「事の始まり」(だったのだろう事)は『M』が働き始めて三週間程した日曜日。
その日は『T』が「一日シフト(午前&午後の12時間勤務)」で入っていたらしいのだが、出勤して来た『M』は昼食の用意だけすると
「『家族に問題』が起こった」
…とだけ言って、サッサと「早退」してしまったそうだ。
繰り返すように、日曜日は『サンデー・ロースト』の御馳走日。
例え料理が全て用意はしてあったとしても、配膳及び後片付け等の手間は平日よりも掛かる日だというのに、突然ケアラー二人で全部対応しなければならなくなったワケだ。
その日誰が『T』と組んでいたのかは知らないが、『Yさん』が出勤した時でも『T』はまだ怒り心頭で『M』を罵倒し続けていたそうだ。
それなのに次の日何事も無かったように出勤して来た『M』に対して、『T』が不満そのものを本人にぶつける事は「もちろん」なかった、と言う事実も
「流石『T』!」
…と言うべきか?
ところが、それから10日も経たないある日の朝、その日「一日シフト」で出勤していた『疫病神H』に『M』から一本のテキストが入った。
「『家族の問題』で退職します」
後は『疫病神H』だけでなく『M妻』でさえ、幾ら電話を入れようが全く応答せずそのまま『M』は「ハウス」から消えてしまった。
「アレ(日曜日)は『面接』に行ったんじゃないのかねえ……?」
『Yさん』が呟いた。
「でも、随分急に辞めたもんだよねえ?」
…と『Yさん』は不思議がったが、私はそうは思わなかった。
と言うのも、『M』が辞めた=消えた日というのは、「ハウス」の給料日の次の日だったから。
給料計算の為の「締め切り」と実際の「給料日」にはいつも一週間程の差がある。
それがモッタイナイ!……と言えばそうだと言えるけど、同時に
「たかが一週間」
…だ。
ましてその間には「休日=無給」の日も入っている。
例えばその一週間分の給料が払われなかったとしても、取り合えず一か月分の給料が入っていて、更に次の職場が決まっていたとしたら「イヤな職場」なんてサッサと辞めたくなるんじゃないだろうか?
『M』もソレを狙った、というか、給料がちゃんと振り込まれるのを確認してから辞めたに違いない。
(給料日に給料が払われない、という職場だって少なからずある…!)
その後個人的に『Z』に会った時(参照;ソノ116)私が『M』について
「アレは長続きすると思ったんだけどね~?」
と言うと『Z』は
「いや~、『M』は最初から満足していなかったよ。
『疫病神H』が居ない時なんてず~っと、
『食材はヒドイし、給料も安くて馬鹿らしい』
…って愚痴って来ていたもの!」
…と言っていたから『M』も「ハウス」の労働条件に納得していなかったという事は判ったのだが、疑問だったのは
「では、何故彼はワザワザ『そんな仕事』を受けたのか?」
…という事。
一度会ってそこら辺の話を聞いてみたいな~、と思ったのを覚えている。
しかし「ハウス」の後、『M』が何処へ行ってしまったか、なんてモチロン誰も知らなかったし、一時怒りはしても誰も気にする人は居なかった。
もちろん私も、『Yさん』も。
そう、『M』と『再会』するまでは……!