R35部品流用7 | RiO

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夜空のきれいさは、ちょうどこんな感じ。
乗りやすいGTRにこだわって、設備や認可のために山奥に移転しました。戸惑いもありましたが、今ではすっかりこの環境に馴染んでいます。耐雪梅花麗。日々勉強。
地下水でいれたコーヒーを是非飲んでみてください。

スカイラインGTRのセッティング中に遭遇するトラブルの中でも多いのが
空燃比が予定より「薄い」数値の車両です。
ブーストがかかるまでの負圧から0(大気圧)までは想定通りでも、
そこからブースト0.4を超えるあたりから急激に薄くなり
空燃比計が危険な数値のまま表示を続けます。
目標に近づけるために燃料マップ内の数値を変更しても、
まったく反応せず薄いままの状態が続きます。
燃料マップ上で目標空燃比を濃い方向に数値を入力すると
インジェクターの開弁時間が長くなります。
水道の蛇口を開いているのと同じ理屈ですが、
蛇口を長く開いても水量が上がらない理由は何なのでしょう?
初めてこの現象に遭遇した時はマジで悩みました。

そう言えば・・・・ふと思い出したのが
トラブルの発生したスカイラインGTRオーナーさんの言葉です。
「ぼくのGTR、すごく燃費がいいのですよ。」
もしかすると・・・・・
空燃比が薄い数値の状態はコンピューターを触る以前からあったとか・・・。

ニスモ製の燃料ポンプは同じ時間内に
純正よりも多くの燃料を送ることができます。
そうなると・・・
純正からニスモ製に交換すると燃料の噴射量は上がり
空燃比は濃くなり、燃費が悪化し、パワーダウンもありそうですが
しかし・・・実際にはそんなことにならず、
空燃比は適正に安定する場合がほとんどです。
なぜそうなるのでしょうか?
それは、フューエルレギュレーターという部品ががんばっているからです。

ブースト計を見ると、アイドリング時には針は0以下を指します。
0は大気圧ですから以下の状態は日常よりも低い気圧になります。
もし人がその環境に存在したら酸欠で命が危なく、
水は100℃よりずっと低い温度で沸騰し
ポテトチップスの袋はパンパンに膨らむ世界です。
スロットルが閉じた状態でもエンジンは空気を吸いますので
スロットルからエンジン間のマニホールド内では気圧が下がります。
インジェクターの燃料噴射の空間の気圧は変化し
低い場合は少ない燃圧でも燃料がたくさん出てしまいます。
逆に0より上のブースト圧がかかった状態では
インジェクターから出ようとする燃料を気圧が邪魔し、
同じ時間開弁しても噴射する燃料は少なくなります。
インジェクターは噴射量を時間で制御される部品ですので
マニホールド圧で噴射量が変化してしまうのはとても困る・・・
と言うか基本的には制御不能です。
そこでフューエルレギュレーターががんばります。
車両内での燃料の順路は、
燃料タンク
⇒燃料ポンプ
⇒燃料フィルター
⇒それぞれのインジェクター
⇒フューエルレギュレーター
⇒燃料タンク
上記の順番で燃料はエンジンに運ばれ、
使われなったガソリンはタンクに戻ります。
最近の車両ではこの循環がなく、
エンジンで行き止まり!のシステムもありますが、
RB26DETはこの順路でガソリンが運ばれて戻ります。
循環によって燃料の通路を冷却し
ガソリンが熱で噴射前に沸騰する現象(パーコレーション)
を防止するメリットもあります。
フューエルレギュレーターはマニホールド内の圧力によって
燃料の通路を遮ったりスルーしたり・・・と、
燃圧をマニホールド圧に合わせて調整する仕事をしています。
このシステムによって燃圧が高いニスモ製の燃料ポンプに交換しても
空燃比が大きく変化することはなく
むしろブーストアップ時の燃料不足を適正に補填しています。

先の空燃比が薄くなりプログラムによる調整ができない原因は、
このフューエルレギュレーターの故障か、
マニホールド圧を伝える配管の不良の可能性があります。
もし配管が外れたり破損していれば
フューエルレギュレーターはブースト圧をずっと大気圧のままで調整するため
正圧エリアでは希薄燃焼の原因となります。
ついでの話ですが・・・
ブースト計やブーストコントローラーを装着する際に
この配管に3ウェイジョイントを入れて配管を分岐している光景を見ることがあります。
説明書にも「フューエルレギュレーターの配管に取り付けます」なんて書いていますから
説明書通りの作業で間違いないのですが、
配管分岐によって微弱でも圧力損失があったり、
その先で外れたり破損した場合には
先の燃圧不良による空燃比の希薄化がありますので
あの配管には何も装着しないのが良いと考えています。
こちらで作業の際にそのような配管処理が行われている場合は、
そっと・・・勝手に・・・・違うところに移動しています。(笑)

フューエルレギュレーターの故障は少ないですがそれでも皆無ではなく、
また・・・目標圧力のズレは過去に実例がありました。
交換については、後ほどインジェクターあたりで書いてみようと思います。
フューエルレギュレーターについては以上の通りですが、
実はこの空燃比トラブルについては
燃料ポンプの消耗の実例が圧倒的に多いです。
RB26DET用の燃料ポンプは、純正もニスモ製もローラーベーンと呼ばれる
内部がロータリーエンジンぽい形状のタイプで
高い燃圧が作れる高性能タイプが採用されています。
しかし、構造が機械的なため消耗も顕著で
自分の経験では8万キロ程度でじわじわと性能が落ち、
薄い燃焼に至る場合があります。
その際は消耗が理由と思われますが明らかに作動音が大きくなる傾向があり、
車両後方から「ブゥゥゥゥーーーン」と音が大きく聞こえるようになったら
燃圧や空燃比の確認が安全です。

セッティングで燃料噴射時間設定についてROMを触る際には
そのようなわけで燃料ポンプを新調することをお勧めしています。
燃圧が低下している場合は同じ空燃比を実現するためには
インジェクターの作動時間を伸ばす必要がありますが、
この作業は適正ではなく
また・・・後にポンプを新調した際にはまたやり直しになるからです。

純正は「古い」を理由に価格が上がりすぎていますので
ニスモ製がお勧めです。値引きもありますし・・・・。

あ・・・・
他のメーカーでも良い製品は複数ありますが
ネットで販売されているメイドイン・・・は要注意です。
これまで、「近々で燃料ポンプは新しいのに交換しています」と言われて
希薄現象が発生し、それでも・・・と確認してみると
「やっぱりー、これが出たー!」の経験が複数あります。

ご注意下さい。