韓国の朝鮮日報系ケーブルテレビ局「TV朝鮮」が韓国政府当局者の話として、そんな衝撃的なタイトルで北朝鮮の中学生およそ30人が公開処刑されたと報じたのは7月11日のこと。

 報道によれば、彼らは脱北者団体らにより、韓国から飛ばされた風船にくくり付けられていたUSBメモリを拾い、その中に収録されていた韓国ドラマを見たことが原因で処刑されたと伝えられる。

「『TV朝鮮』の報道では、30人の中学生がいつ、どこで処刑されたのか、あるいは集団なのか個別なのかなど詳細は触れられていないものの、その後、一部韓国メディアでは、30人は公開で銃殺された可能性が高い、と報じています。北朝鮮では6月にも、同様のUSBメモリを拾い韓国ドラマを見たとして、高校生数十人に無期懲役、あるいは死刑判決が下ったという情報がある。これらが事実であれば、見せしめにしても政府が子供に手をかけるなど言語道断。国際社会からの批判が高まることは必至でしょうね」(北朝鮮ウォッチャー)

 韓国には多くの脱北者団体が存在し、これまでにも複数の団体が北朝鮮にむけビラやUSBが仕込まれた風船を飛ばしていたが、今年4月には、この風船作戦が大規模化。

 

 すると北朝鮮側も「汚物風船」を大量散布するなどして、目には目を、の攻防戦が続いている。

「2020年12月に反動思想文化排撃法を制定した北朝鮮では、これまで韓国の映像物流布者に関し、死刑に処すという条項が盛り込まれていたものの、映像物を視聴した者は最大で懲役15年の刑としてきました。処罰対象は図書、歌、写真などですが、南北関係が悪化して以降、処罰対象がさらに拡大。韓国ドラマに登場する服装やヘアスタイルを真似していると判断されれば対象となり、実際、平壌では同様の罪で逮捕者が続出しているとの情報もあります」(同)

 今回、韓国から飛ばされた風船には、USBメモリのほか、韓国の若者たちが海水浴場などで楽しく過ごす写真や、「8000万民族の唯一の祖国『大韓民国』は北朝鮮の人民を愛しています」と記されたビラ、1ドル紙幣や医薬品、さらには非武装地帯近くで配置されている兵士を対象に「安全保障証」と書かれた紙などがくくりつけられていたとされる。

「中には米を入れたペットボトルがくくりつけられたものもあったようですが、韓国メディアによれば、それを拾って炊いて食べたという理由で、労働教化刑を受けた住民も少なくないといいますからね。ともあれ、北朝鮮当局が、いかにこの風船を脅威と捉え、神経をとがらせていたことは間違いないでしょう」(同)

 では一体、公開処刑されたという中高生は、どんな韓国ドラマを鑑賞したのだろうか。

「報道によれば、6月20日夜、脱北者団体が南北の軍事境界線近くから飛ばした大型風船は20個。中には、『民族唯一の祖国・大韓民国は北朝鮮人民を愛しています』と書かれたビラ30万枚のほか、ドラマ『冬のソナタ』が収録されたUSBメモリ5000本と、1ドル紙幣3000枚がくくりつけられていたいう。となると、今回処刑されたとされる中高生は『冬ソナ』を鑑賞して命を奪われたことになる。実は、盧武鉉大統領時代の2007年10月、平壌で行われた首脳会談で当時の金正日総書記との共同宣言に署名し、握手を交わした盧氏は、映画好きで知られていた金氏に『冬のソナタ』などDVD150枚を贈呈してるんです。当時も北朝鮮市民は韓国映画やドラマを見ることを禁じられていたものの、ご満悦でDVDを受け取った金氏に対し盧氏は後に、『この贈り物は、韓国文化の自由と創造性を強調するもの。表現の自由を理解することを期待している』という旨の談話を発表していた。あれから17年。そんな『冬ソナ』鑑賞が死刑対象となっていたとしたなら、なんとも切ない限りです」(同)

「冬のソナタ」を喜んで手にした父・正日氏と、それを観たとして中高生までも処刑に踏み切った金正恩総書記。北朝鮮国民は思いとは…。