なんであの時
「うん…ありがとう」
どうして俺は
「愛してたよ」
どうしておれは
「忘れないよ。またね、蔵ノ介」
歩みを止めなかったのだろう。
「今度はいつ会えるの?」
「あー、暇ができたらでええか?」
「この間もそう言った」
「すまんなぁ」
「…ねぇ、私は蔵ノ介のなに?」
「なにって、彼女やろ?」
「そうだね…」
どうして彼女がこんなことを訊いてきたのか。
俺にはわからなかった。
テニスに明け暮れていた中学校生活。
東京の高校を推薦で受けた。勿論、テニスをする為に。
高校でもテニスを続けた。
そこのマネージャーと恋をした。
今思うとそれは恋愛感情ではなかったのかもしれない。
そうしたら、彼女を傷つけなかったのに。
「ねぇ、今度の土曜日空いてる?」
「あー、その日は試合があんねん」
「え」
「日曜日なら空いてるで。それでええか?」
「うん……」
「ここのケーキ美味しいね」
「せやな」
「あのね、昨日何の日かわかる?」
「ん?なんかあったか?」
「本当にわかんないの…?」
「ああ…っと堪忍、電話きてしもうた」
「……」
「今から?あー、大丈夫です。じゃあ駅前で。はい、失礼します」
「誰から?」
「先輩。今からテニスせんかって」
「え?」
「それでな、その先輩の経由で俺の知り合いがおってん!吃驚やろ?」
「う、うん。そだね」
「懐かしいなぁ。そいつめっちゃテニス強いねん。やから行ってくるわ」
「今から?今日じゃなきゃダメなの?」
「思い立ったら行動せな。埋め合わせは今度する!」
「ま、待ってよ!」
「堪忍な!」
この時を今も後悔する。
なんでテニスの試合を選んでしまったのか。
どうして彼女のことを考えなかったのか。
今も、後悔してる。
「別れよう」
「…なんの冗談や?」
「冗談じゃないよ。私達、もう無理だよ」
「俺のこと、嫌いになったんか?」
「嫌いになったわけじゃない。そうじゃないの……」
「じゃあ、なんで」
「だって…蔵ノ介、いつもテニスばっかりで、私の誕生日も忘れてるし…」
「誕生日…?」
「空いてるって言った日も、大体は途中でいなくなるし。……好きって、私からしか言わないし」
「そんなことないやん」
「そんなことあるよ!あるからこうなってるんじゃない!」
「っ……」
「私…もう、疲れちゃった。このままの生活は……もう嫌…………」
「…………」
「…今日は帰るね。じゃあ……」
引き止めなかった。引き止めれなかった。
俺に、そんな資格は、ない。
テニスに明け暮れたこの一年。俺は、彼女を傷つけてしまった。
そんな俺に、今更、彼女を引き止める権利なんて――
『…もしもし?』
「今日の話」
『うん…』
「別れよう」
『……うん』
「でも、俺はお前が好きや。愛してる」
『……』
「だから…なんや、ずるいな…。高校を卒業する時、俺から告白する」
『ぇ……』
「それでも、俺を好きでいてくれたら、また、やり直してほしい」
『……』
「ずるいってわかっとる。それでも俺は……お前が好きや」
『うん…ありがとう』
「ああ…」
『愛してたよ』
「…ああ」
『忘れないよ。またね、蔵ノ介』
「またな」
話せた。冷静に彼女と話せた。
電話が切れると張り詰めていた糸が切れて、俺の目からは涙が溢れた。
今更自分の気持ちに気づくなんて、馬鹿だ。
彼女の温もりが薄れていく気がした。
俺は彼女に触れたことのある腕を、拳を、指を力一杯抱きしめた。
「俺は……馬鹿だ……」
冷たい空気が、温もりを奪っていくような気がした。
何回か季節がめぐり、また桜が咲いた。
人でごった返している校門で、俺は立っている。
彼女は気づかないかもしれない。
もう他の誰かを愛しているかもしれない。
それでも、俺は―――
桜が舞い散る。
なにもできずに、ただただ、見つめる。
掌を広げていると、舞い落ちてくる。
俺はそれを握り締めた。
………え?なんだこれ。なんだこれ!
全国の白石ファンに土下座したい。
悲恋…なのか?いつもと違う風に書きたかっただけ。の筈。
本当にスミマセン。エピローグの影響受けすぎました。
次からちゃんと書けるようにしたいです。
こんなのにお付き合いありがとうございました!




