しまった。
ちょっとした解説と小言により、
藤井理央ブログ史上最も長大、
かつ難解(に見えるもの)になってしまったかもしれない。

まあ、僕も勉強になったからいいやね。。

難しそうに見えて、
実はそうでもない。

藤井 理央のBlog-200902030427001.jpg

今さら2008年生誕100年、
3人目はオリヴィエ・メシアン。
1908年12月10日-1992年4月27日。

指揮者ではなく作曲家。
フランス人だ。
20世紀半ばに代表作を次々と発表しているわけだから、
ジャンルでいうクラシックの中の現代音楽という分野に入る。
聴いたことあるかな?

とは言え僕も、その傑作とされている
「トゥランガリラ交響曲」と
「世の終わりのための四重奏曲」
くらいしかちゃんと聴いたことはない。

独自のリズム理論や、
「移調の限られた旋法」を提唱し、
後世に多大な影響を与えた。

それを簡単にでいいから説明したい。

僕の勉強だ。
まず1オクターブを12等分に分けた1つを半音、
その2つ分を全音という。
でしょ?

ギターで言えば1フレット、
鍵盤楽器では鍵盤1つ分が半音となる。

1オクターブとは一体?
なんてことはまたいつか話そう。切りがなくなる。
みなさん感覚ではわかっている。
なぜ12等分?もまたいつか。

全音を略して全、
半音を略して半。

伝統的な西洋音楽、
まあ僕らが普通に耳にしているポップ・ミュージックもそうだが、
基本的に全全半全全全半と上がって行く
いわゆるドレミファソラシド(長調)、
もしくは全半全全半全全の
ラシドレミファソラ(短調)、
という7音音階を基盤に作曲されて来た。

しかし音階それだけじゃないんじゃないか?
という発想だ。
きっと好奇心旺盛な男の子(女の子)なら、
たいがい一度は考えることだし、
メシアン以外にも、
多くの作曲家たちがそんなことに取り組んだが、
その著書「わが音楽語法」によって、
簡潔にまとめ上げたその代表的な人物といえる。

そんな話を聞いてちょっとワクワクした人もいるだろう。

そう。芸術とはときめき。
ロックンロールもまたときめき。

その「移調の限られた旋法」
には1から7までの番号が付けられている。

通常の西洋音楽での変ホ長調(E♭ major)や、
嬰ハ短調(C♯ minor)などの調(Key)の変わりに、
「この曲(部分)は旋法第何番のこれ」と設定して、
その音階に従って作曲するのだ。

難解に聴こえる現代音楽、
適当に書いているわけではないというのの一例だ。

最もわかりやすいのは第1番。
1オクターブ内を全全全全全全という具合に、
すべて全音で上昇、つまり
ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ♯・ドという6音音階となる。
お気付きの方もいるであろう、
ジャズ理論で言う所のホール・トーン・スケール(Whole Tone)、
全音音階だ。


第2番は半全半全半全半全、つまり
ド・レ♭・ミ♭・ミ・ファ♯・ソ・ラ・シ♭・ドという8音音階。
そうジャズ理論で言う所の
コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール。
出た。2008年3月16日ブラバンblog略称に登場したコンディミ。
コンビニに似ている。
懐かしい。

なんかこう書くとメシアンてジャズっぽいの?
みたいになってしまうが全然違う。
違い過ぎる。

たまたま同じ音の並びになっただけで発想が全然違う。
音楽、フレーズが先にあって、
後からまとめたものがジャズ理論のスケール、
音階を決めて音楽を作ったのがメシアンだ。

そしてここで注目しなければならないことがある。

ご存知のように調(Key)は、
始まりの音(主音/トニック)が、
1オクターブ内12半音あるわけだから、
長調と短調でそれぞれ12キーずつ存在する。

しかし第1番はずっと全音だから、
さっき書いたドから始まるやつと、
ド♯・レ♯・ファ・ソ・ラ・シ・ド♯
だけの2種類しか存在しないことになるわけだ。
レから始めると、
当然ドから始まるやつと同じになってしまう。


そして第2番も、
半全の繰り返しだから、
さっきのドから始まるやつと、
ド♯・レ・ミ・ファ・ソ・ラ♭・シ♭・シ・ド♯と、
レ・ミ♭・ファ・ソ♭・ラ♭・ラ・シ・ド・レの3つだけ。
次のミ♭から始まるやつは、
ドから始まるやつと同じになってしまうから、
3つですべてなのだ。
鍵盤で弾いてみたらすぐわかる。

