その次の日のこと。
同じ時間になっても『台所』には見事に誰も寄り付かなかった。
もちろんその変化?について『疫病神』から何も言われることは無く、私からも聞くことはなく。
その後も「彼ら」は他のケアラーがしていたように、サッサとお茶だけ作って「カメラがない部屋」に行ってしまう……というパターンになった。
と言うか、私はこの件に関して「当時は」未だ仲が良かった?「M妻」からその日のうちに
「アノ人達、働きもしないでっ!!」
…と、しっかり愚痴の電話を貰っていたのだけど、ね。
もちろん「M&Mズ」もやっと?手に入れた「自分達が楽」なコマは手放したくなかった訳で、どう言ったかは知らんがそれで当の『疫病神』がスネて辞めるようなことは無かった訳だけど。
しかしその後彼らが『疫病神』に何か言いたい時は「他の人に注意する」フリをして彼女をその場に同席させる、という方式になっていた。
もちろんそれ以後『疫病神』が「仕事」(=大抵私をイビる為)以外で台所に長時間滞在することは無くなったのだけれども、逆に私はそれ以降カメラを上手く利用するようになっていた。
例えば『疫病神』の無理難題で『折込パイ』を作らされることになり、その過程で「よせばいいのに」さらなる
『自分の手柄』
…にしたかったのだろう、『疫病神』が首を突っ込んで来た時があった訳だが……
……この時も、最終的に私が「修正」したから住人達から文句が出ることもなく=『疫病神』自身が直接責められることもなかった訳だ。
しかし、実は私は『疫病神』が大急ぎで隠した=冷蔵庫に突っ込んだ「パイ生地」を、彼女が『業務用』のカワイイ声で「M妻」と夢中で?話している真っ最中に取り出し『監視カメラ』に向かって何度となく「使えない生地」を持ち上げ、まさに
「びよ~~ん!」
…と大袈裟に伸ばして見せ続けていたのだ。
そればかりではない。
『疫病神』がコソコソと背中を丸めて生地をコネている間も、カメラの前で数回
「あそこで、あんな風にしていますけど~?」
…というジェスチャーをして見せていた。
(注;カメラで音声は届かない)
それはもちろん……と言うよりも「そういう時」には……いや「そういう時」こそ、「M妻」が一部始終を『見守っている』のを知っていたからである。
そも、そうでなければ『疫病神』の作業が終わった「直後」に電話が掛かって来る……なんて、余りにタイミングが良過ぎるよなあ?……と、「普通の人」なら即思いが及ぶと思うのだが?
「M妻」はそれなりに頭が良いと思える人だったから『疫病神』の態度を観たばかりでなく、彼女が自分の質問にどう反応するか、という事も観たかっただろうな……と確信している私である。