緑と青の電力会社 [ボードゲーム] | risaのボードゲームレポート

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Risaファミリーがプレイしたゲームの紹介をかねたレポートです。

緑と青の電力会社


risaのボードゲームレポート-電力_箱


電力会社のボックス版には、緑の箱の通常版と、『EnBWエディション』(青箱)、そしてフィロソフィア出版の『メガワッツ』とがあります。

今回は、ともにドイツマップが入っている通常版と『EnBWエディション』の相違点についてコメントしてみたいと思います。

『EnBWエディション』は2007年に販売開始された特別版で、ドイツ南部の電力会社であるEnBWの従業員/顧客向けクリスマスギフトとして製造されました。
当初はEnBWのホームページでも販売されていたのですが、その後ページはクローズされたようです。

ドイツのゲーマーの方に伺ったところでは、基本的に一般量販店には流通されていないとのことでしたが、なぜか当時からアメリカのFunagain Gamesには入荷していました。当初は$100近い価格設定がされていた(EnBWのホームページでは、€30未満で販売されていたと思います。)と記憶していますが、現在は$54まで値が下がったようです。

これら2つのエディションが、ボックスアートの違い、そして特徴的なバーデン=ヴュルテンベルク州のマップ追加のみで、内容が同じなのであればそれほど気にならないのですが、ドイツマップそのものにいくつかの相違点があるとなるとプレイする側としてはやはり気になるところです。

相違点には大きく分けて、ルール上の相違とコンポーネンツの相違とがあります。



まずルール上の相違点ですが、『EnBWエディション』は以下の点で通常版と異なります。


◆フェーズ1とフェーズ2の順序が逆

電力会社の通常版のルールでは、フェーズ1が『プレイ順の決定』、フェーズ2が『発電所の競り』となっていますが、『EnBWエディション』ではこれが逆になります。
この結果『EnBWエディション』ではファーストラウンドであっても、すでに発電所カードを所有した状態でプレイ順決定のフェーズとなるため、通常版のルールにある『ゲームの最初のプレイ順はくじで決める。』という部分が削除されています。
また通常版のルールではゲームの最初のプレイ順をくじで決めるため、ファーストラウンドのフェーズ2(『発電所の競り』)終了後に発電所カードの番号によってプレイ順修正をおこなうよう例外処理が規定されていますが、『EnBWエディション』ではこの部分が不要となるため削除されています。


◆発電所が競りにかけられなかった場合に交換するカードの枚数が2枚

『EnBWエディション』では、発電所が1枚も競りにかけられなかった場合、もっとも小さい数の発電所カード2枚を取り除いて、新しい発電所カードと交換します。
通常版ではもっとも小さい数の発電所カード1枚しか交換しません。


◆いずれかのプレイヤーの都市数以下の発電所カードは取り除く、というルールがない

通常版では、いずれかのプレイヤーの都市数以下の数の発電所カードが現在のマーケットにあれば、そのカードをただちにゲームから取り除いて新しい発電所カードと交換する、というルールがありますが、『EnBWエディション』にはこのルールがありません。


◆Step3が発生する状況に関する記述が異なる

ルールの本質は変わらないのですが、Step3が発生する3つの状況のうち、2番目の内容が異なっています。(1番目と3番目については、記述は異なりますが内容的には同じです。)
通常版の2番目には、>>Step3<<カードがフェーズ4(建設)で、最大都市数より小さい数の発電所カードを取り除いたときに引かれた場合が書かれていて、処理は、もっとも小さい数の発電所カードをゲームから取り除いて、フェーズ5からステップ3を始める、となっています。
一方『EnBWエディション』の2番目には、>>Step3<<カードが、フェーズ1(発電所の競り)の最後、誰も発電所カードを購入しなかった場合の2枚の交換カードのうちの1枚として引かれた場合が書かれていて、処理は、もっとも小さい数の発電所カード1枚を>>Step3<<カードとともに取り除く、となっています。



ルール上の相違点は以上のとおりですが、さらに、コンポーネンツに関しても2点相違があります。


◆発電所カード#29の省除

サマリーカード1枚を6人目用として同梱した代わりとして、#29の発電所カードが入っていません。
#29と#35の発電所カードは、その電力供給力についてBGGでもディスカッションが交わされたカードです。
とりわけ#29は、初版では3であった電力供給都市数が、第2版で4に変更されたという経緯も持っています。

risaのボードゲームレポート-電力_発電所カード

添付した表で電力供給力を比較していただくと、石炭、石油、ハイブリッド、廃棄物の各発電所カードについて、発電所の番号が大きくなるにつれて資源1コあたりで供給できる都市数の平均が徐々に上昇していく傾向にあるのがわかっていただけると思います(#46は電力供給都市数が7と多いので、さすがに、資源1コあたりで供給できる都市数が下がっています。)。

risaのボードゲームレポート-電力_供給力

言い換えると、資源1コあたりの発電能力が徐々に上昇している(=発電効率が徐々に上がっている。)、ということですが、表からはこの傾向の中で、#29と#35の発電所だけは突出した電力供給力を誇っていて、同レベルの原子力発電所と同じ能力となっていることもわかっていただけると思います(原子力発電所は常にウラニウム1コで発電するため、電力供給都市数そのものが資源1コあたりの供給可能都市数となります。なお、エコ発電所は資源を必要としないため、比較の対象とはしていません。)。

