ウクライナのメディア「キーウ・インディペンデント」が、ロシアの軍事シンクタンク「カーネギー財団」の報告書を引用する形で、極めて衝撃度の高い現実を報道している。

 

 戦争開始からロシア軍内のHIV感染者がなんと、20倍以上に急増していることが明らかになったのだ。

 感染率急増の背景には、野戦病院の非衛生的な処置や感染注射器の使い回し、性的接触の増加などがある、と報告書は分析している。

 侵略戦争開始後、プーチンは『部分的動員』名目で30万人の予備役を召集したものの、大量の国外脱出者が出たことで、民間軍事会社ワグネルを使い、ノボシビルスクやヴォロネジ、ロストフなどの刑務所から受刑者をリクルート。

 

 彼らを『肉の壁』として、最前線へと送り込んでいたが、彼らの多くが日常的に非衛生的な注射の使い回し、性的接触を行ったことで、戦場でHIV感染が急激に広がってしまったようだ。

 受刑者の権利確保活動団体「グラグ・ネット」によれば、ひどい時には一度に1000人以上の受刑者が動員されるため、ほぼ空っぽ状態になる刑務所があったというが、懲役10年、20年という凶悪犯が多く、彼らは「ストームZ」という部隊に所属。

 

 まともな装備を与えられず、訓練らしい訓練もないままに前線へと送り込まれ、逃走できないよう正規軍から監視される。

 

 さらに逃走しようものなら直ちに射殺されるという、まさに地獄のような環境に身を置きながら戦っていた。

 ただ、ワグネルが受刑者をリクルートする際に、受刑者に感染症の有無があるかの確認が行われているはず。

 

 とはいえ政府としては、受刑者を戦場へ送れば、刑務所の食料配給を大幅に減らせるメリットがある。

 

 そこで感染症があろうがなかろうが、手を挙げた受刑者は全て採用し、そのまま戦場に送り込んできた、というのが実情だったようだ。

 ウクライナ情報総局によれば、ロシア軍とて戦地での感染拡大を懸念し、HIVに感染している受刑者には赤い腕章、肝炎の受刑者には白い腕章を着用させるなど一般兵士と区別。彼らが負傷しても、医者は治療を拒否していたとされる。

 なんともおぞましい現場だが、ワグネルが動員した受刑者は5万人ほど。

 

 その中にどの程度のHIV感染者がいたのかかは、はっきりとわからない。

 

 戦争開始から3年以上が経過した今、無謀な兵士動員の「ツケ」が回ってきていることは間違いない。