「変わる家族変わる食卓」(岩村暢子:著 勁草書房)


評価:10点満点の10点


平凡な題名の本だ。

多くの人が興味を覚えるようなタイトルではない。


「真実に破壊されるマーケティング常識」

という副題を見ても「食品業界向けの本かな」と思う程度。


しかしこの本、退屈そうな外見とは裏腹に

その内容はとんでもない爆弾である。


私は、読み始めたとたん止まらなくなり

一気に読み終わると

その余韻が読後約一週間の今に至るまで消えない。


映画に例えると

「プライベート・ライアン」の冒頭30分間の衝撃、

とでも言えば、雰囲気が伝わるだろうか。


それとも「バカの壁」が10冊束になってもかなわないスゴさ、

と言えば…下世話な比喩はやめておこう(笑)


…内容について少しだけ触れよう。


(株)アサツー ディ・ケイが1998年から数年にわたり行なった

一般家庭の食卓に関する調査<食DRIVE>。

そこからあぶりだされた近年の食卓の実態と分析結果の報告が

この本の内容である。


調査は次の三段階を順に追って行なわれる。


1 質問紙法による意識・実態調査

2 1週間分の食卓を写真に撮影し実態を把握

3 対象者への面接による調査


著者がこの本の前書きで、この本の内容を

「約50通りもの詳細なCTスキャンの断面図にも似た

レイヤー(層)である」と語っているように

調査結果は実に多様な切り方で分析され

思わぬ真実を読む者に突きつける。


例えば、冒頭の章では

主婦たちが料理に手をかけない理由をしばしば

「時間がない」「余裕がない」「忙しい」「疲れていた」

と語っていることを切り口に


実は食卓が軽視されるようになっているのは

主婦たちを取り巻くそのような状況が原因なのではなく


むしろ現代日本の都市生活者の意識が変化し

日常生活における「食事」の優先順位が

極端に低下した結果なのだ、という結論を提示する。


(むろん、著者は食卓崩壊の責任を主婦に単純に転嫁する

というような短絡的な誤りは犯さない)


この章だけを取ってみても充分なほどスリリングなのだが

このスリルが50章近くも続くわけである。


「食卓の崩壊」という現象に興味がある人も

ない人も、ぜひ、読んで欲しい。


そして、我々はこれからどこに行くのか

ということに思いを馳せて欲しい。

そんな一冊である。