初読の方は第1章よりどうぞ♪↓
http://ameblo.jp/rippu2/entry-10955801752.html
・Illustration by のら
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3-1
気が付くと、そこはコンクリートが打ちっぱなしの天井――
―― ではなかった。
そこは、昨日も見た天井。白く壁紙の貼られた、清潔感のある天井だった。
ゆっくりと体を起こす。昨日はベッドの縁から落ちたので今日は気をつける。
ベッドの脇にあるテーブルには、ラップのかけられた朝食と釈君が書いたらしい置き手紙と、
「鍵……」
が並べてあった。
『柊さん
漢字合ってますか?
君の分の朝食です。ご飯はジャーの中です。
自分は学校なので
出かけるときは鍵閉めてくださいよ?
鍵は持ってていいです
釈 識 』
……炊飯ジャーはキッチンの脇だ。
とりあえず朝ご飯にしよう。うん。
# # #
「おはよー」
「よぉ、識。今日も珍しく早いな」
「あぁ、ちょっと勉強しようかなと思ってさ」
「嘘付けー。昨日はずっと寝てたじゃんかよ」
「昨日は昨日、今日は今日」
「どーせ寝るんだろ?」
「寝ないかもよ?」
「はい寝る事確てーい。いいよな、勉強しなくても出来る奴は」
「出来てねーよ」
「はー、俺も彼女できねーかなぁ…。雑火とかいつでもホームランなのに」
「お前、急に話変わるな……しかも自然に」
「ん?釈は三間坂さん派だったか?」
「さあな」
と、お決まりのモーニングトーク(?)を友人と交わす。確かに今日の朝も早く着きすぎた。
いつもの窓際の席に座って、HRまでの暇を外の景色でつぶすことにした。
傷一つない右手で頬杖をつく。全身にちょこちょこ残った浅い切り傷はもう塞がって、治りかけを伝えるこそばゆい感触を与えてきていた。
「………」
柊。
能力。
宣教師。
痛み。
洗礼。
『司教』。
教会。
「…理解んねぇな、どーにも」
思考を中断し、頬杖を崩して机に伏せた。
なんだかんだ言って眠い。
寝床が変わると良く眠れないってのは、あながち間違っていないらしい。
「……君、釈君、しゃーくーくーんっ!」
……ん、?
誰かに呼ばれた気がして、窓側に向けて寝ていた顔を教室へと戻す。
彼女と向き合う。
「おわっ!!」
そこにはこのクラス、いや、学年でもトップを争うような美少女の顔(超至近距離)があった。
もちろん、俺を驚かすには十分すぎる。
やっぱりというか、窓の縁に思わず引いた腕をぶち当てた。
「―― …!!!」
眠気も一瞬で吹き飛ぶ、って奴だ。
「うぁ、と、と、大丈夫?」
急に動いて急に腕を打って急に丸くなった俺に彼女の方が驚いていた。
「―― で、えーと……何の用?」
普段、こんな朝の時間帯に女子に話しかけられるほど俺は人気ではない。自覚してるのが悲しい気もする。
ちなみに俺の前に立っているのは先述の通り、クラスや学校内で抜群の人気(男女問わずだが男子多し)を誇っている雑火 襲 [さいか かさね] さん。ショートヘアに、カラコンを入れているらしい琥珀色の瞳が特徴的だった。……この人に突撃して撃沈した戦友は幾許にも上る。
なので若干は緊張する。当然……だよな?
