それでも、その日の中で「空気が凍った」のはその程度、と言える。
あ、後もう一つと言うか、「メガネちゃん」が
「あの~、クッキーがなくなりましたけど~」
…と言った時、私がまだ「ケーキ」の箱詰め真っ最中だったからか、「ジュリー」が再び
「え~っと、じゃあ今度は『ケーキ』を…」
…と言いながらこっちを見て来た。
(「懲りる」「学ぶ」という言葉はコノ国の人達には無いのか??)
そこで私は黙って「ケーキ」を一個摘まみ上げ、もう一方の手の指で「底」の部分をチョンチョンと差しながら「笑顔で」首を横に振ったから、「ジュリー」も即アアそうか、という顔になったけど。
その直後に「ジョー」がやって来て、普段から『ミキサー部屋』で三人が働く場合に使うスペースをテキパキと空け、「ジュリー」に顔を向けて
「これが『メガネちゃん』の分だからね!」
…と言って紙に書いた「リスト」を置いて行った。
流石「リーダー」である。
そうなると「ジュリー」にしても後はそれに沿って「指示」するだけでいいし、下手に
「誰かの仕事を奪う・邪魔する」
…ことになる必要も無い。
その時「ジュリー」は当然「自分の仕事」=デコレーションをしていて直ぐに「リスト」を読むことは出来なかったので、私が先にザッと読んでみた。
結構な量の「リスト」があったのだが、その中には
「クッキーのカット」
…という(その分の生地の仕込みが終わっていないので)直ぐには出来ない仕事の他に
「マフィン」=主にリンゴのカット
…というのもあった。
実はこれ、年齢問わず『職業体験』に来た人達のド定番とも言える作業。(ハイ、私もやりましたよね?)
そしてその「マフィン」の仕込みはその日の私のリストの中にもあった。
そこで私は「覚悟」を決める。
よし、今からしばらくは私が「メガネちゃん」の相手=「指導」をしてみよう、と。