英語の試験を「難しくすること」は、実はとても簡単なことだ。
単語を難しくすればいい。単語が難しければ、どんなに文法を理解していても、どんなに英語が得意なネイティブでも、内容を完全には理解できなくなる。
なぜなら、文法ではなく「語彙の壁」こそが理解の障害になるからだ。
実際、大学の入試問題や上級英検の英文は、多くが論文や専門書、時には学術的な文献から引用されている。
つまり、出題されている英語は「日常会話」や「映画のセリフ」とはまったく別世界の英語なのだ。
普通の会話では絶対に使わない単語が平気で登場し、それが“学問としての英語”を形づくっている。
たとえば、英語の論文を書くときには、動作や状態を細かく表現する必要がある。
そのために使われるのが「抽象的な動詞」や「ラテン語・フランス語由来の語彙」だ。
しかし、そうした単語は実際の会話にはほとんど登場しない。
つまり、試験では点が取れても、英会話では使えない。
逆に、会話で自然に話せる人でも、こうした試験英語はまるで別物なので、問題を解けない。
これが「試験が得意な人は話せず、話せる人は試験が苦手」という現象の正体である。
英語の根幹にあるのは「動詞」であり、動詞こそが文章の「核)」のような存在だ。
だが、この動詞には「使われるもの」と「使われないもの」があり、その違いが学習者を混乱させる
。たとえば、会話では “put off” や “turn down” のような短い動詞句で済ませるが、論文では “postpone” や “reject” のようなラテン系の語を使う。
この違いを知らずに勉強してしまうと、どちらも中途半端になる。
つまり、英語を学ぶには「試験英語」と「会話英語」という2つの世界を意識して使い分ける必要がある。
前者は知的で抽象的、後者は感覚的で即興的だ。
どちらも“正しい英語”だが、同じルールでは動かない。
だからこそ、英語を難しくするのは簡単だが、「本当に使える英語」にするのはずっと難しいのである。