さっき話した友人は運良く教室にいない。いたら視線で気づく。
「あ、そうそう、コレ」
明るい性格が全面に出ている声で雑火さんが何かを取り出した。
「はい、これ。…釈君のだよね?」
―― それは、大ぶりの片刃のナイフだった。
あの時はなかった木製の鞘に収められて、その鋭刃こそ見えないが、これは確かに、
「俺が投げたやつ……」
「とりあえず隠したほうがいいよ?」
雑火さんに笑顔でそう言われ、俺はあわててナイフをバッグに放り込む。
「じゃね♪」
雑火さんはそういうと、すたすたと自分の席に戻った。
今日は昼休みの前、4時限目に数学があったりして、
「……うわぁ」
やたら面倒くさそうな某W大の問題を解かされた。
数学担当のゴリラ教師もニヤニヤしながら俺を指名していた。
「釈、お前はもちろん予習してるよな。黒板に書いてみろ」
……むぅ、最悪。
愚痴をこぼしつつも長々しい答えを黒板に書いていく。
のだが、同時に別の問題で雑火さんが当たっていて、
「識のやろー……」
とか、
「雑火さんの隣に長く居座られるぞ……」
とか、
「襲たんはみんなのもの!!!!」
とかいう凶悪な視線(発信源:主に男子)を浴びた。いや待て、不可抗力。
―― 隣でチョークを持つ雑火さんを横目で見る。
視線が合う。
微笑まれた。
なんか知ってるらしい顔だった。
ッと、クラスの猛者たちに睨まれてる。さっさと答えをかいてしまおう。
昼休み。
案の定というか、俺の机の周りには友人男子数名の輪が形成されていた。
「さて、識くん。君の知っている思っている隠していること全部洗いざらい何もかも言いたまえ」
「いや、俺何も隠してないし知ってないし思ってない」
「ボス!識は嘘をついています!!」
「ワタシもそう思いマス!」
「右に同じッ!」
「ふむ。識くん、嘘はいけないな。私たちの手元には君が朝私の目を盗んで雑火さんと話していたという報告書が上がっているのだよ。……これでも立派な隠し事だ」
「隠すも何も……話す義務ないだろそれ」
「ボス!識は動揺しています!!」
「ワタシもそう思いマス!」
「右に同じッ!」
「ほう。同じ『雑火さんに死ぬまで付いていく者の会』の同胞として、私たちに報告の義務なく抜け駆けをして良いと思っているのかね?」
「いやいやいや、その組織知らない見てない聞いたことない」
「ボス!識が我らを裏切ろうとしています!!」
「ワタシもそう思いマス!」
「右に同じッ!」
「識くん…。君は私たちを裏切って『三間坂様に虐げられたい同盟』に所属しているというのかね…?雑火さんではなく、三間坂さん推しだと?」
「だから何でその二極なんだよ」
「ボス!識の言動に焦りが見られます!!」
「ワタシもそう思いマス!」
「左に同じッ!」
……向き違うぞ。てかこの3人何故に定型文?
「私たちは君たちを認めない。この学校のトップはあの大和撫子才色兼備花鳥風月な三間坂さんではなく、明朗快活快刀乱麻大器晩成な雑火さんなのだから!!!!」
「ボス!賛成です!!」
「ワタシもそう思いマス!」
「上に同じッ!」
…また方向違う。あ、良く考えたらあってるか。上だし。
各々で雑火さんトークを始めた友人達をほっといて、俺は昼飯にする。
「あれ?お前ら今日は学食じゃねぇのか?」
コンビニのおにぎりを頬張る一人に聞いた。確かこいつらは全員学食派だったはずだ。
「フフフ、甘いな識くん。今日は何曜日だい?」
「そりゃ…木曜だけど?」
「そう、木曜日なのだよ!……毎週木曜だけは確実に雑火さんは弁当だ。こんな良い機会を我々がみすみす学食で過ごすわけがないだろう?」
とか言って全員が雑火さんの方を見る。
雑火さんは数人の女子と固まって、そこそこの大きさの弁当を食べていた。彼女は男子だけでなく女子受けも良い。いつも誰かがそばにいるような人だ。
「…雑火は何時見てもど真ん中だな」
「ボス!当然です!!」
「ワタシもそう思いマス!」
「右に同じッ!」
楽しそうに笑っている雑火さんを見ても、今の俺はこいつらのように素直に楽しめる気分じゃなかった。
