秋晴れの青空が気持ちいい季節となりました。日中はまだ少し暑さが残りますが、木陰に入ると涼しい風が通り抜け、鈴虫の声が聞こえてきます。
先日、用事でバスに乗っていた時のことです。
窓の外に広がる、どこまでも続くような青空を眺めていたら、ふと「これって、まるで西海岸の空みたいだな」と感じました。その瞬間、頭の中に軽やかなギターのイントロが流れてきたんです。
この空にぴったりな、少し物悲しくも心に響くメロディ。何だったかな、と考えていたら、ある映画の主題歌だと気づきました。
それは、1969年公開のアメリカン・ニューシネマを代表する傑作、**『真夜中のカウボーイ』**の主題歌「うわさの男(Everybody's Talkin')」でした。
大都会の孤独と友情を描いた傑作
『真夜中のカウボーイ』(原題:Midnight Cowboy)は、ジョン・シュレシンジャーが監督を務め、ジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンが主演した名作です。
テキサスの田舎町から、一旗揚げるべくニューヨークへやってきた青年、ジョー・バック(ジョン・ヴォイト)。彼はジゴロとして成功することを夢見ますが、都会の現実は厳しく、あっという間に無一文になってしまいます。
そんな彼が偶然出会ったのが、病を患い、足を引きずる詐欺師のラッツォ(ダスティン・ホフマン)でした。
最初は互いを利用しようとしますが、やがて彼らは大都会の底辺で生きるはみ出し者同士として、奇妙な友情を育んでいきます。そして、いつか暖かいフロリダへ行くことを夢見て、貧困の中で共同生活を始めるのです。
心に刺さるラストシーン
この映画で特に心に刺さるのが、ラストシーンです。フロリダへ向かうバスの中で、ラッツォは静かに息を引き取ります。そしてジョーは、それまで執着していたカウボーイの装束を捨て、現実と向き合って生きていくことを決意します。
初めてこのラストを見たときは、少し切なくて、人生の厳しさや虚しさを感じました。
しかし、何度か見返すうちに、別の見方もできるようになったんです。
病に苦しみ、都会の片隅でもがいていたラッツォは、暖かいフロリダを目の前にして、安堵と開放感を抱いて旅立ったのではないでしょうか。そしてジョーも、都会の幻想から目が覚め、穏やかな生き方を求めようとしたのかもしれません。
結末は確かに切ないですが、2人にとっては、それは希望に満ちた新しい始まりだったのかもしれない。そう考えると、この映画がより深く心に響きます。
今も色褪せない感動
この映画は、都会の孤独や挫折、そして社会の底辺で生きる人々の姿をリアルに描き、当時の若者たちの共感を呼びました。虚構の「アメリカン・ドリーム」を否定し、現実の厳しさを突きつける内容は、後のアメリカン・ニューシネマに大きな影響を与えたと言われています。また、ジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンの迫真の演技は、キャリアを代表する名演として高く評価されています。
映画情報
· 監督: ジョン・シュレシンジャー
· 主演: ジョン・ヴォイト、ダスティン・ホフマン
· 公開年: 1969年
· 受賞歴: 第42回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、脚色賞を受賞。
· 主題歌: ニルソン「うわさの男(Everybody's Talkin')」
まだこの映画を見たことがないという方には、ぜひ一度見ていただきたいです。きっと、心に深く刺さる感動が待っていますよ。
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ボサノバと酒と車の日々