ジャズでホール・トーン(スケール)が2つ、
コンディミが3つしかないのはよく言われるやつ。

「ヒューマン・ミュージック・カレッジ1年生の諸君。
これは12月に授業でやった
『ディミニッシュ・コードは3つしかない、と、
オーギュメント・コード(増三和音/象さんパオーン!)は4つしかない』
てのに似ているだろ」

つまり1オクターブ内での、
ある一定の音程パターンの反復による音階のため、
12半音分も存在しない。
これが「移調の限られた旋法」という名の所以である。

第3番は、
全半半全半半全半半、つまり
ド・レ・ミ♭・ミ・ファ♯・ソ・ラ♭・シ♭・シ・ド。
半音4つぶん行った所で繰り返しになるわけだから、
4通り存在する。

第4番以降はちとややこしい。
半・半・全半(短3度)・半を繰り返す。
ド・ド♯・レ・ファ・ファ♯・ソ・ラ♭・シ・ド。
半音6つ行った所で繰り返すから、
6通り。

これくらいにしておこう。
僕も限界。

いや、あと3つだから頑張ろう。

第5番。
半・全全(長3度)・半を繰り返す。
ド・レ♭・ファ・ファ♯・ソ・シ・ド。
6通り。

第6番。
全全半半を繰り返す。
ド・レ・ミ・ファ・ファ♯・ソ♯・ラ♯・シ・ド。
6通り。

第7番。
半半半全半を繰り返す。
ド・ド♯・レ・ミ♭・ファ・ファ♯・ソ・ラ♭・ラ・シ・ド。
6通り。

お疲れ。

音階はこれくらいにして、
メシアンが考案、多用したリズム理論にも、
非可逆リズムなど重要なものがあるが、
やっぱここでの解説は難しいからやめよう。
これは回文みたいなやつ。

じゃあ一体どんな音楽なのか。

“これは興味が出てきた”、
はたまた “ドレミファ辺り↑はすっ飛ばした” 、
というみなさんに、
テレビっ子から丁度いいお知らせがある。

2月5日木曜日AM10:55からBS2で
「世の終わりのための四重奏曲」をやる。

これ、評判いいんだか、
昨年夏から2-3回放送しており、
僕はもちろん試聴済み。

「世の終わり」と言っても、
何もア(ハ)ルマゲドン、20世紀少年的な話ではなく、
フランス語原タイトルのtempsから「時の終わり」と訳す方が正確らしい。
「時の終わり」も洒落てるが、
「世の終わり」とはちとかっこいい。

メシアンが第ニ次世界大戦中の1941年、
ドイツ軍に捕えられ、
捕虜収容所内での極限状態で書いたもの。

自身がピアノ、
その場にヴァイオリン、チェロ、
クラリネット奏者が居合わせたために、
この編成の室内楽曲を書き、
収容所内で初演された。

飢え、極寒の中、捕虜の身で、
どうしてそんなことができたのか、
今度調べてみたい。

以前このblogで、
「風のガーデン」をよく出来たものとして、
それに習い、音楽もそうでありたいと書いた。

しかし、そんなことは、
誰もを一度聴いただけで
「いいじゃん」と言わせ、
基本的にヒットチャートというものを見据えての、
ポピュラー音楽の方法論でしかない。

もちろんそれは、
とても重要で難しく、
いつも直面する課題ではあるが、
音楽そればかりではない。

聴く側も、
演奏する側と同じように、
気合いと集中力を使って頑張って聴いて、
初めて何かを得るということも重要ではないか。と。

情報があふれ、
どんどん便利になっていく現代社会において、
忘れられていくことのような気がする。

なんてな。

そう、このブログも然り。
ここまで頑張って読んで来たあなたは相当偉い。

全8楽章、
50分ほどの決して聴きやすいとは言えない音楽を聴くのは、
大変だ。

僕も途中気を失いかけるし(爆)、
そこに宿る深い精神性を理解するところにまでは到達していないが、
また聴きたいと思うことは確かだし、
こういうやつは何回か聴いて覚えてくると、
単純にかっこいい、好きと盛り上がってくるもの。

いやいや、
僕なんかよりもみなさん音感は鋭く、感性も豊か、
頑張ってコンサートに足を運ぶことも知っている。
すぐに伝わるものがあるはずだ。

メシアンの「トゥランガリラ交響曲」の方は、
大編成オーケストラによる壮大なシンフォニー。
こちらも是非。

お疲れ。