各国に対する追加関税発表後、

 

「彼らは次々に電話をかけてきて、私の尻にキスをしている。死ぬほど私と取引をしたがっているんだ。『どうか取引を成立させてください、何でもしますから』ってね」

 

 と、まさに意気軒高だった米トランプ大統領。

 ところが、株式市場が予想以上に反応したことで4月9日、発動からわずか半日で突如、「相互関税の90日間停止」を宣言。唯一中国を関税停止対象から外したことで、ベッセント財務長官も、

 

「これはトランプ氏の当初からの戦略。中国を不利な立場に追い込んだとも言える」

 

 と取り繕ってはいるものの、中国もアメリカに対し125%の関税を突きつけ、もはやその様相はチキンレースそのもの、との懸念の声も広がっていた。

 最終的には中国政府が、アメリカがさらに関税を引き上げても、これ以上『相手にしない』方針も示し、こと関税戦争については中国側が振り上げたこぶしをおろす形にはなったものの、このまま指をくわえたまま黙って見ているはずがない。

 

 おそらく別の手を使って、次なる報復措置に出てくることは間違いない。

 そんな中、習近平主席が11日、中国を訪問中のスペインのサンチェス首相と北京で会談。

 

 新華社通信によれば習氏は、

 

「中国は常にEUを多極化した国際社会における重要な極の一つとみなし、EUの結束と発展を強く支持している。一方的な威圧行為に共に反対すべきだ」

 

 として、トランプ氏の名前こそ出さなかったものの、

 

「関税戦争に勝者はなく世界に対抗することは自らを孤立させるだけだ。いかなる理不尽な抑圧も恐れない」

 

 と徹底抗戦する構えをみせた、と伝えている。

 習主席がトランプ氏の相互関税発表以来、関税に関し発言するのは今回が初めてだが、世界第2位の経済大国である中国としては、トランプ関税を共通の関心事として、なんとか第3位のEUを抱き込み連携を図りたいという思惑がある。

 

 ただ、新型コロナウイルの起源や盗聴問題等々、中国とEU諸国との間に深い溝があることは事実。

 

 一方、サンチェス氏には、かねてから中国とEUとの対話を仲介して、中国から投資を呼び込みたいと思いがあった。

 

 同氏の訪中はここ3年で3度目となるが、今回の会談ではトランプ関税政策対策を契機に中国との経済・政治関係をより強化しておきたい、そんな同氏の思惑が見てとれる。

 サンチェス氏は会談の冒頭、スペインは中国をEUのパートナーと考えていると持ち上げ、

 

「共通の関心事に取り組み、貿易と投資をバランスよく促し、それぞれのビジョンから両国の発展に利益をもたらしたい。両国社会がより緊密な絆で結ばれることを望む」

 

 と二国間関係を強化すればEUにとどまらず、ひいては世界平和と安定と繁栄につながると大風呂敷を広げたが、昨年度、EUが抱えた対中貿易赤字は3000億ドル。

 

 いくらスペインが中国とEUとの関係を深めたいと頑張っても、中国と欧州との利害が一致しない限り、経済分野での協力はまだまだ難しいと言わざるを得ない。

 

 今後、スペインがEU諸国との仲介役をどんな形で担うことができるのか。

 

 一応、中国政府も新エネルギーやハイテク機器製造などの分野で協力の可能性を模索中だと発表していることから、大きな期待を寄せているとは考えづらいものの、スペインの動きに関心を寄せていることは事実のようだが…。

 習主席とサンチェス氏が会談した11日、トランプ氏は習氏を

 

「とても良い、とても賢い指導者だ」

 

 と持ち上げ、

 

「私はいつも習近平国家主席とうまくやっている。ポジティブな何かが生まれると思う」

 

 と、中国との対話に前向きな姿勢を示したが、はたしてそのどす黒い腹の内は…。