めることができるのだが、

アイテムを使用時に「○○へ進め」という選択肢があるのではなく、

アイテム入手時に「これを使うときは○○を引いた番号へ進め」というような

使用条件が記されているのである。

ゲームブック業界では「パラグラフジャンプ」と呼ばれる手法である。
「ソーサリー」やスティーブ・ジャクソン作品には、このパラグラフジャンプが多用されている。

 

「用意された弱点」

ゲーム中には数多くの強敵が現れるのだが、

特に強い敵には、弱点が用意されていることがある。

アイテムや情報などにより、その弱点を上手く突くことができれば、

簡単に倒すことができるようになっている。

ネタばれになるので多くは書けないが、前述のパラグラフジャンプを使うパターンもある。

 

 

さてこの「ソーサリー」シリーズが気になった方。

現在「ソーサリー」を入手するには以下の3通りの方法がある。

・東京創元社版(1985年発行)

・創土社版(2003-2005年発行)

・「ファイティング・ファンタジー・コレクション」グループSNE版(2023年発行)

 
東京創元社版はさすがに絶版となってしまっているが、
創土社版は現在もAmazonで新品(!)を購入することができる。
創土社自体は2021年頃からホームページも更新されておらず、現在はどうやら活動は停止してしまったようだが、2000年代初頭にゲームブックの炎を絶やさないために再出版や作家発掘などの活動を続けてくれていたことには感謝したい。
 
 
そして最後の選択肢が、ファイティング・ファンタジー・コレクションだ。
BOX第3弾は、イアン・リビングストン編だったが、
BOX第4弾は、スティーブ・ジャクソン編となっている。
表題作「サラモニスの秘密」は、2022年の最新作。
そして残り4作はタイトルは正式発表はされていないが、
GMウォーロック誌上では「ソーサリー」4部作になる予定と伝えられている。
そう、スティーブ・ジャクソンの最新作に加え、「ソーサリー」を一気に揃えることができるのだ。
実はBOX第4弾は、これまでの「ソーサリー」と第4巻が異なるバージョンが収録されることになるらしい。(確か安田均氏がそんな話をツイートしていた)
ということは、旧バージョンと両方プレイするには、創土社版と両方揃える必要があるということだ。BOX第4弾の方は10/13注文締切らしいので、まだまだ購入可能だが、創土社版の方は、このブログを書いている時点でAmazonの在庫は残り10冊弱だったので、確保するならお早目に。
 
 

オールド・アナログ・ゲーマーからのアドバイスをもう一度。

「買えるときが買い時」

 
 
もう一つ、その他のスティーブ・ジャクソン作品に興味を持たれた方向けの情報。
前回イアン・リビングストンの回で触れた通り、以下の3作は絶版となっており、入手が困難となっている。

・火吹山の魔法使い ※イアン・リビングストンとの共著

・バルサスの要塞

・モンスター誕生

以前のように再販されると良いのだが・・・

 

 

 

しかし以下2作品については、イアン・リビングストンの回で触れた通り、

現在も新品でリーズナブルな価格で入手可能である。

ただこちらも今の在庫が全てと思われるので、気になった方は早めに確保することをおススメする。

・地獄の館

・サイボーグを倒せ

 
 
 
「ソーサリー」4部作が日本で出版されたのは今から40年近く前になるが、個人的にはこの「ソーサリー」を超えるゲームブックはまだ世の中に出ていないと思っている。さらにスティーブ・ジャクソンは現在も活動中で、「ソーサリー2」を執筆中という噂もある。
 
まだ冒険に出ていない「あなた」。
「ソーサリー」の世界に飛び込むのは今からでもまだ間に合うのだ。