函館ワンニャン物語 ① | 南北海道動物愛護ネットワーク みらい

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主に函館市近郊で、捨てられた犬や猫の保護、里親探しを目的に活動している動物保護団体です。
毎週日曜日、美原のパチンコ富士3階にて譲渡会を開催しております、譲渡は、もちろん見学もどうぞ。

『函館ワンニャン物語』 ① ~ポン太~

※登場人物、あらすじの紹介は、前回の記事をご覧下さい。


 
小雨降る湯川温泉電停付近(薄暗い夕方)
    
  夕食の買い物の帰り。

自家用車を運転し、聖子が通りかかる。

道路脇にある黒い塊に目が留まる。

聖子「何、えっ! 動いた?」

  
自家用車を止め、その場所に行く。
  
夕方の帰宅ラッシュ。
  車の往来が激し
い中、黒い塊を手にする。

  ナレーターにより、次の詩が詠まれる。

『どうしてこんなになっちゃたの
僕 何も見えなくなっちゃった
雨が降ってたよ
とても冷たい雨が・・・
僕 ぼろぼろの雑巾になっちゃった

鉄の車が僕を轢いたんだ


「痛いよ 苦しいよ」
僕、このまま死んじゃうのかな
きっとそうだよね
野良猫の僕なんて だれも見向きもしないもの
お母さんの手の温もり 忘れないよ
そっと僕を温めてくれた あの温もり
真黒なボロ雑巾のような僕を助けてくれたお母さんの手
あの日 僕を抱きしめてくれた大きな手

僕 人間なんて大嫌い
いつも僕たちをいじめるんだもの
怖くて 憎くてしかたなかったよ
ひっかいて 噛みついたこともあったよ
僕 人間なんて大嫌いだったんだ

でもね 僕のお母さん人間なんだ
だってあの日 僕を助けてくれたのがお母さんなんだもの
野良猫の僕を 優しく抱きしめてくれた
車に轢かれて 泥だらけの僕をそっと手で包んでくれた
そんな人間もいるんだよ
僕その日から お母さんの子になったんだ
だから 僕のお母さん人間なんだ
僕 お母さんが大好きだよ
人間のお母さんが大好きだよ』



  柏木ダイエー付近(同時刻)

  仕事を終え自家用車で帰宅途中の館岡
  洋一が、少年期を回想する。
  昭和三十
年代の函館。
  柏木ダイエー付近は、畑
であった。
  畑に捨てられている子猫を
見つけ、家に持ち帰る洋
  一。

洋一「お母さん、これ・・・」

  
びくびくしながら、母親に見せる。

母親「また拾ってきて。うちは貧乏なんだから飼えない
   って言ったでしょ。何度言えばわかるの。捨てて
   きなさい。」

  洋一は、泣きながら子猫をもとの場所に戻しに行
  く。



◆館岡家宅
  
  
ひと足早く聖子が帰宅する。
  聖子は慌
ただしく保護した猫の世話をする。
  
間もなく、洋一が帰宅する。


洋一「ただいま」


聖子「あなた、大変!」

  
二階から、聖子の叫び声がする。
  洋一
は、急いで二階に上がる。


洋一「どうした?」


聖子「これ、見て」


洋一「何だこれ、生きてんのか。」

聖子「何とか。でもかなり体温が低くて、どうしましょ
   う」

洋一「どうしましょうって、とにかく温めてすぐに動物
   病院に連れていくしかないだろう」


 二人で急いで病院に行く用意をする。

 


◆O動物病院(診察室)


  レントゲン結果、しっぽと右足骨折。


獣医「難しいかもしれませんね。」


聖子「先生、どうにか助けてください。お願いしま
    す。」


獣医「これだけ体温が低いと・・・、助かったとして
  も、この足では・・」


洋一「とにかく、できる限りのことは、お願いしま
  す。」

 獣医は無言で治療に取り組む。
 洋一と
聖子は心配そうにただ見つめるだけ。
 
治療が終わり、高額の治療費を支払い帰宅する。



  館岡家宅

  
治療を終えた猫を二人が見つめる。


聖子「助かるかしら・・・」


洋一「残念だけど、無理かもしれない・・」


聖子「何とか助けてあげたい・・・」


洋一「とにかく、できる限りのことをするしかない。」


聖子「また、お金遣っちゃったね。」


洋一「仕方ないさ。この猫、助かったら何て名前を付ける?真黒だから真っ黒くろ介。魔女の宅急便のジジ。それとも・・」

 
猫のことが心配で、元気のない聖子を励まそうとし
 て、はしゃぐ。


聖子「ポン太。」

  
猫のことをじっと見つめ、ぽつんと言う。
  続いて、確かめるように


聖子「うん。ポン太。ポン太がいい」

  
周りに、数匹の猫がいる。
  二人の横に
は、二匹の犬がすわっていて、心配そ
  に二人を見つめている。

 
(「函館ワンニャン物語 ②」へ続く
・・・)