九十を数える母への誕生日の贈り物に、今年は思いのほか手こずった。

 

これまで、形あるものは大方贈ってきた。店の人に勧められるまま選んだものが、いざ渡してみると母の心には触れていなかったということも、一度や二度ではない。

 

女心というのは、いくつになっても掴みどころがない。

先月からずっと、何を贈ろうかと考えあぐねていた。

 

 

そんな折、お盆に自宅へお経をあげに来た僧侶がいた。彼が立ち去ったあと、部屋にふわりと残った香り。甘く、やわらかい。男の自分でも、つい足を止め、香を聞き入るほどのものだった。

 

――香りを贈ろう。

 

 

そう思い立ってからは、少し遠くまで足を延ばして店を探した。店の人に相談すると、この年代の方にはこちらがよく似合いますよ、と一つを勧めてくれた。

 

 

香炉には少し迷った。今は立てて焚くものだけでなく、寝かせて焚く型もあるという。万が一のことを思い、寝かせる型を選ぶことにした。」」いくつか見せてもらった中から、陶器に花柄をあしらった一つに決めた。

 

落ち着いた、良い佇まいだった。

香り袋も添えて、その晩、手渡した

 

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母は最初、これは何だろうかと小首を傾げて眺めていたが、包みを開いた途端に立ちのぼった香りに、表情がふっとほどけた。

 

 

数日後、様子を尋ねると、ベッドの脇に置いて楽しんでいるという。

 

 

女性への贈り物に迷ったら、香りを贈ってみるのも一つかもしれない。