通院の帰り道、病院の玄関先に小さな人だかりができていました。
近づいてみると、近くの授産施設からの出張販売。テーブルには焼き菓子やパンが並び、ふわっと甘い香りが漂っています。
「シフォンケーキがおすすめですよ」
そう声をかけてくれたのは、後ろで見守っていたお母さん。手頃な値段にひかれて、ひとつ買うことにしました。
そして——。
少年が両手いっぱいにシフォンケーキを差し出してくれた瞬間、目の前にあったのは満面の笑み。
澄んだ瞳と、少し照れた笑顔が、まるで心の奥の曇りをそっと拭ってくれるようでした。

背後のお母さんの穏やかな眼差しも、温かく包み込むようで忘れられません。
お話を聞けば、施設の経営は簡単ではなく、こうした出張販売も月に一度だけとのこと。
帰宅して、さっそく包みを開け、ひと口。
ふわふわの食感と、ほんのり広がるミルクの香り。
気づけば、あっという間に食べ終えてしまっていました。
有名パティシエのケーキも素晴らしいけれど、このシンプルで心のこもったシフォンケーキは、それ以上のごちそう。
「ありがとうございます」とたどたどしい口調で手渡してくれた少年の笑顔が、味わいにそっと添えられているようでした。
もう一度、この笑顔に会いたくなって、思わず予約の電話を入れてしまいました。
ささやかなことだけれど、少しでも力になれたら——そう思った、一昨日の出来事です。
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『ボサノバと酒と車の日々』

