5月16日、7カ月ぶりに北京で会談した中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領。

 

 首脳会談後には共同声明に署名したが、またもや東京電力福島第1原発の処理水を「核汚染水」と呼び、「海洋放出に深刻な懸念」を示すなど、IAEA(国際原子力機関)が認める安全性と妥当性など一切無視で、厳しい国際モニタリングを受け入れるよう訴えた。

 今回のプーチン氏による訪中は表向き「両国の関係強化」としているが、むろん、その背景には、長期化するウクライナとの戦争で西側諸国から制裁措置を受ける中、なんとしても中国との経済協力拡大に活路を見いだしたいロシアと、不動産バブルの影響で経済が低迷、米欧各国の厳しい対応に直面している中国とが連携強化せざるを得ない状況がある。

 

 国際部記者が説明する。

「中国はウクライナ侵攻が始まって以来、戦争を非難することもなく、ロシアに対し様々な形で支援を行ってきましたが、国連の常任理事国という立場から、さすがに武器は売却してこなかった。しかし、技術や部品という形で大量に輸出され、アメリカや欧州連合(EU)は、それがこの戦争を継続するうえで不可欠になっているとみて、中国政府だけでなくロシア政府と取引している香港の銀行や企業に対し新たな制裁も発表している。むろん中国はこれに猛反発。商業的用途で使用される輸出品だと主張してきましたが、アメリカやEUにそんな理屈が通るわけはなく、制裁の範囲は広がる状況にあったわけです」

 国内需要が低迷する中国としては、海外市場に目を向けなければならず、貿易相手国でもある西側から、これ以上制裁や圧力を受け続けるわけにはいかない。

 

 そこで今回の共同声明では、ウクライナでの戦争を巡り、中国とロシアは「政治的解決」の必要性で同意しているとして「中国はヨーロッパの平和と安定の早期回復を望んでいる」と改めて強調。

 

 中国がロシアに対し平和的解決を求めていることを国際社会にアピールしたというわけである。

「とはいえ、習氏としてはせっかくプーチン氏と首脳会談を開き平和的解決をアプローチしても、結果が残せなければ国際社会へアピールできない。そこで、6日に訪問したフランスでマクロン大統領と一致した『パリ五輪期間中の休戦』をプーチン氏に持ちかけ、それを実現させるのではないか、との見方も出ています」(同)

 マクロン氏は習氏との会談後の記者会見で、「五輪休戦が、国際法を尊重した永続的な解決に取り組む機会になる。習氏がフランスとともに、ウクライナやガザ情勢など紛争にかかわるすべての関係国などに向けて、五輪休戦を呼びかけることに同意したことに感謝する」と述べている。

 

 となればプーチン氏も、ここで習氏の提案を断り関係を悪化させるのは得策でないと考えても不思議ではない。

「ただ、プーチン氏のこと、仮に休戦に受け入れた際には、バーターとして条件を出すはず。それが経済支援なのか何なのかはわかりませんが、そこが最も気になるところですね」(同)

 パリ五輪開幕は7月26日。8月11日まで2週間余り続いた後は、同月28日にはパラリンピックも開幕するが、はたして「五輪休戦」の行方は…。