書評「<現代家族>の誕生」(岩村暢子:著 勁草書房)


評価:10点満点の10点


前著「変わる家族変わる食卓」(別記事参照)に続いて

定性調査の威力を思い知らされる一冊だった。


「定性調査」とは、社会調査の手法の一つで「定量調査」の対義語である。

後者がアンケートなどの結果を数値・統計化して分析する手法であるのに対し

前者は調査対象からインタビューなどにより直接言葉を集め

定量調査では掴みづらい因果関係や傾向をあぶりだす調査手法である。


本著の問題意識は、前著であぶりだされた

「現代の都市世帯における食生活の崩壊」という現実の提示を受けて

では、なぜそのような崩壊現象が起こったのか、というところから始まる。


著者らは前著の基礎となった調査<食DRIVE>を実施する中で

現代の都市世帯の主婦らの変容を目の当たりにして

「彼女ら(現代の主婦たち)は子供の頃

きちんとした食卓を経験しているはずなのに、なぜ。」という自然な疑問を持った。


そこで、現代の主婦の親に当たる世代(以下「親世代」)の女性

(つまり2005年現在の60歳~70歳代)への聴き取り調査を行った。

その調査を定性的に分析した結果が本書である。


分析結果は、衝撃的とも言える内容である。

端的に言えば昨今の食卓崩壊現象の萌芽は

親世代からすでにあったというのがこの本の結論。


本書は親世代を、いわば社会の激変の波に翻弄された世代と規定する。

「太平洋戦争」に始まり「自由主義への価値転換」「家庭科教育の転換」

「急速な電化に伴う家事労働の変容」「欧米の食文化の流入」などなど。


これらの激変の中で、親世代の間に

食生活の伝統を継承するということに対する動機も必要性も

失われていったというのだ。


論旨自体もさることながら

仮説を定性的手法によって裏付けていくその過程が恐ろしく説得的で

前著と同様、つい引き込まれて一気に読んでしまった。


家族を論ずるときにしばしば持ち出されるさまざまな常識を

批判的に検証しなおす上で、前著とともに非常に興味深い著作だと思う。