初読の方は1-1よりどうぞ♪
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2-1
彼の質問に一瞬戸惑った自分が、はっと我に返る。
「…!」
私は、上体を起こしながら眼前に立つ彼に向かって声を絞り出す。
「…ダメっ!あなたが戦って勝てる相手じゃない!」
電灯の暗がりに立っているのは、教会【エクレシア】の誇る上位の宣教師【ミッショナリー】だった。彼は私の声が聞こえていないのか、宣教師への歩みを止めない。
「…愚かな。それは勇気ではない、蛮勇であろう」
宣教師の低い声が届く。彼よりも遠い位置にいるはずなのに、その声はまるで暗い細道全体から響き渡るように聞こえた。
「…ッ!」
崩れていた体を無理矢理立たせる。背中に焼けるような痛みが走った。
# # #
俺は黒い男と向き合う。
「…愚かな。それは勇気ではない。蛮勇であろう」
黒い男のセリフに俺は思わず笑ってしまう。いつの時代だよ、それ。
「そうか?そうは思えないけどな」
俺も少しだけ気分をそれっぽく、具体的に言うならボスに挑戦するRPGの主人公のような感じにしてみる。
…語調が変だった。やめることにする。
黒い男に近づくのをやめた。距離は5メートルぐらいか。
男の顔が思案するようなものに変わる。そして、―笑みへと。
「穿てッ!」
刹那、俺の背後から肩の横をかすめるようにして2つの軌跡が黒い修道服を襲う。通過するときに飛んできた飛沫が顔にかかる。
「水……?」
細く蛇のような軌道でそれは黒い男に突き刺さった。
「…ほう。アルバの呪紋を刻まれてなお、象徴たる水を扱えるか」
黒い男が崩れる――闇に溶け込むように。
「だが……甘い」
足元の影が『ざわめく』。本来ならば動かないはずの暗闇が、意思を持っている。
俺は彼女に向かって叫ぶ。
# # #
『ミズチ』を出した瞬間、意識が飛びそうになった。
それでも何とか制御して宣教師の体を貫く。そして私の『水』は体内を侵しつくす。
「……え?」
―ハズだった。
「下だ!!」
あまりの手応えのなさに驚く私に、彼の叫ぶ声が聞こえた。
「…遅い」
足元の影が揺らめく。
重い衝撃が私の右足を打ち据える。
ふらついていた私の体はいとも簡単に倒れ始めた。
追撃は私の隙を逃さない。
「がッ…はっ、ぐっ…」
上からの新たな衝撃で加速され、アスファルトに叩きつけられ、更にもう一度鳩尾を殴打される。仰向けになってがら空きの脇腹を数回蹴られた。
身を捩って転がるように逃げる。
しかし、今度はうつ伏せのまま上から押さえつけられた。腰の辺りが『影』によって地面に縫い付けられている。
「かはっ、こほっ…」
「ククク……さしもの『水神』も、力を封じられてはただの女か。…いや、例え力があろうとも、この『影』を倒すことは不可能か」
宣教師の声が上から聞こえる。この声ははっきりと耳に届いた。
「…『影』…やっぱり、クロノス=ガラルドか…」
宣教師はその病的に白い顔を歪めて、笑う。
「…左様。貴殿に名前を覚えてもらえるとは、なんたる光栄。貴殿を我が手中に入れられるとは、私も運が良い」
辺りは漆黒の闇が覆っている。さしずめ、クロノスの結界に囚われたのだろう。先程のクロノスは影の偽者で、
本体はここで私が罠に掛かるのを待っていた、ということだ。
私は安堵の息を漏らす。
…ここに彼がいなくて良かった。
「…ふむ。アルバの呪紋は背中にあったか。ただでさえ痛みを与える呪紋、此れを殴ればさぞ痛かろう」
影が容赦なく襲ってくる。
私の悲鳴は、もう彼には聞こえないんだろう。
# # #
本当にそれは理由になるのか分からない。
だが、理解ってしまったものは仕方がない。
ただ、この憤りは久しぶりに感じる、自分自身の感情だった。
そう、理解る[わかる]んだ。
例え彼女の声が聞こえなかったとしても。
「…だからよ!てめぇがそこに居るって事ぐらいわかってんだよ!!」
突っ立ている黒い男の背中に、飛び蹴りをお見舞いする。
着地が上手く出来ずにコケた。だが黒い男は想像以上に吹っ飛んだ。
「…え?」
うつ伏せになっている彼女が目を丸くしている。
「よぉ、大丈夫みたいだな」
かなり痛そうだったが、彼女の顔を見て判断した。男に視線を戻す。
黒い修道服は彼女以上に驚いた顔でこちらを見ていた。
「…貴様、何故…」
「お前が本体だな。よし」
俺は駆け出す。
3メートルの距離は一瞬で詰まり、拳が男の白い顔を捉えた。
ばきっ、ともばこっ、ともつかない音と共に俺の拳が痛む。そういえば殴るときは掌底を使うんだったか、と昔に小説で読んだ知識を思い出した。
よろけた黒い男の口の端には鮮血がにじんでいた。うわ、痛そ。
その色白の顔に血を巡らせて、憤怒の表情で黒い男がキレる。
「貴様ぁぁあ!」
男の体が影に沈む。もっとも薄暗い路地は全体が影といっても過言ではない気もするが。
可笑しくて笑ってしまう。
「だーかーらー、理解ってるて言ってんだろ?」
俺は足元を思い切り踏みしめる。があっ、という声がした。
「次は後ろ」
振り向きざまに裏拳をぶつける。また顔面に当たった。
「左右」
一歩後ろに下がる。目の前に交差するように現れた『影』に今度は掌底を喰らわせる。
すると、影から吐き出されるように黒い男が現れた。
「ちッ、やっぱり正解か。面白くねぇな」
脇腹を押さえる修道服に迫る。白い顔は信じられないものを見るようにその赤い瞳を向けていた。
同じように赤い唇が震えている。
「くっ…」
男の体が再び影に沈んだ。早かった。
「おい、逃がすかよ!」
拳を振り上げるが、俺はもう間に合わないことを悟る。駆けていた足も止めた。
「ったく…。面倒なことになっちまったな」
まだ夜には早い時間、影は少しだけその色を薄くした。
彼女のほうに振り返る。
「さて、話を聞かせてもらおうか」
彼女は小さく頷いた。
ーーーーーー2-2に続くーーーーーー
どうでしたか?
戦闘シーンは筆力が無く申し訳ないです…
今回から彼女の視点も混ざります。
1週間に1回は更新目指して行きます。
次回もどうぞ♪
りっぷぅでした(・∀・)ノ