解説 抽象画 「自由と制限の狭間 ーグルグルー」 | 油絵を描いています、けどマンガも始めました

解説 抽象画 「自由と制限の狭間 ーグルグルー」

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紹介した抽象画の解説です。

 

 

自由と制限の狭間 ーグルグルー」油彩 SMキャンバスボード

 

自由な風情を描きたいと思いました。

 

抽象画は、学生の頃の若い時に、1枚描いたことがあります。なんたって、現代美術は、抽象画が主流ですものね。アーティストとしては、やっぱりその方向に向かわなくっちゃ、とか、気合いを持ったりして。

 

でも、描いたものは、全然納得いかないものでした。

 

自由な風情を描きたいと思ったのですが、自由に描くというのは、案外大変。描くのは簡単かもしれないけど、「自由」を描いて表現する、というのが大変でした。

 

最初の内は、待ってましたとばかり、自由に描いてみたりするのだけど、その内自由であることが何だか苦しくなってくる。自由に描いているけど、これでいいのだろうか、とか、何描いたらいいのだろう、とか、意味あるのだろうか、とか。

 

抽象画って、画面で分かりにくい分、説明が必要だと思うのですけど、若い時にトライした抽象画は、説明が自分でできないものでした。「何を描いたの?」「どうして描いたの?」と聞かれたら、「何となく」としか答えようがないものでした。

 

そういう説明ができないので、抽象画は棚上げした感じです。

 

それで、ある程度生きてきて、色々自分なりに見聞きして、検証してきて、AIが出てきたこの中において、自由について描きたいと思いました。

 

 

自由っていうけど、昔、自由に描いている内に、何だか息苦しさを感じたと言いましたが、そもそも人間の“自由“というのは、制限付きです。

 

自由にしたいー!って思っても、生きていくには、食べなくちゃならないし、寝なくちゃならない。健康でないと動くこともままならない、そもそも何かするためには、動かなくちゃならない。健康を維持しながら生きて行くことがまず結構大変。

 

時間でいうと、寝るのに準備とか入れてまず8時間位かかるし、食べるのだって1〜2時間はかかる。トイレに行ったり、お風呂に入ったり、着替えたり、この他に仕事とか買い物とか家事とかをこなさないと、生活は維持できない。そうすると、自分の意のままになる時間は大して多くない。

 

それが人間の自由。実に限られている。自由っていってもなあ…って軽く萎える。

 

人間の自由は、制限付きだから、だからきっと作品制作で“自由に“っていっても、そういう生理的な影響が出たのではないかと。自由に描くって言ったって、まずペンやら筆やらが必要だし、紙やら絵の具やらも必要。描くこと自体にもうすでに制限がかかっている。

 

でも、そもそもそんな限られた時間しかないのに、自由でいたいと希求する。しかも、“自由“を感じないと、だんだん気分が憂鬱になったりして、最悪、精神的に病んでしまったりする。

 

自由を感じることは、人間が健康に過ごすために、とっても大事な要素。

 

生成AIのイラストなどが出回って、見たりするのだけど、それらからは、完成度の高さとともに、息苦しさを感じる。人が描いたものなら、全ての作品に伸びしろを感じて、そこに自由度を感じられるのだけれども。

 

そう、その限られた時間である“自由“というのは、人間の伸びしろを模索する時間なのかもしれない。

 

例えば、仕事とか、自分の意のままにならない、制限された時間にいる中で感じた違和感などに関して、制限のない時間を使ってその違和感から、本当の自分の気持ちを考えていくといったような。

 

私は創作にあたり、「きれいだな」と思う絵を描きたいと思っていて、例えば昔の日本画の、胸がすくような画面だったり、「絵に描いたような美しい景色」に引用されるような美しい画面、といった。

 

そういう美しい画面を描くために、モチーフも花や風景を選んだりして、モチーフの力にも頼ったりしたのですが、今回は、モチーフに捉われない、抽象絵画表現で、「自由」な風情を描いてみようと思いました。

 

それで、今回の制作は、手と感覚に任せました。“なんかグルグルとした線が描きたい、明るい色使いがいいな“、と、考えたのはその位です。後は、“なんか曲線が多いので、直線が欲しいな“とか、感覚で空間を埋めていきました。

人間の制限付きの自由の中で、何が生まれるか、手に任せてみて。

 

この絵は、その若い時に描いた絵に似ています。あの頃も、そういう説明をしたかったように思います。あれから、色々絵を見たり、描いたりして、さすがに当時よりは表現の幅が広がっていて、同じように手に任せても当時よりは、画面的にも納得のいくものとなりました。

 

手と感覚に任せて描きましたが、こう見ると、古代の遺跡に描かれた模様に似てるかなと。潜在意識の中に、そういったイメージがあるのかもしれないですね…。

 

別に、目新しい表現でもなく、考え抜かれた画面構成でもないので、発表するのもどうかと思ったりもしたのですが、生成AIの出現による緊張感のある中、気負わない、自由さを表現したいと思ったものです。