疑問を押し込むように、俺は昼飯の弁当を口に運んだ。
昼休みの後、今日は月ごとの定期全校集会で、
全校集会では毎回生徒会長の挨拶があるわけで、
ウチの生徒会長は、
「ああ、今日の俺らはツイてるな」
「同感であります」
もちろん俺のセリフではない。断じて違う。
……つまり、大和撫子(以下略)の三間坂さんな訳だ。
いつもはそのスペースを持て余す体育館に、全校生徒がぎっしりと詰まる。
体育館にクーラーなどあるわけもなく、初夏の熱気は容赦なくこもる。
だが、全校生徒はそれでも根気良く校長先生の長い話を耐え切った。
「続いて、生徒会長挨拶」
司会担当になっているゴリラ(数学のあいつだ)がそう読み上げた瞬間、
―― 空気が変わった。そう、文字通り。
どわーーーーーーーーーーーーーっ、というようなコンサート会場ばりの盛り上がり。数多の歓声を背に受けながら、彼女が壇上に上がる。
生徒会長、三間坂 菖蒲[みまさか あやめ]。
この高校史上もっとも高い得票率を得て当選し、今でも絶対的な人気と支持率を誇る女子生徒会長。なんでも元武家の生まれで、その容姿と言動からついた二つ名が『大和撫子』。腰まで届くような艶のある黒髪も由来の一つだ。成績も常にトップクラスだったりする。
体育館が割れるような歓喜も、彼女がこちらに振り向いた刹那に止む。マイクに片手を沿え、男子が見れば十人に十人が振り返るような整った顔が全校生徒に向けられる。
「皆さん、こんにちは」
凛、とした澄んだ声が響く。
どわーーーーーーーーーーーーーっ。
「先日の定期テストも終わり――」
どわーーーーーーーーーーーーーっ。
「―― この夏、生徒会では――」
どわーーーーーーーーーーーーーっ。
「―― という、予算編成の根本的――」
どわーーーーーーーーーーーーーっ。
……まったく、どこかの大統領就任演説かよ。凄いなおい。
「―― これから、貴重な経験をされる方もいらっしゃると思います。なにかお困りでありましたら、気軽に生徒会へとご相談くださいませ。―― それでは、終わりとさせていただきます」
〆の言葉のあと、いつものように和風(他に上手い表現が見つからない…古風?)な笑みを、全校生徒――
―― ではなく、俺に向かってしてきた。もちろん、壇上で。
どわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっつ!!!
「ぼ、ボス!菖蒲様がこちらに笑みを!!」
「あ、あぁ……これは私達に対する…挑戦か?」
「顔緩ませながらいうんじゃねぇ」
とりあえず勘違い共にツッコんでおく。
……俺は理解る。アレは俺を意識した笑みだった。そして、それに含まれる内容も。
どうやら彼女も、非日常を知ってるらしい。
集会が終われば放課後だ。部活が大詰めの奴もいるし、もう受験のために勉強してる奴もいる。
めいめいの過ごし方を横目で見ながら、俺はいつものように一人で下駄箱にいた。
「……おいおい、今どき古風だな」
俺の手には一枚の手紙。靴の中に入っていた。
それには明らかに女子が使う紙に、女子の文字で、こう書いてあった。
『 釈 識 くんへ
今日今すぐに屋上に来て!
鍵は開いてるから。
待ってます♪
』
差出人は、
『 雑火 襲 』
……素直に喜べない。
多少落胆しながらも、俺はさっき降りてきた階段を再び上がっていった。
ーーーーー3-2へつづくーーーーー
皆さん!長らくお待たせしてしまいました、りっぷうです(焦)
気がつけばもう10月…早ッφ(。。;)
さて、今回から遂に新章です→
今回この新章を作るにあたっては
のら様をはじめ、様々な方に参考を頂きました。。。
ここに謝辞を。
書き始めは物語と同じ初夏だったのですが
今は最早秋ですねww季節ずれてますww気にしないでww
毎度ですがのら様、
いつも素敵なイラストありがとうございます→
それでは次話も頑張って行きたいと思いますww
なるべく早く更新しますので…
りっぷうでした(・∀・)ノ




