かつて漫才ブームの頂点に立ち、月収1000万円を豪快に使い切った男の「今」は、横浜・伊勢佐木町の片隅にあった。
お笑いコンビ「ツービート」としてビートたけしと一時代を築いたビートきよし(76)が、現在、カラオケパブ「スター☆場」を経営していることをご存知だろうか。
ABEMAの密着企画「NO MAKE」で明かされたその実態は、あまりに人間味にあふれ、そして過酷な現実を内包していた。
店は会員制を謳いつつも一見客を歓迎するスタイル。
料金はボトル一本入れれば5000円で時間無制限の歌い放題という破格の安さだ。
常連客から「本当にお父さんといるみたい」と慕われるきよし氏は、なんと客の目の前でマッサージ師を呼び、施術を受けながら接客をする。
さらに驚かされるのは、店内のルールだ。
疲労が限界に達すると、きよし氏は客が歌う横で平然と映画を見ながら寝てしまう。
常連たちは「きよしさんが寝たらカラオケは中止」と、声を潜めて見守る。
この異様な、しかし温かい空間こそが、彼が求めた「居場所」だった。
華やかな過去の一方で、その体は限界に達している。
2021年に「ネフローゼ症候群」を発症し、一時は体重が25キロも増加。
現在は週3日の人工透析を欠かせない日々だ。過去には肺に水が溜まり、救急車で運ばれたことも2度あるという。
医師からは厳しい食事制限を言い渡されているが、きよし氏は笑い飛ばす。
「我慢してポックリ逝ったら、悔い残るでしょ」。
制限を守らず、吸いたいタバコも吸う。死の恐怖を常に隣り合わせにしながらも、彼は「俺の人生、楽しいよ」と断言する。
スタッフから相方・たけしへの劣等感を問われると、「ないないない」と即答した。
「俺が相方と同じことができるわけがない。それに、良いヤツだから頑張ってほしい」
ハリウッドまで進出した相方を誇らしげに語る言葉には、長年連れ添った戦友への深い敬意が滲む。
そして、「好き勝手なことができないたけしより、今の俺の方が幸せなんじゃないか」と、独自の哲学を披露した。
「いつ死ぬかわからない。だって明日死ぬかも知らんから」。
そう語るきよし氏の表情は、どこか晴れやかだ。
「レジェンドじゃない方」の芸人が辿り着いた境地。
そこには、無理に抗わず、死さえも受け入れた男の、究極の自由があった。