このように突出した能力がある発電所があることを事前に知っているのと知らないのとでは、ゲームにおける駆け引きに差が生じることにもなりかねませんし、ゲーマーズゲームとして名を馳せた通常版と異なり、『EnBWエディション』はルール的にも少しマイルドにチューニングされていますので、物議を醸した#29がプレイ人数分のサマリーカードを同梱する代償となったようです。


◆マップの修正

上述の#29と並んで、通常版のドイツマップには、接続について物議を醸した場所が1ヵ所ありました。
それが、SaarbruckenとStuttgartの接続です。

        【 通常版のマップ 】                【 EnBWエディションのマップ 】

risaのボードゲームレポート-電力_緑ボード  risaのボードゲームレポート-電力_青ボード

通常版のドイツマップにおいて、SaarbruckenとStuttgartの直接の接続コストは当初21エレクトロでした。しかしMannheimを経由した場合、17エレクトロ(SaarbruckenとMannheim 間(写真 )が11エレクトロ、MannheimとStuttgart間(写真)が6エレクトロ。)と安くなってしまい、物議を醸したのです。

通常、2つの都市間の直接の接続は、他の都市を経由した場合より安くなりますが、この箇所についてはそうなっていなかったのです。これに関して作者は、その部分(SaarbruckenとStuttgar間の21エレクトロの接続)が誤りであり、その接続をないものとして取り扱うよう発言し、その後、SaarbruckenとStuttgartの接続コストは、Mannheimを経由した場合と同額の17エレクトロに修正されました(写真)。

この部分を見直したのがEnBWのドイツマップで、Mannheimを削除してSaarbruckenとStuttgart間に位置するKarlsruheに置き換えたのです。

『EnBWエディション』のドイツマップでは、SaarbruckenとKarlsruhe間(写真)が12エレクトロ、KarlsruheとStuttgart間(写真)が9エレクトロになっていて、通常版のSaarbrucken/Mannheim間(写真)、Mannheim/Stuttgart間(写真)の接続コストの大小関係を維持しつつ、SaarbruckenとStuttgart間の接続を初期のマップと同額の21エレクトロとなるよう調整した形となっています。

さらにこの修正にともない、MannheimとWeisbadenの接続(写真、11エレクトロ)は、KarlsruheとWeisbadenの接続(写真)となり、1エレクトロアップの12エレクトロになっています。
これによって、修正前は17エレクトロだったMannheim経由のWeisbaden/Stuttgart間(写真)の接続コストが、Karlsruheを経由した場合(写真)には21エレクトロになってしまったため、これを補完する形で新たにFrankfurt-MとStuttgartとの間(写真)に18エレクトロの接続を設けて、従来のWeisbaden/Stuttgart間(写真)の接続コストとほぼ同額となるよう調整がなされています。
(WeisbadenとFrankfurt-M間(写真)の接続コストは0なので、Weisbadenに直接接続する必要がなかったのですね。)

では、修正前マップのMannheimからWurzburgに伸びていた接続(写真、10エレクトロ)はどこへ行ったのでしょうか?
これは新たにKarlsruheからFreiburgに伸びる接続(写真)として設けられていて、接続コストは従来どおりの10エレクトロで設定されています。

個人的にもっとも興味深い変更点がこの「マップ変更」なので、我が家でドイツマップをプレイするときは、EnBWのボードを使用するのが常となっています。
(もちろん青と紫のエリアを使用しない場合、これらの都市は関係ありませんので、どちらのマップでも同じになります。)



2F-Spiele のHenning Kropke 氏からお伺いした『EnBWエディション』についての説明は以下のとおりです。

『EnBWエディション』は、エネルギー会社EnBW(ドイツのビッグ3の1社で、ドイツ南部の電力会社です。)の従業員/顧客のための「クリスマス・ギフト」でした。
彼らが自分たちのエリアの特別マップを注文してきたので、私たちはルールを少し単純化して例外処理を取り除くという、「ヴァリアント/拡張」ルールへの変更をおこなうチャンスを得たのです。
このバージョンでのもっとも主要な変更は、『プレイ順の決定』フェーズを後ろに移動したことで、これによりゲームのターンがすべて同じとなったことです。
さらに私たちは、数が小さい発電所カードの除去ルールを1つのルールに収斂しました(電力会社のオリジナルの2つのルールと比べてみてください。)。
したがって『EnBWエディション』は、若干異なるルールを持った「非公式」の拡張と考えてください。


マップ以外の変更点は、通常版でもプレイ可能なものばかりですので、是非試してみてください。


                                                         by パパペンギン