棚の本を整理していたら、一冊の絵本が手に止まった。

 

レイモンド・ブリッグス作『エセルとアーネスト』。ずっと大切にしている一冊だ。

 

ブリッグスといえば『スノーマン』や『さむがりやのサンタ』でおなじみの、ユーモアあふれる英国の絵本作家だ。

 

けれどこの作品は、そういった作風とは少し異なる。モデルはなんと彼自身の両親。一家の歩みを、リアルで温かな筆致で描いた、自伝的な絵本なのだ。

 

 

若い頃に出会い、恋に落ち、結婚して家庭を築いた二人。作者本人が生まれ、第二次世界大戦という激動の時代を乗り越え、それでも穏やかな日々が続いていく。

 

 

けれど、幸せな時間はいつか必ず移ろっていくもの。二人の間に、少しずつ老いが忍び寄ってくる。

 

 

先に病に倒れた母親。一人暮らしになった父親は、認知症が進み、亡き妻の分の夕食を二人前作ったり、ティーカップを二つ並べたりするようになる。

 

そしてある日、父親もまた、発作でこの世を去っていく。


読み終えるたびに、目頭がじんわり熱くなる。

 

 

若い頃の輝きと、老いと病に少しずつ侵されていく姿の対比が、静かに、でも確実に胸を刺す。

 

 

私の父も、病院で一人静かに逝った。そのことを、この本を読むたびに思い出す。

 

 

だからこそ、この絵本をすべての世代の人に読んでほしいと思う。

 

親が元気なうちに、ぜひ。

 

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