1-1
校舎の窓から見える景色は普遍的なように見えて、実はいたるところに変化がある。
鳥がじゃれるように飛んでいたり、校門脇の道路に珍しい車が止まっていたり。その日その時で微細に姿を変えていく風景は時折予想も出来ないかたちとなる。
だから、俺はこの窓際の席が好きだった。退屈極まりない日本史の授業中も、窓の外を見ていればなんとか眠らずに過ごせる。
「ちょ、釈、お前の番だぜ」
前の席のクラスメイトが振り向いて俺の机を叩いた。
「あ、悪い、わりぃ」
ぼーっとしていたので忘れていた。
慌てて席を立ち、教卓へ、しいては教卓の前に立つ先生のところに急ぐ。
「釈。90点」
数学教師にしては出来すぎた体格を持つ先生が、2枚の答案を俺に渡した。軽くお辞儀しながら受け取り、そそくさと席に戻った。先生の顔は見てないが十中八九怒っている。これぐらい誰でもわかる。クラスメイトはニヤニヤしながらこちらの答案を覗き込んで、そこに書かれた90という大きな赤い曲線を視界に捉えると、
「ぶっ…、あははははっ!」
笑いだした。
「お前ってホント数学苦手だなー。あははは…」
200点中185点も取るクラスメイトに笑われても特に悔しくは無いけどな。
「今回のテストの平均点は110点、最高点は185点だ。」
ごつい数学教諭が今回のテスト、ウチの学校は2期制なので前期の中間テストなのだが、の総括を話していた。俺はまた窓の外に意識を向ける。
「―で、この大問はT大学の過去問を改題したものなんだが―」
校庭の向こうにある道路を誰か女の人が走っていた。
「―ほとんどの奴らは手をつけることもできていなかった―」
あ、コケた。
「―釈!」
そして突然クラスがどよめいた。
教室に視線を戻すと、クラス全員に見つめ返されていた…ん?
「お前…実はかなり数学得意なのか?」
最高点を叩き出す秀才が不審顔でこちらを眺めてくる。
…とりあえず、曖昧に笑ってごまかした。
その問題を解いたのは気分だった。一番難しいと理解った[わかった]から。
で、その問題が正解だったのは俺だけ、という事。
ーーーーー1-2につづくーーーーーー
…まだ全然始まったばかりですが、
これからよろしくお願いしますm(_ _)m
では ノシ