◆学校(卒業式前日)
松前町原口での三年間の単身赴任を終え、洋一は函
館市内のA小学校に勤務している。
卒業式を明日に控え、慌ただしく準備に取り掛かる
洋一。
毎年式場の盛花を依頼している花屋さんと立ち話を
する。
ペットの話から、函館にはアニマルレスキューとい
うボランティア団体があることに話が及ぶ。
洋一「私の家族も犬や猫が大好きで、捨て猫やら野良犬
やら、また保健所で処分されそうな犬を保護して
家族みんなで協力して世話をしているんです。」
飼っていらっしゃるんですか。」
洋一「犬が五頭で、猫が二十三匹です。」
花屋「すごい数ですね。餌代とか大変ですね。月にどの
くらいかかっているんですか。」
ですね。」
花屋「それは、本当に大変ですね。」
すから・・・、と言うよりも、結局、好きでやっ
ているんですけどね。」
花屋「好きだけで、なかなかできることではないです
よ。」
洋一「ところで函館には、保健所で処分されそうな犬や
猫を助ける活動に取り組んでいるアニマルレスキ
ューというボランティア団体があるのをご存知で
すか。」
花屋「知っていますよ。」
スキューのこと、めちゃくちゃ尊敬しているんで
す。本当に素晴らしいですよね。」
洋一は、少し興奮ぎみに話す。
花屋は、はにかむように笑い、照れくさそうに話し
出す。
花屋「ありがとうございます。実は、私がアニマルレス
キューの代表なんです。」
洋一「えー、本当ですか!それはすごい。感激です。へ
ぇー、信じられない。奇跡的な出会いですね。う
れしい限りです。」
花屋「そんなに、感激してくださって私もうれしいで
す。ありがとうございます。」
みました。涙が溢れ止まりませんでした。本当に
感動しました。代表さんの気持ちが痛いほどわか
るんです。」
車を運転しながら、野犬抑留所に向かう代表。
車窓から見える周りの景色。
(「北海道新聞」より)
≪「生まれてきてよかったね。今度は幸せになるんだ
よ。」
震えているシバイヌを、動物愛護団体「函館アニ
マルレスキュー」のメンバーが優しくなでた。
れ、見晴町(みはらしちょう)の野犬抑留所に運
ばれた。
飼い主が現れないまま一週間を檻の中で過ごし、
処分される直前に、アニマルレスキューが引き取
った。
新しい飼い主となった市内の女性は「引き取った
からには最後まで面倒を見ますよ。」と約束した。
アニマルレスキューは、捨てられたり、抑留所に
収容されたりした犬や猫の新しい飼い主を探す活
動を続けている。
ると手放す」など、無責任な飼い主が後を絶たな
い。
アニマルレスキューの代表は、月に数回、山あい
にある野犬抑留所へ向かう砂利道を車で走る。
れた。
けがえのない命、命あるものを一匹でも多く助け
たい。」という強い思いが、レスキューの日々の
活動を支える。≫
◆函館市西桔梗町(夕方)
「西桔梗町の野原で、ロープを巻きつ
うずくまっている犬がいる」 と市民から通報が
あり、レスキューメンバーが駆け付ける。
代表「なんてこと!」
犬の様子(硬いロープで首や前足の付け根を何重
にも巻かれ、ロープの痕は
わいている状況)を見て、絶句する。
メンバー1「いったい、誰がこんなことを、絶対に許せ
ない!」
怒りで体が震え、じっと犬を見つめる。
立ちすくんでいるメンバー2が、やっとの思いで
言葉を発する。
メンバー2「このままでは、死んでしまう。」
犬に近づき、巻かれているロープを必死に外そうと
する。犬はかすかに唸り声をあげるが、精気を失い
うずくまっている。
メンバー1「私も手伝うわ。」
メンバー全員で、巻かれているロープを何とか外そ
うとするが、なかなか外
ようやくロープが外れる。
代表「S先生に連絡して」
メンバー2が、急いでS動物病院に連絡を入れる。
メンバー2「すぐに連れて来てって。」
保護した犬を車に乗せ、急いで市内にあるS動物
病院に向かう。
(「函館ワンニャン物語 ④」へ続く・・・)